GENIX-CN70

197.14

+0.18

7月12日終値

7月18日 東証では電力・ガス株が逆行高。朝方から半導体関連株を中心に急落し、日経平均は一時前日比1000円近く下げたが、内需関連株に物色の矛先。
市況情報

 7月18日 東証では日経平均が朝方、一時前日比1000円近く下げる場面があった。米政府が対中半導体規制を強化するとの報道を受け、半導体セクターを中心に利益確定売りが広がった。東京エレクトロン、ディスコ、レーザーテックなどこの日の売買代金上位を占めた半導体関連株はいずれも高値圏にあるだけに振れ幅が激しく、株価指数を大きく押し下げる要因となっている。

 こうした中、業種別株価指数では電力・ガス株を筆頭に食料品や水産・農林など内需系の業種が逆行高となっている。米国の利下げ観測の高まりを背景に為替が円高方向に振れていることも手掛かり材料になっている。

 GENIC―CN70構成銘柄では午前10時現在、関西電力、ニチガス、東邦ガス、北海道ガス、北陸ガス、中部電力、九州電力などが値上がり上位を占めている。前日引け後に、不正アクセスにより顧客情報流出の可能性があると発表した東京ガスは、寄り付き直後こそ値を下げたが、ほどなく切り返した。

(2024年7月18日配信)

【過去解説記事】

 中東産LPGの日本向け長期契約価格(サウジCP)7月分は、プロパンが6月分と同値の1㌧当たり580㌦、ブタンも6月分と同値の565㌦となった。

 原油市況はこのところ1バレル80㌦台で堅調に推移する一方、中国向けなどLPGの需要は落ち着いているもよう。米国プロパンガス市況も1㌧400㌦をはさんでのもみ合いが続いている。

 なお、中国に次ぐ世界第2位のLPG輸入国インドで総選挙が行われ、このほど与党の勝利が明らかになった。同党はLPG普及政策を強力に推進してきた経緯があり、LPGの国際需給に影響を与えうるとして選挙結果が注目されていた。

 (2024年7月1日配信)

 6月14日東証 GENIX-CN70は前週末比0.94ポイント高の192.96と2週間ぶりに反発した。指数構成銘柄ではK&Oエナジーグループ、三菱重工業、伊藤忠が上場来高値を更新したほか、岩谷産業、関西電力、東邦ガスなど大手電力・ガス株も根強く物色された。

 K&Oエナジーの株価は今年大きく値上がりし、11日の上場来高値4230円は昨年末終値2041円から2倍を超える上昇になっている。同社は千葉県で天然ガス・ヨウ素を産出しており、ヨウ素が次世代太陽光(ペレブスカイト太陽電池)の材料となることから注目を浴びているようだ。

 経済産業省が5月29日、第1回「次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会」を開催したことも手掛かり材料になっている。同協議会では日本が先行するペレブスカイト太陽電池の普及促進を目指している。日本のヨウ素生産量は世界第2位であり、エネルギー安全保障の観点からも期待が大きい。また、今週は米国でスタートアップがペレブスカイト太陽電池の工場を新設するとの報道も関心を集めたようだ。さらに、同業の伊勢化学工業の株価が昨年末の8590円から、本日の最高値40500円まで実に4.7倍となる大相場を演じていることも刺激になっている。

(2024年6月14日配信)

 米国で天然ガス先物価格(ヘンリーハブ=HH)が上昇している。6月11日の期近終値は百万BTU(英国熱量単位)当たり3.129ドルと、今年1月12日の3.313ドル以来、5カ月ぶりに3ドル大台に乗せた。2~3月には1.5ドル台の安値を付けていた。また1年前のこの時期は2ドル台半ばで推移していた。

 最近の市況動向についてJOGMEC調査部白川裕調査役は、「市況低迷時に掘削井が絞られた影響で、ガス生産量がジワリ減少している。そこに米国南部を中心とした記録的な猛暑による発電用ガス需要増が加わった」と指摘する。また、当面の値動きについては、「ガス発電用の需要は既に限界に達しているため、先物価格がこの先もさらに大きく値上がりする展開は想定しにくい」としている。

(2024年6月13日配信)

 6月7日東証 この週の東証株価は高値圏で伸び悩み、7日の東証株価指数(TOPIX)終値は前週末比0.6%値下がりした。GENIX-CN70も上値が重く2週間ぶりに反落し、前週末比1.9%の下落となった。

 GENIX-CN70構成銘柄の足取りは総じて重いが、その中で異彩を放つ逆行高を演じたのがデンヨーだ。同社は量産型燃料電池式可搬形発電装置を開発するなど水素関連ビジネスを手掛けている。

 同社株価は2020年9月と同年11月に付けた2600円台の高値を一気に払い、2700円台半ばに到達した。約1カ月間で株価は2割を超える上昇となったが、業績は好調で株価指標面に割高感は乏しいと見られる。「チャート上の節目を突破してきたことで、目先妙味が膨らんでいる。また同社は可搬型、非常用発電機を手掛けており、梅雨入りを前に防災関連の切り口にも関心が向いている」(市場関係者)。日本ではゲリラ豪雨が頻発化しているが、同社が強みとする北米ではこの時期ハリケーンの多発が警戒されている。シーズン性を発揮する場面も期待されているようだ。

(2024年6月7日配信)

 中東産LPGの日本向け長期契約価格(サウジCP)6月分は、プロパンが1トン当たり580ドルと前月分と同値だった。ブタンは前月比20ドル値下がり(下落率3・42%)して565ドルとなった。ブタンは3カ月連続で下落した。

 先週の米国プロパンスポット市況(MB)はトン当たり400ドル前後で推移。原油先物市況(WTI)は足元の堅調な在庫状況や長期金利の高止まりなどを受けて、1バレル70ドル台後半では上値が重くなっている。

(2024年6月3日配信)

 5月31日東証 GENIX-CN70は3週間ぶりに最高値を更新した。次世代太陽光発電(ペレブスカイト)関連として注目されるK&Oエネジーが一時未踏の4000円台に乗せたほか、栗本鉄工は18年ぶりの5000円台、川崎重工は9年ぶりの6000円台、ENEOSは6年ぶりの800円台となるなど大台替わりが相次いだ。北海道電力、九州電力などの電力株や、商社、海運株なども根強く物色されている。

 三浦工業が急伸し、およそ3カ月ぶりに本年高値を更新した。同社は5月30日、ダイキンと業務資本提携すると発表。工場向けに空調や蒸気ボイラ、水処理システムなど熱・空気・水に関するトータルソリューションをワンストップで提案する。それぞれの強みを生かして工場のカーボンニュートラル化のニーズに応える。三浦工業は国内の工場に、ダイキンは海外に強固なネットワークを有しており、市場はメリットを発揮しやすい組み合わせと受け止めているようだ。また、ダイキンは三浦工業の発行済み株式4.67%を三浦工業の自社株から購入する。三浦工業はその売却代金でダイキン子会社の株式49%を取得する。株式価値の希薄化や当面の株式需給悪化を招かない資本提携スキームも好感されたようだ。関連記事(https://www.gas-enenews.co.jp/gijutsu-shinseihin-hoan/40495/

(2024年5月31日)

 米国の天然ガス市況が上昇している。ヘンリーハブ(HH)先物期近価格は5月23日、百万BTU(英国熱量単位)当たり一時2.9ドル台に上昇した。3ドルは今年1月以来となる高値水準。「米国ガス市況は2~3月に1ドル台半ばまで大きく下げた経緯があり、その際に生産リグの稼働台数が削減された。その影響がここにきて出始めている」(JOGMEC調査部白川裕調査役)という。また、米国南部を中心にこの夏の気温が高めになるとの予報や、米フリーポートLNG輸出プロジェクトが本格生産に復帰したことなども材料視されているという。

(2024年5月24日配信)

 5月17日 GENIX-CN70は前週末比2.35ポイント安の192.12と4週ぶりに下落した。総じて利益確定売りに押される展開となったが、その中で13日に決算を発表した岩谷産業、14日に決算・大規模な自社株買いを発表したENEOSの株価が急伸した。どちらも一時本年高値を更新するなど人気付いた。

 岩谷産業の決算について市場関係者は、「前期実績も今期予想も2桁増益の好決算。ただ今期の配当金予想額が据え置かれたため、株価は急伸後伸び悩んだが、持分法対象のコスモエネルギーの寄与分も見込め、今後増配期待から見直される可能性がある」とする。

 ENEOSの自社株買いは上限が発行済み株式総数の2割強におよぶ大規模なもので、市場にサプライズを与えた。「経営陣の資本効率・株主還元への意識の高さを感じる内容。大型投資がなく、JX金属がIPOに向けて資産売却を進める中、財務体質が良好になっていることが背景にある」(大手証券アナリスト)と見ている。

(2024年5月17日)

 GENIX-CN70は10日、前週末比2.33ポイント高い194.47ポイントと3週連続で値上がりし、前週に続いて過去最高値を更新した。

 指数構成銘柄では大阪ガス、北海道ガスなどが過去20年来の高値を更新。大阪ガスは8日発表の自社株買いが好感されている。「3月発表の中期計画で株主資本配当率に基づく増配方針が打ち出されたばかりの株主還元策で、サプライズとして受け止められた」(アナリスト)。北海道ガスは4月30日発表の株式分割(1対5)や今期実質増配を手掛かりに人気化している。PBRは0.8倍台に上昇し、課題の1倍割れ解消が現実味を帯びてきた。

 岩谷産業も急伸し、4月に付けた最高値9311円を射程に捉えてきた。同社の3月期決算は5月13日午後2時半に発表予定だが、同社がさきごろ筆頭株主となったコスモエネルギーホールディングスが昨日決算発表を行い、堅調な業績と自社株買い、年間300円配当を維持する方針が明らかになった。コスモエネの株価は本日、一気に高値を更新、岩谷産業の株価支援材料になっている。

