![【ガスの記念日特集】情報発信と地域貢献](https://www.gas-enenews.co.jp/wp-content/uploads/2023/10/20231030_8-13.jpg)
10月31日は「ガスの記念日」。今回の特集では地方ガス会社の意欲的な取り組みを紹介する。巻頭ではスマートフォンの普及に伴い、重要性が高まる交流サイト(SNS)を使った情報発信について、フォロワー数アップを狙った四つのコラボ事例を取り上げる。また、北海道ガスの新築施工部隊の活動を紹介する。9ページでは地域貢献活動として、金銭的な寄付から人的支援へ一歩踏み込む静岡ガスの新組織の挑戦と、市から事業を譲り受け2021年4月から都市ガス供給を開始した金沢エナジーの取り組みを紹介する。10~11ページでは、今年7月に本紙主催で実施した北海道のカーボンニュートラル関連施設など6カ所の視察ツアーの模様を取り上げる。
<コラボでSNS盛り上げ/西部ガス×広島ガス>
SNSの中でも、写真や動画で料理レシピや地域イベント等を手軽に探せる「インスタグラム」に取り組むガス事業者が増えている。ガス事業者が抱える共通の課題として頻繁な更新作業と並んで挙げられるのが、地域の人に見てほしいけれど再生回数が増えないと見やすい位置に投稿が表示されないため、全国大でフォロワー増を図らなければならないことだろう。そこで注目されるのが、他事業者とのコラボキャンペーンだ。ガスエネルギー新聞が今年3月に実施した「SNSワークショップ」をきっかけに始まった広島ガス、西部ガス、大多喜ガスの取り組みを中心にコラボの取り組みを紹介しよう。
8月23日、広島ガスのショールーム「ガストピア五日市」に8人が集まった。広島カープのユニフォームに身を包む広島ガスエネルギー事業部販売推進部プロモーショングループと、西部ガス北九州リビング営業部の面々だ。前列の「おじさん」社員が料理対決を行うという。
実はこれ、インスタグラムのコラボ企画。料理レシピを中心に展開する「広ガスダイニング」と、おじさん社員をコンテンツとする西部ガス北九州「がすまる部屋」が双方異なるテイストで取り上げる。プレゼントキャンペーンも実施し、お互いのアカウントのフォロワー増を狙った。
「ネオおじ」こと広島ガスの山根貴之マネジャーと、「イケおじ」こと西部ガスの梅本隆徳住宅開発グループリーダーが「明太子のだし巻き玉子」と「広島菜とちりめんじゃこのチャーハン」を作る姿を、6人がスマートフォンを手に取り囲む。この日が人生3度目の玉子焼き作りという山根マネジャーと、娘の弁当も作る梅本リーダーの腕前の差は歴然だったが、撮れ高は山根マネージャーに軍配が上がった格好だ。
どのような仕上がりになったかというと、広島ガスは2回に分けてレシピの後に料理対決の様子をチラ見せし、続きを「がすまる部屋」へ誘導。「がすまる部屋」では、過去に新築営業畑で交流のあった2人のバトルを効果音も使って盛り上げ。背中合わせで調理する2人の手際を見守り、時には口も手も出す女性陣の様子とともに、3回にわたって紹介し、レシピは「広ガスダイニング」へ誘導した。
●3段階で仕掛け
2社はまずコラボ企画の概要をアップ。料理対決に続いて、相手の人気レシピを自社で再現、プレゼントキャンペーンと3段階で展開した。レシピの再現では広島ガスが「肉まん」、西部ガスは梅本リーダーと学生時代から友人の小田浩一法人営業グループリーダーの2人が「春ニラとツナのチヂミ」を作る動画を公開。現在は11月30日まで、2社フォロー&いいねプレゼントキャンペーンを実施中だ。
広島ガスのインスタは熊野直子さん、平岡美佑貴さん、白川貴実果さんが担当。3人とも3~10歳の子供を持ち、時短勤務で働く。熊野さんは「コンロを使いこなしてもらえるよう旬の食材を使った簡単レシピを中心に、広ガスポイントが使える地元の飲食店等も紹介している。ウェブ会員を増やすためにもフォロワーの拡大が必要。今年度は他事業者とのコラボ企画に注力し、1万人のフォロワーを目指したい」と話す。
西部ガスは入社3年目の越智慶奈さんが中心となり、高木美和マネジャー、小田リーダーが支える。2021年10月開設の「がすまる部屋」は、ガス機器PRカー「ガスマルシェ号」のイベント紹介、新築見学会などサブユーザー支援、社員紹介や地元企業のPR等を行う。
越智さんは「インスタはイベント集客に有効。紙に比べ安価に多くの集客ができる。住宅系のイベント集客が評価され、現在米メタのマーケティング部と月1度ミーティングしている。『いいね』やコメント増で目に留まりやすくし、再生回数を伸ばす好循環を目指している。広告も効果的に使って、インスタを他事業者と一緒に盛り上げていきたい」と語った。
<「ガスチャレバトン」/大多喜ガス×広島ガス>
広島ガスが初めてインスタでコラボしたのは大多喜ガスだった。大多喜ガスが2021年のウェブガス展と今年3月に実施した、ガス火調理中の1シーンや料理の写真を募るキャンペーン「ガスチャレ」をバトンリレー形式で引き継ぐ「ガスチャレバトン」だ。バトンをつなぎ、インスタの盛り上げの相乗効果を狙う。
ガスチャレバトンは3段階で実施。まず、6月16日に両社のアカウントで概要を紹介し、お互いの人気レシピを2品ずつ掲載。広島ガスは6月27日から第2弾としてフォトコンテストの募集をスタート。「炎のある暮らし」「ガスのある生活」など対象範囲を広げて約20日間、写真投稿を受け付け、大賞と広島ガス、大多喜ガス賞各1作品を選んだ。第3弾の「いいね&フォロー」キャンペーンは8月1~16日に行い、抽選で各3人に広島賞と千葉賞を贈呈。両社アカウントをフォローし、「いいね」を付け、ほしい商品をコメントすると当選確率がアップする仕掛けをし、約180件のコメントを得た。
大多喜ガスは販売推進グループの佐瀨彩央里さん、髙梨琴李さん、守屋知花さんを中心に月16~18回のペースでインスタを更新。イベント周知と最新ガス機器紹介、料理を3本柱とし、ショールームへの誘致と機器拡販、ガスファン作りを目的とする。髙梨さんは「最近はハッシュタグ(#)を最低15個以上、検索に引っ掛かりやすいように工夫して付け、投稿へのリーチ数の増加を狙っている」と話す。
同社は昨年12月、同じ千葉県を供給地域とする京葉ガスと行った「千葉でぜいたくキャンペーン」が初のインスタコラボだった。新規フォロワー獲得と、互いのフォロワーに両社のショールームを知ってもらおうと企画した。
<ツイッターでキャンペーン/静ガス×北ガス>
静岡ガスと北海道ガスが昨年8月に共同で実施したのはX(旧ツイッター)の公式アカウントを使った「フォロー&リツイートキャンペーン」だ。両社ともSNSでのガス会社コラボはこの時が初。コロナ禍3年目の第7波が拡大していた夏休みに当たり、旅行気分を少しでも味わってもらおうと、お互いの名産品を賞品とし、需要家を中心にフォロワー数の増加を狙った。
両社とも公式Xアカウントを災害時に広報に役立てるツールとして位置付ける。多くの情報が飛び交う災害時に、自社のアカウントを需要家に見てもらうためには、活発な更新頻度と需要家にフォロワーになってもらうことが重要だ。そこで両社は自社の部活動や地域情報の紹介のほか、定期的なキャンペーンで魅力を高めている。
キャンペーンは18日間実施。静ガスは白い恋人で有名なISHIYAのお菓子詰め合わせ、北ガスは静岡のお茶とうなぎパイセットを抽選で各10人に贈呈したところ、リツイート数は合計で6330件に上り、両社ともコラボによる相乗効果を実感した。
<新築施工現場を管理、エネファームの凍結防止/北海道ガス>
北から暖房シーズンが始まった。暖房が冬の暮らしに欠かせない北国では寒い中、修理作業も大変だ。機器設置にも寒冷地ならではの苦労がある。北海道ガスで新築住宅の施工管理に従事する設備技術サービス部の5人に、エネファームの凍結防止策や仕事に対する思いなどを聞いた。
5人は写真右から嘉多山洋一機器施工担当マネージャー、工藤省悟氏(26、今の部署は4年目)、菊地響希氏(24、2年目)、十文字直樹氏(19、1年目)、山田拓之氏(32、3年目)。彼らの仕事は戸建て・賃貸物件にガス配管や機器が正常に設置されるよう管理する現場監督だ。ハウスメーカーは担当制としており、8人部隊で1人当たり15~20の現場を持つ。ほぼ標準設置のエコジョーズに対し、施工が難しいエネファームの現場を中心に施工管理を行う。1件当たりの管理期間はパネルヒーター等の温水端末やガス配管の位置決めから敷設まで含め3~4カ月。降雪中も工事は止めない。基礎工事もテントを張って暖房を入れて行う。