(2024年5月10日配信)

  中東産LPG日本向け長期契約価格(サウジCP)5月分は、プロパンが1㌧当たり580ドルと前月比35ドル下落した(下落率5・69%)。値下がりは4月分に続いて2カ月連続。

  ブタンは前月比35ドル値下がりして(下落率5・65%)1トン当たり585ドルとなった。ブタンも2カ月連続で下落した。

(2024年4月26日配信)

 中国税関が18日に発表した3月のLNG輸入量は前年同月比24・1%増の665万㌧となり、3月としては2021年の564万㌧を上回り3年ぶりに過去最高を更新した。1~3月の累計輸入量は同20・4%増の1985万㌧と、年間輸入量が過去最高だった21年同期を0・8%上回った。

 今年第1四半期の国内総生産は5・5%増と昨年第4四半期の5・2%増を上回った。輸出産業を中心に二酸化炭素排出削減のためのガスシフトも進んでいる。同期間のLNGスポット市況が前年同期を4割下回るなど割高感が薄れたことも需要喚起につながったようだ。今後の見通しについてエネルギー・金属鉱物資源機構調査部竹原美佳部長は、「国際市況はこのところ上昇に転じており、LNGスポット調達は目先一服しそうだが、地方政府のガス火力建設推進や船舶燃料のグリーン転換などもありガス需要そのものは高まる方向」としている。

(2024年4月18日配信)

 東証4月12日 東京ガスの株価が一時前日比54円高の3899円と前日に続いて上場来高値を更新した。同社株は今週に入って騰勢を強め、年初からの株価上昇率は20%に達した。3月中旬、大阪ガスの時価総額が一時、東京ガスを逆転したが、東京ガスが再び首位に立ちリードを広げている。4月19日に全国知事会が東京ガス横浜ステーションを視察し、e‐メタン製造実証の説明を受ける予定となっている。カーボンニュートラルに向けた同社の技術力に注目が集まりそうだ。株価上昇により、株価純資産倍率(PBR)は0.94倍へと上昇。1倍乗せが視野に入ってきた。

 都市ガス株では、北海道ガスの株価も上昇基調にあり、この日も前日マークした上場来高値2960円まで一時買い進まれる場面があった。年初からの上昇率は34%に達するが、同社株のPBRはいまだ0.7倍台にとどまり、依然割安感が漂う。北海道では半導体工場の新設で電力消費の大幅な伸びが予想され、北海道電力の株価もこのところ大幅に上昇している。

(2024年4月12日配信)

 4月3日 米原油先物(WTI)は前日比28セント高の85.43ドルと3日続伸、本年の高値を更新した。ウクライナによるロシア主要製油所への無人機攻撃や、イラン大統領によるイスラエルへの報復表明など地政学的リスクの高まりが背景にある。また週間統計で米国原油在庫が前年同期比18.5%減と減少が目立ったことも材料視されている。

 注目されたOPECプラス合同閣僚監視委員会は、生産目標維持を決定。また、米連邦準備理事会パウエル議長は講演で利下げを急がない姿勢を示したとされる。三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部・芥田知至主任研究員は、「中東、ウクライナ情勢は今後一段と動向が注視される。また、米金融政策、中国当局による経済運営、産油国の生産方針なども引き続き注目される。ただ、米中の景気は石油需要を上振れさせるほどには強くないとみられ、相場の上昇傾向を決定づける材料は出にくいと思われる。相場は再び一進一退の推移となりやすい」と指摘。もっとも、今年後半にかけて米利下げを受けてドル安が進む展開となれば、ドル建ての原油価格には割安感が生じ上昇圧力がかかりやすくなるとし、今年度は1バレル95ドル程度の上値が見込めるとしている。

(2024年4月4日配信)

 GENIX-CN70は年度内最終売買日となった3月29日、前週末比0.55ポイント上昇し189.41と、2週続けて最高値を更新した。3月末割り当てで1対10の大幅な株式分割を実施した三菱重工業は権利落ち後も堅調で、修正株価は連日の最高値となった。GENIX-CN70構成銘柄では他に理研計器が1対2、川崎汽船が1対3の株式分割を3月末割り当てで実施した。

 岩谷産業の株価が3連騰で、連日の上場来高値更新。3月28日にコスモエネHD株式を追加取得し、持ち分法適用会社にしたと発表したことが材料視されている。コスモエネの今期純利益予想は780億円、岩谷産業は335億円。持ち分比率2割相当の利益が来期以降、上乗せされるインパクトの大きさが期待されているようだ。また、会社側は本件株式取得に要する資金を借り入れで賄うとしており、「増資による一株当たり利益の希薄化が回避される見通しになったことも好感されている」(国内証券調査部)という。

(2024年3月29日配信)

 米国3月26日、米パイプラインガス(ヘンリーハブ=HH)先物価格が終値で5日続落し、百万BTU(英国熱量単位)当たり1.575ドルに下落。2月20日に付けた本年安値1.576ドルを1カ月ぶりに割り込んだ。ザラ場安値は1.4㌦台まであった。

 米エネルギー情報局(EIA)が3月21日に発表した週間データによると、米国の地下ガス在庫量は3月15日時点で前年比21%増、過去5年間の平均値に対しては41%上回っている。エネルギー・金属鉱物資源機構・白川裕調査役は、「気温が上がり需要が低下して、在庫がさらに積み上がったことと、生産がすぐには低下しないことが主要因」と指摘する。こうした在庫の荷余り感が先物市況の上値を重くしているようだ。

 HH先物価格の過去15年間の値動きを振り返ると、期近先物価格が1ドル台まで下落した年は2012年、16年、20年の3回あり、当該年の安値形成月はそれぞれ、4月(1.9ドル)、3月(1.6ドル)、6月(1.4ドル)となっている。春に安値を付ける習性と、この間の価格水準が切り下がる傾向が見て取れる。

(2024年3月27日配信)

 3月22日、ガスエネ株価指数カーボンニュートラル70(GENIX‐CN70)は2週間ぶりに過去最高値を更新した。GENIX‐CN70構成銘柄はほぼ全面高となり、K&Oエナジー、三菱重工、岩谷産業、大阪ガスなどが最高値を更新した。

 なお、三菱重工(1株→10株)、理研計器(1株→2株)、川崎汽船(1株→3株)は3月28日付で株式分割の権利を落とす。株式分割のメリットとしては、単位投資額の引き下げによる投資家層のすそ野拡大、流動性の向上などが指摘される。昨年以降で、株式分割を実施したリンナイ、NTT、三菱商事、京セラは、権利落ち後も堅調な値動きを保っている。

(2024年3月22日配信)

 3月15日 ENEOSHD(GENIX―CN70構成銘柄)の株価が朝方から買い進まれ、5年3カ月ぶりに700円台に乗せてきた。他にもINPEXや石油資源開発、コスモエネルギーHDなどの石油関連株、資源高が利益に結び付く商社株も軒並み値上がりしている。コスモエネルギーは国内大手証券が投資格付けを引き上げたことも好感され、株価は上場来高値を更新した。

 株式市場は、米原油先物(WTI)が14日、期近4月渡し終値で1バレル81.26ドルと続伸し、昨年11月6日の80.82ドル以来の80ドル台乗せとなったことを材料視しているようだ。国際エネルギー機関(IEA)が同日公表した市場レポートでは、今年の石油需給は供給不足になるとの予測が示されている。産油国の自主減産延長による供給減や、紅海におけるタンカー襲撃で海上輸送距離が延びておりバンカー燃料の需要増加を織り込んだという。もっとも原油市況は過去1年余りにわたって、おおむね70ドルから80ドルのレンジで推移しており、80ドル台では上値の重さも意識されそうだ。

(2024年3月15日配信)

 3月8日 大阪ガス(GENIX CN‐70構成銘柄)の株価が前日比153円高の3350円で寄り付き、直後に230円高の3427円まで上昇。1月11日に付けた上場来高値3242円を一気に更新した。同社は7日、3カ年中期経営計画を策定し、配当を原則減配せず維持または増配する累進配当制度を導入すると発表し、好感された。

 2024年3月期の配当金は前期比12円50銭増配して72円50銭(従来予想65円)に、25年3月期は95円を目指す方針も示した。株主資本配当率を3%とする方針を掲げ、機動的な自己株取得も検討するとした。この他、自己資本利益率(ROE)の目標は26年度に8%程度、投下資本利益率(ROIC)は5%程度を目指す。「株価を意識した経営姿勢に変化していると株式市場が受け止めており、都市ガス株の中でも相対的な値上がりが目立ってきている」(中堅証券)という。この日前場終値での時価総額は、大阪ガスが1.43兆円、東京ガスは1.41兆円となり、大阪ガスが東京ガスを逆転した。

(2024年3月8日配信)

 2月22日 東証では朝方から買いが先行し、日経平均株価は大幅に反発した。終値は初の3万9000円台で、1989年12月以来の史上最高値更新となった。注目された米エヌビディアの決算が市場関係者の事前予想を上回り、3連休控えにもかかわらず、マーケットのセンチメントは強気に傾いた。半導体関連株をリード役に、主力株を中心に幅広く買い進まれた。

 GENIX‐CN70構成銘柄も軒並み上伸した。三菱重工業が上場来高値を更新し、日本酸素HD、川崎汽船は最高値をうかがう動き。原油市況の上昇を背景に石油資源開発など石油関連株も値上がりした。

(2024年2月22日配信)

 米国パイプラインガス市場価格(ヘンリーハブ先物)が2月15日、8日連続安となり、百万BTU(英国熱量単位)当たり1.5㌦台まで下落、2020年6月以来の安値水準となった。在庫の積み上がりが背景にあるという。