寒冷地仕様のエネファームは燃料電池+貯湯ユニットを屋外に、バックアップボイラーを室内に置くため、エネファームが動き出すまで冬場は外から中へ引き込む配管の凍結を防ぐ必要がある。「配管にはヒーター線をはわせて断熱材で包み、さらに断熱テープを2重に巻いて保温する。貫通部はこの対応ができないため風が強い日は特に注意が必要」(工藤氏)。ヒーター線はドレン排水管に付けたサーモが気温を検知し動く。ヒーター線とサーモが近く、サーモが作動しなかった案件があった反省から、2021年の大寒波の際に両者の位置や作動温度等を見直し、凍結件数はほぼゼロになった。両部材は外さずに引き渡すため、長期間家を空ける時も安心だ。
●チームで力を発揮
昨春に高校を卒業した十文字氏は「どんな仕事か想像できなかったが先輩の話と表情にひかれて興味を持った。山田先輩に同行し勉強中。早く一人で動けるようになりたい」と前向きだ。北ガスジェネックスから出向の菊地氏も「前職の保安とは全く違う仕事だが、最近担当を持たせてもらって現場に出る場面が増えた」とやる気を見せる。
中堅2人は図面作成から竣工までトラブルなく現場を収める責任の重さを口にする。工藤氏は「工期中は常に緊張感を持ち、無事現場が終了するとほっとする」、山田氏は「苦労とやりがいが半々。平面図で予知できない事象に現場に急行することもある。家を造るのには多くの業者が携わるが、1年もすると顔見しりが増え、完成時にはチームで完遂したという達成感を味わえる」そうだ。
北海道は札幌市に加え、ボールパークができた北広島市やラピダスの工場建設が始まった千歳市等でも宅地開発が進む。嘉多山マネージャーは「余剰電力を買い取るコレモの系統連系までうちの部署で対応する。人が足りないのが課題だが若手の機動力に期待したい」とチームを鼓舞する。
■「地域貢献」/静岡ガス、金沢エナジー
静岡ガスと金沢エナジーはさまざまな取り組みで地域の活性化を後押ししている。静岡ガスは、専門組織を新設し、社員が積極的に参加できるよう社内の仕組みを整えている。スポーツやコンサート、環境、教育など多岐にわたる活動を通じて、より密接に関わる。金沢エナジーは、子ども支援のほか、若手工芸家の育成を目的にした工芸賞を新設した。前身の金沢市企業局の歴史や出資会社の知見を取り入れ、地域と共に成長することをモットーに継続的に実践していく。
◇◇◇
●人的支援で課題解決、一人一人の活動を後押し/静岡ガス
静岡ガスは今年1月、総務部の下に新しく「地域貢献担当」を設置した。同社はこれまでも地域貢献としてエネルギー・環境教育、奨学金の授与、クラシック音楽の冠コンサートの開催など、さまざまな取り組みを行ってきた。ただ資金支援に拠るところも多く、直接地域と関わる機会が少ないことが課題だった。新組織が中心となって、社員一人一人が地域貢献活動へ積極的に参加する環境を整えている。
3月に発表した地域貢献基本方針では、(1)全社員が自ら地域貢献活動に参加することで、社会的課題への感度と地域貢献への意識を高める(2)「地域づくり」「環境・安全・安心」「文化・スポーツ」の3分野を柱に積極的に活動し、地域の次世代を担う人材育成に取り組む――ことを掲げた。
地域貢献担当は石川麻友子マネジャーと鈴木なつき氏の二人。2022年11月に発足した社内横断型の組織「地域貢献推進プロジェクトチーム(PT)」と連携する。
PTは経営戦略本部が事務局を担い、各部門から若手を中心に社員17人で構成される。社員参加を促すための声掛けや情報発信など、各部門の旗振り役として機能する。
◇スポーツや植樹等
地域貢献の取り組みは幅広いが、社員自ら汗をかき、顔が見える活動に重点を置く。
スポーツ分野では、今年度からプロ卓球のTリーグに加盟した「静岡ジェード」のスポンサーについたことをきっかけに社員が試合会場の設営や運営のボランティア活動を行う。活動後には試合を見ることもでき、参加者から好評だったという。