 エネルギー・金属鉱物資源機構の白川裕調査役は「原油市況が1バレル80㌦弱と堅調なことから、パーミアン盆地を中心にシェールオイルの生産が盛んで、随伴ガスの生産量も増えている。気温が高めに推移していることもあり、地下在庫は過去5年間の最高水準に到達している」と指摘。

 先物市場の中心商いが春の需要閑散期に移りつつあることから、市況は当面弱含みで推移しそうだ。
(2024年2月16日配信)

2月12日 米国で天然ガス市場価格(ヘンリーハブ先物価格=HH)が5日続落し、期近終値は百万BTU(英国熱量単位)当たり1.768ドルに下落した。1.7ドル台は2020年7月以来の安値となる。市中在庫が高水準にあり、市場のセンチメントを圧迫している。

HHは昨年11月以降、3ドルを割り込むなど市況の低迷が続いているが、生産量が落ち込む兆しはいまだ見えないという。エネルギー・金属鉱物資源機構の白川裕調査役は「原油市況が1バレル80ドル弱と堅調に推移していることから、オイルリッチなパーミアン盆地を中心に油狙いの生産が盛んになっている。このため副産物であるガスの生産も増加している」と指摘する。

(2024年2月13日配信)

米国市場でガス市場価格(ヘンリーハブ先物価格)が続落している。7日に心理的な下値めどと見られていた百万BTU(英国熱量単位)当たり2ドルを割り込むと、8日終値は一段安となり1.917ドルまで下落した。およそ3年5カ月ぶりの安値水準となる。

市況下落の背景には、マーケットの荷余り感があるようだ。「このところの気温上昇で暖房用需要が低下しており、地下在庫量は過去5年間の上限レベルに到達している。当面は上値の重い展開が続きそうだ」(エネルギー・金属鉱物資源機構・白川裕調査役)。

ヘンリーハブ価格の下落に伴い、米国産LNGの輸出価格も低下しており、現状は世界の主要輸出国の中でも最も安価な水準となっている。

(2024年2月9日配信)

2月6日 東証後場 三菱重工業の株価が昨日の1万円初登頂に続いて一段高となった。この日午後、同社は3月末割り当てで株式1株を10株に分割すると発表。合わせて発表された今2024年3月期第3四半期連結決算は、売上高が前年同期比11%増、純利益は同倍増となるなど好調ぶりが明らかになった。通期の受注見通しを6兆円とし、従来予想に4000億円上積みした。これら大幅な株式分割と好調な業績動向が素直に好感され、買いが買いを呼ぶ好循環となっている。

同社株は1年前の2月には5000円前後で推移しており、そこから株価水準はちょうど2倍になっている。

(2024年2月6日配信)

1月31日 サウジアラムコがこのほど日本のLPガス輸入事業者に通知したプロパン2月分出荷価格(サウジ2月CP)は、前月比10ドル値上がりして630ドルとなった。値上がりは昨年8月分(470ドル)以降、12月分の変わらずを挟んで8カ月連続。

LPガス市況に影響する原油市況が、12月初旬を底に水準を切り上げているほか、世界最大のLPガス輸出国である米国において、プロパン在庫の取り崩しが進み、市況が上昇したことが背景にある。米国ではLPガスの一大輸出地域であるメキシコ湾で濃霧が観測されており、輸出作業への影響も警戒されたという。サウジCP2月ブタンも、前月比10ドル値上がりして640ドルとなった。

(2024年2月1日配信)

1月26日GENIX-CN70は前週比0.64ポイント値上がりして169.36ポイントとなった。7週間連続の上昇で、3週続けて統計開始来の最高値を更新した。一方、東証株式市場全体としては、このところの上げピッチの速さから利食いが広がり、東証株価指数(TOPIX)は7週ぶりに値下がりした。

GENIX-CN70の構成銘柄で値上がりが目立ったのは、25日に2023年12月期決算を発表したHIOKI。24年12月期も増収増益を見込み、配当金を年200円に連続増配する方針が好感されたようだ。

このほか、三菱重工業、三菱化工機が高値圏で頑強な値動き。SMBC日興証券が目標株価を引き上げたウエストホールディングスも下値を切り上げている。

(2024年1月26日配信)

 欧州パイプラインガス先物価格が17日、百万BTU(英国熱量単位)当たり8ドル台まで下落し、昨年8月以来の安値水準となった。北東アジアLNGスポット価格も続落しており、17日は昨年6月以来の9ドル台を付けている。先物の決済期日が2月から3月に移り冬場の需要期を過ぎることで、足取りが弱くなっている。昨年の安値は欧州ガス先物価格が7ドル台、スポットLNGは8ドル台だった。

 当面の市況動向についてエネルギー・金属鉱物資源機構の白川裕調査役は、「カタールから欧州にLNGが年間1500万トン供給されており、スエズ運河の通航リスクが警戒されているものの、それでも欧州の在庫水準が依然として高いため、中東からの輸送に支障が生じても当面の供給は何とかなると見られている。昨年10月から輸出を再開したエジプトLNGもまだ量は少ないとはいえ心理的な支えになっている。不需要期の相場は数年前なら3~4ドルもありえたが、安価になったスポットLNGを中国が仕込む動きも見られるため、今回はそこまで下がらないだろう」とする。また、「足元のスポット需要は弱いが、供給力に余裕があるほどの状況でもない。幸いにして供給設備のトラブルは昨年から起きていないが、いつ起きても不思議はない。先行きを楽観視するわけにはいかない」と指摘する。

(2024年1月18日配信)

東京株式市場は年末・年始と値上がり基調を強めており、GENIX-CN70も12月15日から1月12日終値まで5週連続で上昇した。1月12日の終値は167.67ポイントとなり、昨年9月15日にマークした指数算出以来の最高値165.83ポイントを4カ月ぶりに更新した。

GENIX-CN70構成銘柄では、商社株の値上がりが目立ち、伊藤忠商事、住友商事が最高値を更新。海運株も高値圏でしっかり。個別銘柄では、三菱重工業、愛知時計電機が最高値を付けた。本日午前、2024年8月期第1四半期決算を発表し、大幅な増収増益が確認されたウエストホールディングスが急伸した。

(2024年1月12日配信)

中東産LPGの日本向け長期契約価格(サウジCP)1月分は、プロパンが前月比10㌦高い1トン620㌦。ブタンも同じく10㌦値上がりして630㌦となった。小幅高ながら、極東マーケットは足元で強弱感が交錯しており、先行きの方向感は乏しい状況。米国のプロパンスポット市況(モントベルビュー)は12月分が1トン357㌦と、前月から約25㌦値上がりした。依然として近年の安値圏での値動きではあるが、市中の在庫水準は過去5年平均並みまで減少しており、底堅さも見られる。

(2024年1月10日配信)

1月5日 2024年の年明けの東京株式市場は、能登半島地震を受けて4日の大発会は売り物先行でスタートしたが、新NISA開始に伴う投資資金流入などによる先高期待から押し目買いが優勢となり、結局、東証株価指数(TOPIX)は4日、5日と続伸した。

GENIX-CN70も12月最終週に続いて上昇し、5日終値は164ポイントと、5週ぶりに160ポイント台を回復。昨年9月15日にマークした最高値165.83に急接近した。指数構成銘柄では、大阪ガスが大幅高となり、5日に一時3111円まで上昇。12月13日に付けた最高値3077円を上回った。4日以降終値ベースでも初めてとなる3000円台を維持している。このほかでは、海運株が人気を集めており、日本郵船、商船三井が最高値を更新した。

(2024年1月5日配信)

12月29日 東京証券取引所最終売買日(大納会)は、今年1年の相場を象徴するような堅調な展開だった。その中でGENIX-CN70は前週に続いて上昇し、3週連続高で今年を締めくくった。GENIX-CN70の年間騰落率はプラス25%となり、東証株価指数の上昇率と互角の好成績だった。

GENIX-CN70構成銘柄の中で値上がりが目立ったのは、川崎汽船、日本酸素、栗本鉄工、愛知時計電機、関電工など。一方、不調だったのは、イーレックス、レノバ、テスHD、ウエストHDなどだった。なお12月末割り当てで、京セラが1株を4株、三菱商事は1株を3株に株式分割した。GENIX-CN70もこれに合わせて、株式分割の影響を考慮した修正株価指数を算出している。

(2023年12月29日配信)

12月22日 GENIX-CN70は前週に続いて上伸した。全般は高安まちまちだが、値がさ株の海運3社(日本郵船、商船三井、川崎汽船)がそろって本年高値を更新し、CN70を押し上げた。また、工場新設で恩恵を受ける理研計器が12月20日上場来高値を更新した。

海運株が動意付いたのは先週末。紅海で武装組織による商業船への攻撃が相次いだことで、海運会社がスエズ運河の航行を見合わせ、迂回経路による輸送距離の延長などで海運市況が上昇するとの思惑が働いた格好。海運株はコロナ禍前後の市況高騰局面で株価が5倍以上に跳ね上がっており、その記憶がまだ新しいだけに思惑が先行しやすいようだ。

(2023年12月22日配信)

12月15日 GENIX-CN70は3週ぶりに反発した。指数構成銘柄では、理研計器の株価が13日に上場来高値を更新。大阪ガスも同日最高値を更新し、未踏の3000円台に一時到達した。

岩谷産業の株価はコスモエネルギーホールディングスの筆頭株主になると発表した12月1日以降、大きく値下がりしたが、15日終値は7日ぶりにプラスに転じた。

14日に一時5996円まで下げ、4月初旬以来8カ月ぶりとなる6000円大台割れを見たことで、値ごろ妙味が台頭したようだ。9月高値からこの安値までの下落率は26%に達し、一株当たり純資産5249円も意識される水準となっていた。チャート面から当面の戻りめどを探ると、25日移動平均線の6866円、9月高値から直近安値までの下げ幅の半値戻し6770円など、6800円あたりが意識されそうだ。