音楽分野では、毎年開催する「グランシップ&静響ニューイヤーコンサート」において、これまで当日の運営はプロに依頼していたが、24年からはチケットのもぎりなどに社員が参加する予定だ。鈴木氏は「着物で来場される方の姿を見たり、常連だという方の話を聞いたりして、新年のイベントとして地域に親しまれていることを知った。お互いの顔が見える活動を通して分かることがある」と話す。
4月には、「シズガスの森」で植樹活動を行った。富士山のふもとにある静岡県富士市の土地10㌶に、今年と来年の2回に分けて富士ヒノキの苗木約3万本を植える予定だ。今年は5㌶に社員やその家族約600人が参加して、約7700本の苗木を植えた。
5㌶は東京ドームとほぼ同じ広さだ。この広大な敷地で参加者がスムーズに植樹できるよう、部門ごとにテープでエリア分けした。このほか、マイクロバスや道具の手配、地元森林組合との打ち合わせ、参加者向けの植樹方法の動画制作なども手掛けた。こうした準備のほとんどは地域貢献担当の二人だけで行った。鈴木氏は「何度も現地に足を運んで下見して、そのたびに1万歩は歩いた。参加者から『また参加したい』『社員交流の機会になった』という声が届き、励みになった。二人しかいないが、その分フットワークが軽く意思決定も早いので、実行に移しやすい」と話す。
◇ポイントで「見える化」
石川マネジャーは「『地域貢献』と言っても、何をしたらいいのか分からない、どう参加していいのか分からない社員が多い。だからと言って強制はできない」と語る。
そこで社員の積極的な参加を促すため、社内イントラネットの掲載方法を変えた。以前は文章のみで告示していたが、イメージが伝わりにくく、参加が低迷していた。そこで「地域貢献ページ」を新たに作成して「求人票」として掲載。イベント内容のタイトルと日時と開催場所を写真と共に並べ、一覧で分かりやすくした。「申し込みはこちら」のタブをクリックすると作業時間や募集人数が表示される。応募者一覧を表示して誰が参加するのか分かるようにしたところ、「知り合いがいるから参加してみようという気持ちが生まれ、相乗効果になった」(石川マネジャー)。
ユニークなのはポイント制にした点だ。活動1時間当たり10ポイントを付与する。貢献内容や高ポイントを獲得した社員は年末に表彰する方針だ。社外活動でもポイントを付与する。石川マネジャーは「社員も地域内で生活しており、町内会やPTA参加、サッカーや野球などのコーチを務めている。それも立派な地域貢献。その活動を可視化して評価するためにポイント制度を設けた」と話す。
フィードバックも欠かせない。6月、社員40人から不要になったスーツやネクタイなど317点を集め、日本語学校に通う外国人生徒に寄贈した。受け取った生徒からスーツを着て感謝を伝える動画が届いた。社内で共有したところ、やりがいを感じた社員が多かったという。
すぐに収益につながらない地域貢献活動でも、積み重ねることで地域を盛り上げ、やがてビジネスにつなげることを目指す。地域貢献担当が実現に向けた一歩を後押ししている。
●地域と共に成長へ、子ども支援、工芸賞創設/金沢エナジー
金沢市から事業譲渡を受け、2022年4月から事業を開始した金沢エナジー。子どもの成長に寄与する支援活動や若手工芸家の育成を目的にした賞の創設など、地域と共に成長することを目指し、継続的な地域貢献活動に力を入れる。同社は北陸電力や東邦ガス、地元企業などから出資を受けており、それぞれの知見を生かし、新しい取り組みに挑戦する。
金沢エナジーは22年5月、市の課題解決やSDGs(持続可能な開発目標)の達成を目的に、市との連携協力に関する協定を締結した。連携内容は(1)環境・エネルギー(2)安全・安心、災害対策(3)生活・文化(4)その他、持続可能な社会を実現するための施策――の四つ。この連携協定に基づき、地域貢献活動を実施している。
◇三つの子ども支援
将来を担う子ども達への支援活動に関しては、22年12月に「EGKの未来を育むプロジェクト」を立ち上げた。EGKとは同社の愛称で、電力・ガスと金沢の頭文字から取っているが、このプロジェクトでは「笑顔で・元気な・子どもたち」の思いも込めた。
プロジェクトは地域エネルギー企画部地域共生安全対策室の4人を中心にチームとして活動する。市と共に子ども・子育てへの支援策を協議する中で、23年度は(1)児童館への木製玩具提供(2)ひとり親家庭等への支援品提供(3)エナ丸&豆エナのこども実験教室――の三つを実現した。
(1)の児童館への木製玩具提供は22年度から3年間継続する事業。市内計33カ所の児童館にクリスマスプレゼントとして計330万円相当の玩具を贈る。社員がサンタクロースに扮し、子ども達に直接渡すことで社内における地域貢献意識の高まりも期待できる。実際に子ども達からお礼の手紙や電話の声が届き、やりがいを感じられたという。
(2)のひとり親家庭等への支援品提供は、市が主催する「拠点型子ども宅食モデル事業」に賛同して協力する。同事業は、食料提供を通じて生活の困窮や育児の悩みを持つ親が福祉職員に相談できる場として、社会福祉協議会が運営している。金沢エナジーは、災害備蓄品や社員から集めた食料品など約千個を提供。今後も継続していく。
(3)のエナ丸&豆エナのこども実験教室は、同社のキャラクター名を冠したイベントで、8月23日に初開催した。市内の小学4~6年生を対象にしたイベントで、ガス製造工場の見学や冷熱実験を実施。同社の前身である金沢市企業局時代でも行っており、そのノウハウを継承した。実験教室は、社員2人がガス博士とその助手に扮して実験するという新しい試みに挑戦。液体窒素を使用した温度による物質変化などを披露した。
山中久司副主任は「子どもはもとより保護者からも驚きの声が上がるなど、反応が良かった」と振り返る。参加者は家族含め15組32人だった。満足度は高く、他の実験があれば参加したいという声が多くあった。
◇若手工芸家を顕彰
金沢は加賀友禅や九谷焼、金沢漆器など城下町ならではの伝統工芸の町として国内外に知られている。一方で、工芸は40代でも若手と言われるほど職人の層が厚く、若手の作品がなかなか広まらないことが次世代へ継承していく上で課題となっていた。
そこで金沢エナジーは、若手・中堅の作家を顕彰する「EGK工芸アワード」を22年に創設した。応募要項は、石川県出身か在住歴がある個人・団体で、50歳までの人が対象。審査員は金沢エナジーの石本毅社長のほか、国立工芸館の唐澤昌宏館長ら8人が務めた。
応募は41件で、8月に第1回の受賞者が決定。賞は3賞あり、金沢エナジー賞にガラス作家の上前功夫氏、北國新聞社賞に陶芸家の中井波花氏、ビームス賞に漆芸家の池田晃将氏が受賞した。それぞれ賞金50万円が贈られ、金沢エナジーはメディアへの露出や販路拡大に向けた企業とのタイアップ支援を行う。
特徴的なのは、作家の人となりを重視した評価方法だ。一般的な公募型の美術賞は応募用のエントリーシートに氏名や年齢のほか、作品タイトル、受賞歴などを明記する場合が多く、作品は実物を審査会場へ持ち込む。他方、EGK工芸アワードは、作品や制作活動の思いをつづる項目を用意し、その文章を審査の重点に置いた。作品の写真を審査の参考資料とした。作家からはラブレターを書くような気持ちで書いたという声があった。佐野功マネージャーは「新しい会社ならではの賞にしたいという思いから始めた。地域に根付き、伝統ある金沢の工芸を広め、長く続ける価値のある賞になれば」と語る。
一方、誰でも参加できる賞もある。企業PRと地域の魅力発信を目的にインスタグラムで「EGKガス燈フォトコンテスト」を開催し、ガス燈のある春夏秋冬の風景を4回に分けて募集した。市民や観光客から計349件の応募があった。企画に携わった濱田結惟副主任は「暮らしにガス燈が溶け込んだ写真が集まった」と振り返る。この写真を活用し、新聞に広告として掲載した。山中副主任は「企業局として築いてきた歴史を引き継ぎながら、新たな挑戦をしていきたい」と意気込む。金沢エナジーの挑戦はまだ始まったかばかりだ。
■エネルギーのCN化最前線の北海道を視察