(2023年12月15日配信)

12月13日 GENIX-CN70構成銘柄の大阪ガスが4日続伸し、一時3077円の高値を付けた。3000円台に乗せたのは上場来初。12日大引け後に、日本経済新聞が「伊藤忠と大阪ガス、世界最大級の水素生産に最大4割出資」と報じ、これを材料視する買い注文が朝方から集まった。

株価は11月初旬、自社株買いの発表を契機に大きく上放たれ、過去16年来の上値抵抗線となっていた2600円前後の節を突き抜けてきた直後とあって、しこり感のないチャート妙味も好感されているようだ。

12日に発表された欧州の水素企業Everfuelのニュースリリース

(2023年12月13日配信)

12月8日 GENIX-CN70は前週に続いて下落した。急速な円高進行や世界的な景気減速懸念を受けて、東京株式市場はこの日、ほぼ全面安となった。GENIX-CN70構成銘柄にも利益確定の売りが先行した。中でも、原油先物市況の下落を受けて、石油、造船、商社、海運株などが大きく値を下げた。

12月1日引け後にコスモエネルギーホールディングス株式大量取得を発表した岩谷産業は、週明け4日から株価が大きく下げ、発表前の終値7141円から8日安値6388円まで5日間で10%を超える下げとなった。9月の本年高値8040円からの下落率は20%に達している。アナリストからは「コスモエネ株取得に1千億円を超える大金を投じることについて、どのようなリターンを見込んでいるのか、できる限り定量的な説明が欲しい。株価の下げは合理的な反応。投資家は追加情報を待っている」との声が聞かれる。コスモエネ株が取得価格を割り込んでいることも嫌気されているようだ。

(2023年12月8日配信)

米原油先物価格(WTI)は12月6日、前日比2.94ドル安の69.38ドルと5日連続で値下がりした。節目と見られた1バレル70ドル台を5カ月ぶりに割り込んだ。9月に付けた本年高値93.68ドルからの下落率は26%に拡大するなど下値を模索する動きとなっている。

注目された11月30日のOPECプラス会合は、各国から自主減産(来年1~3月期に日量約220万バレル)が発表されたものの、想定の範囲内と受け止められたようで、相場の下落基調を反転させるには至らなかった。

相場が弱含んでいるのは、世界的な景況悪化に伴う需要減少への警戒があると見られる。「不動産不況が続く中国経済の停滞や、ここまでの利上げで減速が見込まれる米国景気などを考慮すると石油需要は伸び悩み、自主減産してもなお需給は引き締まらないのではないか」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部芥田知至シニアアナリスト)との指摘がある。当面は今週末発表される米雇用統計をはじめ、主要な経済指標を横目にみながら神経質な値動きが続きそうだ。

(2023年12月7日配信)

12月1日 岩谷産業(GENIX‐CN70構成銘柄)はこの日、コスモエネルギーホールディングスの株式を追加取得すると発表した。旧村上ファンド系と見られる既存株主から計約1740万株を1053億円で取得する。取得済みの持ち株と合わせた保有比率は19.93%となり、同社の筆頭株主になる。

1株当たりの取得価格は約6051円で、この日の東証終値5616円を約8%上回るが、価格の算定根拠については明らかにしていない。今後については、「より一層連携を深め、新たなシナジーを創出する」としているが、具体的な方向性はまだ示されていない。また、今3月期連結業績への影響については「精査中」としている。

サウジCP12月分は、前月と同価格の1バレル610ドル、ブタンも変わらずの620ドルとなった。

(2023年12月1日配信)

11月24日 東京証券取引所で三菱重工業(GENIX‐CN70構成銘柄)の株価が前日比529円高と大幅続伸し、およそ2カ月ぶりに8800円台まで水準を切り上げた。

同社は11月22日に防衛事業説明会を開催し、来年度からの3カ年は防衛力整備計画の大幅な拡充を受けて同社の事業規模は2倍以上になると発表した。過去長期にわたり同事業規模は5,000億円弱で推移していたが、来年度からの3カ年は1兆円規模になるとした。祝日をはさんでこの日は朝方から買いが先行、業績拡大への期待感を織り込む動きを見せた。株価が1万円に近づいていることから、株式分割を催促する値動きにも映る。

ガスエネルギー新聞が注目する同社のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みも続いている。弊紙11月20日付では三菱重工エンジン&ターボチャージャの「水素混焼50%で安定燃焼、5700キロワット級ガスエンジン」を技術面トップで紹介している。また、同日付紙面には「水素特集」を掲載しており、三菱重工の高砂水素パークなどを詳しく紹介している。

(2023年11月24日配信)

11月14日の東京証券取引所で大阪ガスが4日続伸し、ザラ場の高値は2920.5円まで買い進まれた。11月7日にマークした上場来高値2914.5円を5営業日ぶりに更新した。10月27日発表の中間決算が好感されているほか、同日発表の自社株買いも歓迎されているようだ。マーケットでは、大阪ガスの株価格付けを従来から「買い」としていたみずほ証券が、目標株価を2600円から3300円に引き上げたとの情報もこの日伝わった。

大阪ガスの株価をローソク足(日足)で見ると、11月9日から10日にかけて、さらに10日から13日、13日から14日にかけても連続して窓「空」ができた。4本の陽線と「三空」で形成される高値圏でのこの形は「三空踏み上げ」と呼ばれ、チャートを投資判断のよりどころとする投資家は、空売りを仕掛ける急所とみる。同社株の信用買い残は、売り残が買い残を超過した状態にある。確かに目先は急伸した後だけに強弱感が対立しやすい場面と言えるが、この日の株価は株価純資産倍率が0.7倍台と依然として割安な状態にあることから、むしろ売り方の手仕舞い(買い戻し)による一段の上昇を読む向きもある。

関連記事 大阪ガスが上昇率首位、愛知時計は最高値を更新/GENIX―CN70 - ガスエネルギー新聞 (gas-enenews.co.jp)

(2023年11月14日配信)

 11月2日のGENIX‐CN70は3週ぶりに反発した。自社株買いを発表した大阪ガスが急伸し、最高値を更新したほか、業績好調の日本酸素、愛知時計も高値を更新した。

 中東産LPGの日本向け長期契約価格(サウジCP)の11月分は、プロパンが1トン当たり前月比10㌦値上がりして610㌦(前月比1.67%高)となった。ブタンは同5㌦値上がりして620㌦(同0.81%高)。プロパン、ブタンともに4カ月連続で値上がりした。

 LPG市況に影響を与える原油相場の値動きはこのところ重くなっているが、LPG市況はこれから需要期を迎える季節性もあって、先高観が根強いようだ。日本向け米国産LPGの航路に当たる中南米パナマ運河が、渇水の影響で渋滞解消に時間がかかるとの見通しも強気の見方を支えているようだ。

 CPのこの1年間の価格推移を振り返ると、プロパンは2月に790㌦のピークを迎え、その後は大きく値下がりして、7月に400㌦のボトムを付けている。ブタンも同様に2月の790㌦でピークを打ち、7月には375㌦の安値を付けている。

(2023年11月2日配信)

10月27日 GENIX-CN70は前週末終値から0.2ポイント下落して155.81と2週連続で下落した。東証株価も0.06ポイント下がって142.76となった。

10月以降、株式市場は調整色を強めており、9月最終週との比較ではGENIX-CN70、東証株価ともに約3%下落している。

GENIX-CN70の構成銘柄のうち9月末比で上昇したのは全体の2割16銘柄にとどまる。その中で愛知時計が本年高値を更新したほか、日本酸素、栗本鉄工、川崎汽船などが高値圏で頑強な値動きを見せている。

(2023年10月27日配信)

10月19日の米原油先物(WTI)価格は3日続伸。中東地域の紛争拡大への懸念が市況を押し上げた。

国際ガス市況も値上がりしており、欧州パイプラインガス先物価格(TTF)は13日に百万BTU(英国熱量単位)当たり16ドル台、スポットLNG価格は18日に19ドル台へと上昇している。

イスラエル沖の海洋ガス田(タマル)が操業を停止したと報じられており、このガスを原料とするエジプト産LNGの出荷に影響が及ぶ恐れが指摘されている。

(2023年10月20日配信)

 10月9日の米原油先物(WTI)市況は2日続伸し、1バレル前日比3.59㌦高の86.38㌦に上昇した。6日の米雇用統計は市場の予想を上回る数値で、長期金利上昇を促したが、原油市場は底固い動きを見せた。そこに、イスラエル・パレスチナ間で大規模な武力衝突が発生。中東の地政学的リスクが高まったことで、買い気が優勢となったようだ。また、本年高値を付けた9月27日以降の下げが急だったこともあり、買い戻しも入りやすかったと見られる。

 一方、連休明け10月10日の東京株式市場は、朝方から買い戻しの動きが広がりほぼ全面高でスタート。GENIX‐CN70構成銘柄もこのところ下げがきつかった石油株などが買い気配で始まるなど総じてしっかりした動き。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部の芥田知至主任研究員は当面の原油相場について、「今回の武力衝突にイランの関与があるのかどうかなど中東情勢には不透明な部分があり、不安定要素が増えた格好だ。他方、このところの米長期金利上昇やドル高が原油相場を下押しするとの見方や、米欧の金融引き締め効果で石油需要が鈍化するとの懸念も根強い。さらに中国の不動産不況、全米自動車労組(UAW)のストライキ、米予算審議の難航なども需要を鈍化させる要因として意識されている。当面は地政学的リスクや需給などの強弱材料が交錯する中で、不安定な推移が見込まれる」としている。(了)