ガスエネルギー新聞は7月19日から21日まで3日間、「エネルギー業界のカーボンニュートラル視察ツアーin北海道」を開催した。参加者は都市ガス事業者や関連事業者など21人。視察団は、エネルギーのカーボンニュートラル(CN)化最前線の北海道を代表する6カ所を見学、意見交換をした。橘川武郎国際大学副学長(現学長)が同行し、期間中講演も行った。
◆◆◆
◎CCSなど施設集積チッパー併設のバイオ発電も/苫小牧市
視察団一行は、新千歳空港からまず北海道苫小牧市に向かった。同市は1910年に王子製紙苫小牧工場が操業開始して以来、工業都市として栄えた。戦後は、51年に国家レベルの事業として日本初の内陸掘込港建設に着手、現在の苫小牧港が築かれた。そうした産業を支えるため、製油所、油ガス田、発電所などのエネルギーの集積地ともなっている。今回の視察ツアーでは、日本CCS調査が運営するCCS(二酸化炭素=CO2=回収・貯留)の大規模実証試験施設、石油資源開発(JAPEX)の勇払油ガス田、苫小牧バイオマス発電の「苫小牧バイオマス発電所」を視察した。
◇国内初の一貫システム/日本CCS調査・実証試験センター
日本CCS調査は、CCSの大規模実証試験を、国から受託して実施した。2012~15年度に、実証試験設備の設計・建設・試運転等を行い、16年度から地中へのCO2圧入を開始した。19年11月22日には、目標の累計30万㌧のCO2圧入が達成され、現在は圧入を停止、モニタリングが行われている。
7月19日、最初の訪問先である日本CCS調査苫小牧CCS実証試験センターでは、会議室で中島俊朗社長(JAPEX取締役常務執行役員)の説明と、本社ビル屋上やバス内、圧入施設内で山岸和幸同センター広報渉外グループ長の現地説明を聞いた。
中島社長は、「日本CCS調査の設立は08年で、ちょうどG8(主要8カ国)北海道洞爺湖サミットが開かれ、共同声明でCCSの重要性が明記されるなど、CCS事業化への機運が高まった年だった」と、その成り立ちについて解説した。
同社は、電力、ガス、石油元売り、エンジニアリング、商社など幅広い企業33社(22年11月現在)の出資による民間会社。これまで、(1)苫小牧におけるCCUS(CO2回収・利用・貯留)大規模実証試験(委託元=NEDO=新エネルギー・産業技術総合開発機構)(2)CO2貯留適地調査事業(委託元=経済産業省、環境省)(3)CO2船舶輸送に関する技術開発および実証試験(委託元=NEDO)(4)CO2の資源化を通じた炭素循環社会モデル(委託元=環境省)==の四つの事業を行ってきたと説明した。
同実証試験センターのプロセスは、まず隣接する出光興産北海道製油所からパイプラインを通じて「オフガス」(CO2含有率50%、水素含有率40%、残りはメタンなど)を受け入れ、次にCO2吸収液(アミン溶液)を使ってCO2吸収塔でCO2を回収する。
CO2は圧縮機で昇圧し、液体と気体の特徴を併せ持つ「超臨界状態」とし、敷地内の圧入井から海底地下千~1200㍍の貯留層(萌別層=砂岩)と2400~3千㍍の貯留層(滝ノ上層=火山岩)に貯留した。圧入期間は16年4月から19年11月までで、貯留量は当初目標の3万110㌧を達成した。中島社長は「当施設は、分離・回収から圧入までの一貫システムを備える国内初のシステムで、世界でも珍しく、海外からの見学客もたくさん来る」などと語った。
同施設は工業地帯内にあるが、運河を挟んで苫小牧市街地に比較的近いことなどから、継続的なモニタリングなど住民等の安全・安心が重要とし住民説明会などに力を入れているとした。CCS事業の本格実施には多くの技術的・法的課題があり、国が検討中のCCS事業法(仮称)への期待も見せた。
現地説明では、山岸グループ長にCCSの各プロセスの仕組みや、貯留の実際などに関する説明を聞いた。同センターのCO2吸収塔は「2段吸収法」を採用している。同方式では、「低圧フラッシュ塔」と「CO2放散塔」を使う。前者は、減圧によってCO2を回収する上、CO2放散塔の水蒸気熱を再利用するため低エネルギーになる。またCO2放散塔は低圧フラッシュ塔で前処理したCO2中濃度アミン溶液の一部のみを再生するので加熱エネルギーを軽減できる。これらにより、通常型フローの3分の1から2分の1のエネルギーで分離・回収できることを説明した。