(2023年10月9日配信)

米原油先物が10月4、5日と続落し、1バレル82㌦台まで下落、8月30日以来の安値水準となった。4日は下落率が5・61%に達する大幅な下げで、下落率が5%を超えるのは5月2日以来5カ月ぶり。9月27日に付けた本年高値93・68㌦から5日までの下落率は12%強に広がった。市場では、米ガソリン在庫の急増や強含んでいる長期金利の動向を警戒。今晩の米雇用統計の発表を注視している。

一方、米天然ガス先物(HH)価格は3日続伸し、今年3月以来となる百万BTU(英国熱量単位)当たり3ドル台に乗せてきた。

(2023年10月6日配信)

米原油先物が10月4日、前日比5.01㌦安の1バレル84.22㌦と急反落し、8月31日以来の安値水準に後退した。1日の下落率の大きさは5.61%に達した。5%を超える大幅な下げは5月2日の5.29%以来、5カ月ぶり。市場では、同日発表された米石油在庫統計でガソリン在庫の急増が明らかになり、これが利益確定売りを誘ったとの見方が出ている。

JOGMECの首席エコノミスト・野神隆之氏は、「統計で明らかになった米ガソリン需要の低迷は、この時期としては2000年以来の低水準。他にもロシアの軽油輸出禁止の一部解除検討の報道、サプライズのないOPECプラス産油国共同閣僚監視委員会の内容などの弱気材料がそろって現れた。このため、市場は狼狽売りの様相を呈しているが、今年第4四半期に供給不足に陥るとの認識に変化はなく、市場のセンチメントが根本的に変化したとは言い切れない。原油市況は売られ過ぎ気味の領域に入りつつあり、値頃感から買い戻しが発生しやすい状況ではあるが、まずは明日6日発表予定の米国雇用統計が注目される」としている。

10月5日の東証は朝方、昨日までの大幅安に対する自律反発の動きとなり、TOPIXが6日ぶりに反発するなど全般に買い物優勢の始まりとなったが、原油の急落を受けて、GENIX‐CN70構成銘柄のINPEXや石油資源開発など石油関連株は売り気配のスタートとなった。

(2023年10月5日配信)

中東産LPGの日本向け長期契約価格(サウジCP)の10月分は、プロパンがトン当たり前月比55㌦値上がりして600㌦(前月比9.09%高)、ブタンは同50㌦値上がりして 615㌦(同9.82%高)となった。プロパン、ブタンともに3カ月連続で値上がりした。背景には原油市況の上昇が指摘されている。

(2023年9月29日配信)

東証9月28日前場の寄り付きは、GENIX‐CN70構成銘柄のINPEX、石油資源開発、日揮など石油株が大幅高でスタートした。朝方は全般に利益確定売りが先行する中で、石油関連株の値動きの強さが目立った。石油資源開発は2008年以来、13年振りとなる6000円台に到達した。

 前夜27日の米原油先物(WTI)価格は前日比3.29㌦値上がりして1バレル93.68㌦となり、7営業振りに今年の高値を更新した。また、当面の戻りのめどと見られていた昨年10、11月に付けた92㌦台の高値を一気に上抜いてきたことで、市場関係者の間では先高ムードが一層強まっている。

(2023年9月28日配信)

9月22日の東証株価は前夜の米国株式下落を受けて、朝方から売り先行で始まった。GENIX-CN70構成銘柄も商社、海運株など総じて下落した。半面、INPEX、石油資源開発、ENEOSなど石油株の一角は底固い動き。GENIX-CN70は前週末比2.08ポイント下落して164.04ポイントと5週ぶりに下落した。

21日の米原油先物市場は、米金融政策の引き締め長期化懸念が台頭し、利益確定売りに押された。期近終値は前日比0.65㌦安い89.63㌦と、3日続落し、6営業日ぶりに1バレル90㌦台を割り込んだ。

9月25日付紙面の関連記事「原油100ドルが視界に サウジ減産の影響を注視」

(2023年9月22日配信)

9月14日の米商品先物市場では、原油先物(WTI)価格が2日ぶりに反発し、終値は前日比1.64㌦値上がりして1バレル90.16㌦と、当面の節目と見られていた90㌦大台を突破した。90㌦に乗せるのは2022年11月7日の91.79㌦以来、10カ月ぶり。市場関係者の間では、原油需給の引き締まり感から先高を予想する声が強まっている。

原油市況の上昇を受けて、15日の東証ではGENIX-CN70構成銘柄のINPEX、石油資源開発、日揮、ENEOS、三井物産、三菱商事といった、石油やエンジニアリング、商社など資源関連株が一斉に買い進まれた。INPEXは2008年以来、この週急伸した日揮は2018年以来の高値水準。

(2023年9月15日配信)

9月13日の東京証券取引所では、朝方からINPEX、石油資源開発、ENEOSなどGENIX-CN70構成銘柄の石油株が買い先行でスタートし、本年高値を更新した。前夜12日の米原油先物価格(期近終値)が前日比1.55㌦高の1バレル88.84㌦と反発し、約1週間ぶりに本年高値を更新したことが買いの手掛かりになっていると見られる。

原油市場では需給に引き締まり感が指摘されるなど、市況は当面強含むとの見方に傾斜しているようだ。ENEOSのこの日の株価は4年8か月ぶりとなる600円台を目前に捉えている。INPEXは2008年10月以来、石油資源開発は2009年6月以来の高値水準に来ている。

米原油先物は2008年に145㌦の最高値を付け、2011年から2014年にかけて100㌦前後で推移していた。最近の石油株は原油100㌦時代の再来をあたかも織り込むかのような値動きを見せている。

(2023年9月13日配信)

9月8日の東京株式市場は、前夜の米国株式市場の下落を受けて、朝方から利益確定売りが先行する展開となったが、この週のGENIX-CN70は前週末比1.67ポイント上昇して161.86と3週連続値上がりし、前週に続いて指数算出以来の高値を更新した。この週は三菱重工、川重重工、三井物産、石油資源開発などが指数をけん引した。

原油先物価格(米WTI)は9月7日、前日比0.67㌦安い1バレル86.87㌦と、10日ぶりに値下がりし、前日まで値上がりが目に付いたINPEX、石油資源開発、日揮、ENEOS、三井物産、三菱商事などの資源関連株には利食い売りが広がった。

また、個別では、このところ物色人気を集めていた三菱重工も6日ぶりに反落した。半面、三菱重工の急上昇に対して出遅れ感が台頭していた川崎重工はこの日も買いが途切れず逆行高、10連騰となった。

三菱重工の本紙最新ニュース:長崎で脱炭素基盤技術 既存拠点連携し開発推進/三菱重工

川崎重工の本紙最新ユース:世界初ドライ式水素タービン、NOx抑制と高効率を両立/川崎重工
(2023年9月8日配信)

【特集】暮らしとまち未来会議2020〜コロナがもたらす「暮らし・まち」のパラダイムシフトを読み解く〜

【特集】暮らしとまち未来会議2020〜コロナがもたらす「暮らし・まち」のパラダイムシフトを読み解く〜

ウィズガスCLUB(住宅生産団体連合会、キッチン・バス工業会、日本ガス石油機器工業会、日本ガス体エネルギー普及促進協議会で構成)とエネファームパートナーズ、日本ガス協会は10月28日、「暮らしとまち未来会議2020」をオンライン開催し、約900人が視聴した。基調講演に続き、2会場に分かれて「暮らしの未来シンポジウム」と「まちの未来シンポジウム」を同時開催した。

〇主催者あいさつ

ウィズガスCLUBを代表し、高松勝日本ガス体エネルギー普及促進協議会会長(東京ガス副社長)があいさつを行った。

◇◇◇

世界規模で影響を及ぼす新型コロナウイルスは私たちを取り巻くさまざまなモノ・コトを激変させている。そのような環境を踏まえ、「コロナがもたらす『暮らし・まち』のパラダイムシフトを読み解く」を本日のイベントのテーマとした。

今後、私たちの暮らしやまちの未来はどのように変化していくのか、どのように変化させていくべきか、本イベントがこれらを考える機会になることを願っている。

〇基調講演「世界経済動向とポストコロナ社会」レジリエントで持続可能な社会に向けて/三菱総合研究所シンクタンク部門副部門長(兼)政策・経済センター長チーフエコノミスト武田洋子氏(米ジョージタウン大学公共政策大学院修士課程修了。1994年日本銀行入行。2009年三菱総合研究所入社。財政制度等審議会財政制度分科会委員、産業構造審議会委員、労働政策審議会臨時委員、行政改革推進会議構成員、税制調査会委員等を務める)

新型コロナウイルスの感染拡大が世界経済に及ぼした影響は非常に大きい。だからこそ、今から一歩先を見据えた行動をとることこそが、ポストコロナ社会により良い社会を築くことにつながる。

まず、コロナの世界経済への影響を見ていく。世界の感染拡大は今なお続いている。国・地域によってばらつきはあるが、外出行動はおおよそ8、9割のレベルに抑制された状況にある。

そうした中、34カ国の実質GDP(国内総生産)成長率を見ると、外出が抑制された4〜6月期はマイナス7・4%となった。7〜9月期はだいぶ戻していくことが予想されるが、感染拡大によって10〜12月期は反動が出てくるだろう。

一方、金融市場は対照的で、世界の株価はコロナ危機前を上回る水準に戻している。中央銀行の素早い対応が反転のきっかけとなったほか、株価は先の企業収益を見込むものであり、コロナから回復しさえすれば収益は戻るとの見方も背景にある。

しかし、金融市場が見込むほど実体経済は素早く回復できるのか、そのギャップがどういう形で現れるのか、目が離せない状況にある。

今後の世界経済については三つのシナリオを考えている。

シナリオ①は、感染自体は拡大を続ける中、一定の防疫措置を継続し、経済活動は緩和と抑制を繰り返すメインシナリオ。シナリオ②は重症化率の上昇等により防疫措置を強めなければならず、シナリオ①より経済活動を強めに抑制するもの。シナリオ③はワクチンなどの普及が進み、防疫措置が緩和できるようになるものだ。

シナリオ①の場合、世界の実質GDPは、ここ1、2年でなんとかコロナ前の水準に回復してくるのではないかと見ている。

・日本経済回復の課題は資金繰り、雇用、消費

日本経済への影響はどうか。4〜6月期は年率換算で28・1%と大幅なマイナス成長に落ち込んだ。経済活動が再開する中、景気の見方を先取りする現状判断DI(動向指数)も上向きになってきており、7〜9月期はかなり上に向かうと見込んでいる。

しかし、乗り越えなければならない課題はある。

一つ目は企業の資金繰りだ。日銀短観の資金繰り判断DIは大企業、中堅、中小でレベル感に差はあるが、一様に低下し、資金繰りは楽から苦しい方へと大きく変化している。中小の一部業種は相当苦しく、引き続き予断を許さない。

設備投資については日本政策投資銀行の大企業調査を見ると、コロナで見送った設備投資があると回答した企業が全体の3割となった。

事業の見直しが必要な場合に想定される取り組みとして「事業の整理・縮小」を挙げた企業も3割近かった。

一方、6割が「新たな製品やサービスの提供」、4割が「サービスのAI・デジタル化」と回答するなど、かなり明るい動きもある。競争力に大きく差をつける要素になるのは、ピンチをチャンスに生かすか、どうかだ。

二つ目が雇用の問題。政府は雇用調整助成金という政策で支えている。しかし、売り上げに対して人材がどの程度余っているのかを推計したところ、足元では多くの人を抱えたままで、リーマンショックと同レベルの雇用過剰な状態にある。企業が新しいビジネスにシフトする中、どうやってより伸ばしたいセクターに人を移すかが大きな鍵を握る。

三つ目は消費の問題だ。当社の調査では6割の世帯がコロナで所得が変化しないと答えた一方、所得が50%以上減ったと回答した世帯も1割あり、所得・消費の二極化が起きることが予想される。

春に支給があった特別定額給付金について生活者アンケートを実施したところ、貯蓄が6割、消費3割だった。消費に慎重な理由を聞くと、66%が将来に対する不安の増加を挙げた。不安をさらに分析すると、社会保障で財政が悪化するなど、構造的な問題に対する不安が非常に根強いことが分かった。ポストコロナ社会でも向き合っていかなければならない要素だ。

・世界の潮流に変化、未来見据えた一歩を

最後にコロナによる世界潮流の変化とポストコロナ社会の在り方について説明する。

コロナにより世界の潮流がどう変化したのか。一つ目は持続可能性の優先順位の上昇だ。SDGs(持続可能な開発目標)に象徴されるように企業においても国民の暮らしにおいても、より重要度が上がった。二つ目は集中から分散への変化。集中による効率性だけでなく安全を重視する分散がより意識されるようになった。三つ目はデジタルの加速とリアルとの融合。リアルの価値を高めるため、いかにデジタルを活用するかという視点が重要になっている。

そうした中、どのようなポストコロナ社会を目指すべきか。当社はレジリエントで持続可能な社会であると考えている。レジリエントとは感染症等に柔軟に対応できることであり、持続可能とは地球環境を維持しつつ、経済の豊かさと個人のウェルビーイング(良好な状態)を持続的に両立することだ。

それでは、どのように実現するのか。国際分野では、国際的なパワーバランスがより不安定化する中、日本としてはルールに基づく国際秩序を再構築するため、重層的な国際協調の実現に尽力していくことが求められる。

産業・企業分野では、デジタルとリアルを掛け合わせて付加価値をより高めていくことが重要だ。6月以降、企業の売り上げ・利益は改善傾向にあるが、元の水準に戻らない需要があるのは事実。重要なことは新たな需要創造だ。コロナで生じた課題に対し技術を活用しながらうまく解決し、ビジネスチャンスにしていくことが求められている。

また、さまざまなステークホルダーを重視する経営の意識も一層高めていくべきだろう。

社会・個人では、自律分散による社会の強じん化と、利他的視点に立った協調がより目標とされるべきだ。

暮らし方、住まい方はおそらく今後、さまざまな形に変わっていく。未来社会をイメージし、新しい市場創出に向けて取り組むことが極めて重要な要素になる。

人々が未来の暮らしや社会を求める中、企業がそうしたことを可能にするサービスを提供して初めて、暮らしが変わる。言い換えれば、それだけ新たな市場のポテンシャルがあるということだ。こういう時期だからこそ、未来を見据え、次の一手、前向きな一歩を踏み出すきっかけにしていただきたい。

〇暮らしの未来シンポジウム/パネルディスカッション1

【テーマ】ニューノーマル時代、「脱炭素・レジリエンス強化」の流れとエネファームの価値

・資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部新エネルギーシステム課長/水素・燃料電池戦略室長白井俊行氏(1999年通商産業省(当時)入省。エネルギー政策やバイオ産業、非鉄産業、経済協力や欧州、中央アジア地域の通商政策等を担当。04年、ジョージタウン大学経営管理学専攻修了。08〜10年、在イラン日本大使館に一等書記官として勤務したほか、15〜17年には国際エネルギー機関(IEA)のシニアアナリストを務める。19年7月に新エネルギーシステム課長に着任)

・東京工業大学特命教授・名誉教授/コージェネレーション・エネルギー高度利用センター理事長柏木孝夫氏(米国商務省標準局(現NIST)招へい研究員、東京農工大学教授などを経て、2007年東京工業大学大学院教授に就任。09年同学内に現先進エネルギーソリューション研究センターを設立し、センター長に。経産省総合資源エネルギー調査会委員、省エネルギー・新エネルギー分科会長など国のエネルギー政策作りに貢献。「超スマートエネルギー社会5.0」など著書多数)

・積水ハウス常務執行役員環境推進担当工学博士石田建一氏(1985年積水ハウス入社。06年温暖化防止研究所長、11年から環境推進部長兼任。16年常務執行役員、19年より現職。08年に世界初の家庭用燃料電池搭載住宅、11年に3電池連携住宅、13年にZEH「グリーンファーストゼロ」を発売、早くから住宅のレジリエンス性強化に取り組む。日本気候リーダーズ・パートナーシップの共同代表)

石田このほど菅総理が2050年脱炭素化を発表したが、積水ハウスは08年に50年に脱炭素宣言をし、09年には1990年比で二酸化炭素排出量50%以上削減する「グリーンファーストモデル」、13年にはネットゼロエネルギー住宅(ZEH)「グリーンファーストゼロ」を発売した。ZEHは昨年度の販売戸建住宅の87%に達し、販売戸数は累積5万棟超と世界一。エネファーム付き住宅も5万8000棟超と世界一だ。

当社は季節変動が大きい日本における脱炭素実現には、エネルギーの長期貯蔵の観点から水素が必要と考え、水素社会のキー技術である燃料電池の普及に努めてきた。エネファーム市場における当社のシェアは10年の50%から約10%に下がったが、新築設置率は13年の60%をピークに今も50%を維持している。

しかし、エネファームの出荷台数は3年前をピークに徐々に減っている。脱炭素およびレジリエンスに貢献する燃料電池を官民を挙げて促進していかなければいけないという思いで今日は参加した。

柏木第5次エネルギー基本計画では、不安定性のある再生可能エネルギーを最大限活用するとある。電気は同時同量、使っている時に発電しなければいけないので何らか調整電源をデマンドサイドの中に組み込むことが重要だ。再エネの需給状況に合わせ、住宅団地などに大量導入したエネファームをデジタル技術で遠隔制御すれば、系統の安定化が図れる。分散型電源を束ねた仮想発電所(VPP)という新しいコンセプトだ。

また、エネファームは災害時の電源確保による住宅のレジリエンス性を強化するシステムとしても注目される。地下のガス導管は風水害や地震にも強い。強じん性と電力需給調整がエネファームに課された大きな貢献点だと思う。

今後、強じん性に優れた「ZEH+R」の拡大が予想される。経産省の働き掛けで「R(レジリエンス)」の要件に蓄電池、太陽光と並び、停電時に発電するエネファームが盛り込まれ、太陽光とエネファームのダブル発電を積極推進する動きが出てきた。制度、エネファームメーカー、ハウスメーカーが力を合わせた素晴らしい成果だ。

・脱炭素の鍵「水素」

白井脱炭素については梶山経産大臣からも再生可能エネと扱えるものを最大限活用しつつ、新たな選択肢として水素を追求するという発言があった。国は「水素基本戦略」を策定し、30年に向けコスト低減マップを描き、利用面でもモビリティー分野での活用を進めつつ、民生分野ではエネファームを含め利活用を拡大する方向性を示している。

今や世界が注目する水素だが、そのきっかけの一つが私どもが18年から開いている水素閣僚会議だ。今年度はコロナ禍、オンライン開催したが23カ国・地域、民間からも約25社が参加し盛況だった。登録者数は約2800人と昨年の4倍以上、動画視聴回数も延べ8000回超と海外からも多く視聴してもらった。

背景には、脱炭素化の切り札として水素が認知されていることがある。欧州委員会はコロナ禍における経済復興パッケージの中で、水素の活用を柱の一つに位置付けた。欧州を中心にカーボンニュートラルの実現を旗印として政策を実現していく中で、オランダ、ドイツ、フランス、スペイン、ポルトガル、オーストラリア、ニュージーランドがこの1年間に水素戦略を打ち出した。国際エネルギー機関の世界エネルギー見通しでも、50年のカーボンニュートラルの世界実現には水素の生産量を現状の約百倍に高めなければならないとしている。

石田当社は04年に太陽光+蓄電池の防災住宅、11年には東日本大震災の計画停電を踏まえ太陽光+蓄電池+燃料電池の3電池連携住宅を発売した。太陽光だけだと晴天時しか充電できないが燃料電池は充電しながら使えるためほぼ普段通りの生活ができる。静岡県で停電が起きた際には、当社で建てた通常仕様の家に住む兄が、3電池仕様の弟の家を家族で訪問し、普段通りの生活ができることに感心されたそうだ。昨年と一昨年、大阪で台風が起きた時には800棟以上が停電時に電力供給できて喜ばれた。中には「燃料電池があるので携帯電話の充電ができます」と垂れ幕を出された方もいた。温暖化で自然災害による停電も増える中、ますます天候に左右されないエネファームのレジリエンス性能に対する評価が高まっている。エネファーム住宅が増えれば、街全体のレジリエンス性能の向上にも貢献できると思う。

また、脱炭素社会では、クリーンな分散型発電というのが非常に重要となるため、この面でも燃料電池の位置付けは上がってくるだろう。

・530万台へ課題

柏木わが国では「水素燃料電池戦略協議会」と「強靭化基本計画」に燃料電池の活用を掲げ、何があっても災害に強い日本を目指している。スマートな都市づくりと強じん化を同時に進めており、エネファームを含めたこのパッケージの輸出も可能だろう。

そういう意味で期待度は非常に大きく、30年に530万台という目標は不可能ではないと考える。現在の普及台数は約33万台だか新設着工数の半分40万戸に毎年入れば、これが加速すると思うからだ。

白井エネファームの初期需要の創出に、国は補助金を助成してきたが、レジリエンスに対する評価の高まりから自立的普及段階に入ってきたと捉えている。高度な利活用では分散型電源としての普及を促進していく必要があると考えている。コスト面の問題では技術開発支援も行っている。エネファームについては今後、分散電源として住宅や地域のレジリエンス強化への貢献、VPPとして電力の需給調整への活用が期待されるほか、日本が誇る技術の一つとして、水素に対する関心が高まる世界でも導入が進むことを大いに期待している。

石田年4万台の普及ペースを40万台へ引き上げるにはコスト低減が必須だ。コストに関しては売れないから下げられない、下がらないから売れない、という卵と鶏の状態が続いている。この流れを変えなければいけない。コスト低減は量産化を意味する。国として1企業1ラインに補助金を出すのは難しいのかもしれないが、一回安くなれば海外でも売れ、台数が増え、コストダウンが加速するという好循環に入る。日本はいつも技術で勝ってビジネスで負ける。世界トップの燃料電池分野も、いつ中国にとって代わられるかもしれない。今回はそれを阻止して、ぜひ世界で燃料電池を売ってほしい。

柏木将来的にVPPはエネファーム設置住宅に収入をもたらすだろう。今までエネルギーの消費者でしかなかった住宅が、人が必要とする時に自分の家をうまくコントロールし、電気を売ってキャッシュを得る。そういう良い循環を生む制度設計がうまくリンクすると、一挙にエネファームに対する期待は高まってくると信じている。

〇暮らしの未来シンポジウム/パネルディスカッション2

【テーマ】ウィズコロナ・アフターコロナで変化する新たな時代の「暮らし」のゆくえ

・トレジャーデータエバンジェリスト/consulting&more代表若原強氏(パネリスト・東京大学工学部、同大学院工学系研究科修了後、システムインテグレーター、戦略コンサルティングファームなどを経て2019年トレジャーデータ入社。現在データを活用した社会変革の拡大に従事。前職のコクヨではワークスタイル研究所所長を務め、働き方・暮らし方のトレンドを研究。自身のコンサルタント事業は3期目を迎え、複業家としても活動)

・早稲田大学理工学術院創造理工学部建築学科教授・工学博士田辺新一氏(パネリスト・専門は建築環境学。早稲田大学理工学部建築学科、同大学大学院修了。デンマーク工科大学研究員、カリフォルニア大学バークレー校研究員、お茶の水女子大学助教授、早稲田大学理工学部建築学科助教授を経て2001年から同大学教授。日本学術会議会員、空気調和・衛生工学会前会長。主な著書に「ゼロ・エネルギーハウス」(萌文社)など)

・SPEAC共同代表/東京R不動産ディレクター林厚見氏(ファシリテーター・東京大学工学部建築学科、コロンビア大学建築大学院不動産開発科修了。マッキンゼー&カンパニー、国内の不動産デベロッパーCFOを経て、2004年から現職。不動産セレクトサイト「東京R不動産」や「toolbox」のほか、建築と地域の開発・再生のプロデュースや、宿泊施設、広場、飲食店舗等を運営する。東京大学工学部、早稲田大学創造理工学部で非常勤講師を務める)

・変化をチャンスに

林私は「社会課題と事業課題を空間と仕組みのデザインで解決する」をテーマに事業を手掛けている。

「東京R不動産」は不動産セレクト仲介サイト。古いが趣のある建物などを紹介している。建物や設備のスペックではなく風情や情緒など、今までなかった切り口で物件を提案しており、不動産の新しい価値創出につなげている。このサイトから派生した「toolbox(ツールボックス)」は、オンラインショップでオリジナリティのある内装建材や家具パーツの販売などを行っている。

公共施設を民間事業者に活用してほしい自治体と利用したい民間事業者のニーズを受けて始めた「公共R不動産」では、廃校や公園などのデーターベース化のほか、マッチングイベントなどを開催している。

共同事業として携わっているのが定額制の多拠点居住プラットフォーム「ADDress(アドレス)」だ。月額4万円で全国各所にあるリノベーションした空き家や別荘に宿泊・居住が可能で、今後拠点を増やしていく。

コロナ禍で生活様式の変化が予想以上に進んでいくだろう。多拠点居住やシェアオフィスなど一部の人たちだけに限定されていたライフスタイルが広がれば、15年後には別世界になっている可能性がある。そういった社会を想像し、ニーズに合った商品やサービスを実現させることが企業にとってビジネスチャンスになる。

・健康・強じんな住環境

田辺コロナ禍でオフィス勤務と在宅勤務の両立など働き方が大きく変わった。この二つの勤務形態について企業と共同研究を行ったところ、在宅勤務ではコミュニケーションの不足を感じている人が多かった。一方、アイデア創出や業務への集中力はオフィス勤務と同程度などという結果となった。

暮らし方も変わり、在宅時間が多くなった。しかし、古い住宅に住んでいる場合、断熱性が低いことが多い。世界保健機関は、健康面での暖かさと断熱性の重要性をまとめた「ハウジングアンドヘルスガイドライン」を公表し、冬の室温は18度以上を保つことなど快適で健康性の高い冷暖房が必要だと指摘している。

レジリエンスについては今年8月、大阪ガスなどと停電を想定した共同実験を同社の実験集合住宅NEXT21で実施。全10戸34人が48時間参加し、停電時にエネファームを使ってどのくらい電気や熱を利用できるのかを実証した。その結果、エアコンや冷蔵庫などの家電が使えることが分かった。

コロナ後の社会は超分散化、デジタル化、脱炭素化が一層進む。住宅関連サービスも住み心地や快適さに加え脱炭素化に向けた投資が必要だ。

・暮らしの分散化

若原当社が取り組むのが、さまざまなテクノロジーを活用したコンセプト住宅「OUTPOST(アウトポスト)」プロジェクトだ。

特徴は二つ。一つはオフグリッド(送電網等につながっていない状態)でインフラ環境がない場所でも自家発電設備などを活用し熱や電気、水を使用できることだ。たっぷりのお湯でお風呂に入れトイレも使え、空調も保たれる。

もう一つはコネクテッド(通信のつながる環境)で、人里離れた場所でも見守り機能を設置し、異常を検知した際は病院や警察に通報するなど、住人の安全を担保できることだ。

このように、大自然の中でも都会と同じ住環境で暮らすことができ、住人の生活をモニタリングすることで健康で豊かな暮らしを実現する。このプロジェクトによって、人々の暮らしは本来どのくらい分散しているべきなのかという問い直しのきっかけになればいいと考えている。

コロナ禍でオフィスの在り方が見直され、働く場所の選択肢が増えた。さまざまな選択肢の中から自分に合った働き方を組み合わせることで、暮らし方を最適化できるのではないか。

・加速する暮らしの変化

林コロナの影響で暮らし方が根本的に変わったというよりは、変化が加速されたように思う。

田辺孤立化が加速したのではないか。人は心身共に健康でいることが大切だが、コロナ感染による重症化リスクの高い高齢者は友人や親戚に会う機会が減り、孤立を感じている。心の健康のためにはデジタル技術等を活用し、孤立化を防ぐことが重要だ。

若原働き方についても孤立化が進んでいる。オンラインでできる仕事が増えた一方、同僚と顔を合わせる機会が少なくなった。対面コミュニケーションが不足すると雑談で生まれていたアイデアが減り、その結果、組織の弱体化につながるのではないかという懸念もある。仕事の効率化は必要だが、リアルの場も必要と考える。

田辺在宅勤務によって自宅の暖房や日当たりなど住環境の見直しを考えた人が多い。オフィスは画一的な環境に大勢の人が過ごす。一方、自宅は暮らしやすく働きやすいように自分で快適な環境に調節できる。

若原暮らし・住まいの快適化にデータが生かせる。住人の行動分析を行い、これらのデータを活用してスマートハウスやエネルギーマネジメントなど暮らし方、住まい方にフィードバックできる。一方で、データに全てを決めさせるのではなくデータは快適に暮らすための判断材料にし、最終的にはどういった暮らし、住まいにするのかを自分で決めることが大切だ。

林確かに人の定めた価値基準で選ぶと自分の選択は正しかったのか不安にかられてしまい、幸福にたどりつかない。暮らし方や働き方を能動的に選択する事で快適さや幸福につながるのではないか。

・選択を促すには

林日本の住宅のあるべき姿や政策の話は、ネガティブな情報よりも楽しさや気持ち良さといったポジティブな体験を伝えた方が、訴求力があると考える。明日が楽しくなるというワクワク感を打ち出せるといい。

田辺日本の住宅の多くは冬になると室内が寒く感じられる構造になっており、健康を害するリスクもある。例えば、脱衣所と浴室との温度差で心筋梗塞など重篤な病気を引き起こす「ヒートショック」は、1年間に1万7000人が亡くなっている。適切な温熱環境を広めるためには危険だからダメというよりも、快適な暖房や環境がある生活は人生を楽しくするといった視点で話をした方が効果的かもしれない。

若原自分の暮らしをもっと楽しく、豊かにするには能動的に選択することが重要だ。住宅地に住まなければならないとか、家族構成から暮らし方はこうあるべきとか、そういった固定概念を取り払って家族が楽しく暮らせる方法を議論する必要がある。

・新サービス創出へ

林災害に対する不安は10年前に比べて明らかに高まっている。

田辺これまで住宅をめぐる災害は地震や火災が多かったが、近年は水害が増加した。災害の変化に対応したレジリエンスを考えなければならない。レジリエンスは非常に大きなサービス価値を持っており、ニーズがある。

林企業が新たなサービスを提供するには頭の切り替えが必要だ。不動産分野では、特に郊外に空き家が増えている影響で住宅の価値が下がることが予想される。一世帯が一つの住居を所有するというこれまでの考えでは市場が縮小していくが、発想を変えると多くの住宅を使った新たなサービス創出のチャンスと捉えられる。

若原これまでの考えから脱却するには多くのハードルが存在するが、このハードルをどう解決していくかということにビジネスチャンスがある。脱却した先にある豊かさというのは非常に楽しみだ。

林今後は、人口流出などにより住民サービスが低下する街が増えるだろう。その中で、住民がお互いに暮らしを作っていくための仕組みが必要だ。ガス会社は地域を地盤に事業を行っており、住民ネットワークなどサービス提供のインフラを持つ。社会変化に対応した付加価値サービスの提供が期待される。

〇ウィズガスCLUBの主な活動

(1)政策提言—ウィズガス住宅の提唱(2)情報発信—シンポジウム開催、住生活イベントへの出展(3)社会貢献—クッキングコンテストの開催(4)環境貢献—ブルー&グリーンプロジェクトの推進

ウィズガスCLUBはガス、住宅、キッチン・バス、ガス石油機器の4業界が参加するコンソーシアムだ。2005年10月、都市ガス、LPガス、旧簡易ガスのガス3団体が立ち上げた日本ガス体エネルギー普及促進協議会(コラボ)が中心となって、06年6月に設立した。

「人々の豊かで潤いのある暮らし」の実現を基本方針に掲げ、(1)政策提言(2)情報発信(3)社会貢献(4)環境貢献—活動に取り組んできた。

政策提言では「ウィズガス住宅」を提唱。快適で環境性に優れ、家族団らんをもたらす住宅を最新の省エネ住宅・ガス機器でかなえようという構想だ。情報発信では18年まで「ウィズガスCLUBシンポジウム」を、昨年からは「暮らしとまち未来会議」を開催。今年はコロナ禍で中止となったが国土交通省が推進し、住宅生産団体連合会が取り組む10月の住生活月間中央イベントにも出展してきた。

社会貢献では食育をテーマに「ウィズガス全国親子クッキングコンテスト」を開催している。07年度から毎年、全国のガス事業者が募集活動に従事し、19年度の応募総数は5万8402組に達した。コロナ禍に見舞われた今年度は代替策として、親子で楽しく作れるレシピと動画を公開した特設サイト「ウィズガスおウチで親子クッキングチャンネル」を11月24日に開設。調理を通じ、親子のコミュニケーションを深め、家庭での食育推進を促す狙いだ。

環境貢献では、ベターリビングが主催する「ブルー&グリーン(B&G)プロジェクト」に協賛する。この取り組みは06年6月に「BL—bsガス給湯・暖房機」に認定するエコジョーズ、エネファーム、エコウィルの出荷1台につき1本をベトナムに植樹し、省エネガス機器の普及と植樹によるダブルの温室効果ガス削減を図る活動として始まり、15年度からは東日本大震災で津波被害のあった岩手県陸前高田市の名勝「高田松原」の再生支援事業に取り組んでいる。

〇まちの未来シンポジウム

基調講演/分散型エネと面的利用

まちの未来シンポジウムは、コージェネレーションを主体とする分散型エネルギーシステムの環境性やレジリエンス性の価値、それをまちづくりに生かす方向性を示す講演で構成した。2者の都市ガス事業者が自治体と連携した取り組みを発表した。

日本ガス協会の沢田聡専務理事は「このシンポジウムは日本ガス協会が事務局を務め全国10エリアで活動している官民連携のプラットフォームであるコージェネレーション・地域エネルギーシステム協議会の取り組みが母体となっている。まちづくりと一体となった地域エネルギーシステムの構築が求められており、その担い手に地域の生活や産業を支える都市ガス事業者は最適。ガスだけでなく地域の多様なニーズに合わせ、さまざまな関係者と協力して取り組むことが必要だ」と開催趣旨を説明した。

経済産業省資源エネルギー庁の下堀友数ガス市場整備室長は「ガス市場整備室では2050年のガス事業の在り方について研究会で議論を進めている。ガスの強じん性や、分散型エネルギーシステムを活用したエネルギーの面的利用によって省エネと脱炭素化に貢献できることが強みだと認識し、今後のエネルギー政策に生かしたい。ガス事業者や自治体、不動産事業者などの関係者の皆さまと連携し、まちぐるみで分散型システムの整備を進めることが持続可能な社会につながる」とあいさつした。

同庁省エネルギー・新エネルギー部の山口仁政策課長兼熱電併給推進室長は「昨今の情勢変化を踏まえたエネルギー政策の検討と分散型エネルギーの推進」をテーマに、基調講演を行った。

山口課長は、再生エネルギーの主力電源化を進める上で、分散型エネルギーシステムの重要性が増していると説明。より環境性の高いエネルギーを求める需要家ニーズが高まっていることや、レジリエンスの観点の広がりが分散型エネルギーシステムの普及を後押ししていると述べた。

分散型エネルギーシステムの整備を進めるために政府が進めるエネルギー供給強じん化法や地域マイクログリッドの構築支援策、各種の実証事業、エネルギー基本計画の改定作業などに取り組んでいることなども紹介。ガス事業者に対して「これまでの地域密着の実績を生かしながら、分散型エネルギーの普及推進役の中心として活躍してほしい」と期待を語った。

国土交通省都市局の菊池雅彦市街地整備課長も「国土交通省におけるエネルギー面的利用に向けた取り組み」をテーマに基調講演を行った。

菊池課長は災害時のエネルギーの供給途絶による都市機能が停止するリスクの軽減のために、エネルギーの自立性の向上や多重化を推進することが必要と述べ、特に自立分散型面的エネルギーシステムを街区に導入することが、全体のエネルギー効率と防災性の向上の観点から、より効果的だと指摘した。

国交省は自立分散型エネルギーシステムの導入は都市開発と一体的に行うことが有効と考え、「国際競争拠点都市整備事業における業務継続拠点整備事業」で大都市におけるエネルギー導管等のネットワーク整備を支援している。菊池課長は、さらに地方都市にも導入を進めるためのコンパクトシティ化と一体的な取り組みが重要と述べ、次年度予算案の概算要求に「都市構造再編集中支援事業」を盛り込み支援する考えを示した。

・東京・北陸ガスが事例発表

東京ガスエネルギー企画部の清田修エネルギー計画グループマネージャー(GM)と北陸ガス営業部の田村鉄弥エネルギー企画GMは、自社の取り組みを紹介した。

清田GMはスマートなまちづくりに向けた官民連携の取り組みとして、コージェネと再エネ、情報通信技術を組み合わせ、環境性、レジリエンス性を実現した「田町スマートエネルギーネットワーク」(東京都港区)や「GREENSPRINGS」(東京都立川市)の事例を挙げた。

田町スマエネは港区と連携し、再開発に合わせて開発した。一方、GREENSPRINGSが立地する立川市は規模や人口減少のペースも全国の地方の中核都市と類似しているため、同様の取り組みを全国展開する際のモデルケースになるという。

田村GMは、国交省が地域の特色を生かしたまちづくりを支援するために創設した「シビックコア地区整備制度」を活用し、新潟県長岡市で行った防災力向上のための取り組みを説明した。

長岡防災シビックコア地区では、04年の新潟中越地震で被災した経験に基づき、市と連携して消防本部庁舎などの拠点施設に停電対応型コージェネ等を導入し、施設間でエネルギーを融通している。

最後に日本ガス協会の吉田範行天然ガス普及ユニット長が、今後のまちづくりにおける分散型エネルギーシステムの貢献を、多様な実事例を交えて紹介した。さらにコージェネ等の分散型エネルギーシステムの普及促進に向けた同協会の活動と、それらのシステムが将来的に脱炭素化社会に貢献していく絵姿を、都市ガスの脱炭素化の取り組みと合わせて解説した。

最大2ヶ月おためし定期購読キャンペーン実施中!