オフガスからCO2を回収済みのガスは水素、メタンなどの可燃ガスが多く含まれ、場内でボイラー燃料として有効利用していることなども説明した。
◇道内初の本格ガス田/JAPEX勇払油ガス田
JAPEX北海道事業所の勇払油ガス田は、道内初の本格的天然ガス田として、1989年に発見され、96年に生産開始して以来、安定供給を続けている。パイプラインとLNGローリーで道内にガスを送っている。
JAPEX北海道事業所では、松本洋所長があいさつ。勇払油ガス田が小規模ながら国内唯一のLNG製造施設を有している点が特徴の一つだと紹介した。総務グループによる勇払油ガス田および所内に設置したメガソーラーに関する説明の後、バスで構内を巡った。
勇払油ガス田は、苫小牧市勇払地区の約12キロ×4キロの範囲で設定され、地下4千~5千㍍に原油と天然ガスが存在する。これまで掘った井戸は20本で、現在稼働中の井戸は12ある。
国内の油ガス田は通常、地下2千~3千㍍の砂層から原油やガスを掘るが、勇払はそれより深い花崗岩層から原油やガスをとっている。花崗岩層は隙間のある砂層とは違い、通常は隙間がない。しかし、勇払では花崗岩層に無数の割れ目があり、そこに非常に高い圧力で原油やガスが入っているというのが他にない特徴だ。
視察団は、割れ目の入った花崗岩のサンプルも見た。現在は生産量が減退しているため、LNGの内航船でJAPEX相馬基地(福島県)や、北海道ガスの石狩LNG基地からLNGを受け入れている。
勇払油ガス田敷地内には2014年から稼働している北海道事業所メガソーラー(出力1800キロワット)もあり、事業所内の主要な施設とメガソーラーをバスで移動しながら見学した。
◇道内の未利用材活用/苫小牧バイオマス発電所
視察2日目(7月20日)、最初に訪れた苫小牧バイオマス発電所では、同発電所運営会社である苫小牧バイオマス発電の大藤雅生社長が、概要を説明、場内については同社の担当者が案内した。
苫小牧バイオマス発電所は、道内の森林間伐材など多くの「未利用木材」を燃料として有効利用し、木質バイオマス発電によって森林の健全化やCO2吸収力の強化に貢献している。同発電所から送電される電力は全て北海道ガスが買取り、「北ガスの電気」として一般家庭や企業などに販売されている。
苫小牧バイオ発電は、14年8月に設立。株主は三井物産40%、北海道ガスと住友林業、イワクラが各20%。発電能力は6194キロワットで、敷地総面積4万7580平方㍍は東京ドーム約1個分に匹敵する。17年4月に営業運転を開始した。24時間連続運転で、北海道ガスに固定価格買取制度(FIT)を通じて全量売電している。22年度は稼働率94・4%を達成するなど、高い稼働率を維持している。
FITでは、バイオマス発電は一般木材、廃棄物系バイオマス、リサイクル木材など4種類があり、買取価格がそれぞれ異なる。苫小牧バイオ発電は、燃料に「未利用木材」を採用しており、これは国内林の持続的経営に貢献できるとして買取価格が最も高く設定(1キロワット時当たり32円)されている。
燃料木材供給者は、三井物産フォレスト、住友林業フォレストサービス、イワクラ、北海道森林組合連合会で、胆振・後志・日高および道南を中心とした民有林・国有林から広く林地未利用木材を集めている。その範囲は苫小牧から半径約150キロ圏内だ。
苫小牧バイオ発電はこうした未利用木材を原木で仕入れ、チップ化施設(チッパー)を保有し、構内で自らチップ化する点が特徴だ。そのため、広大な土地に原木を置き、風と日光で乾燥させるのも自前で行っている。
通常はチップ化、ペレット化など、発電用燃料に加工する専業の業者もいて、バイオマス発電所はそこから燃料を調達するケースが多いが、大藤社長は「自前でやることで、マージン分がコストダウンできる」などと説明した。また、北海道産の木材は広葉樹が多く硬いので、軟らかい針葉樹の多いドイツ製のチップ化マシンでは刃がいたみやすいことなど、この地ならではの課題やノウハウについて説明した。
将来構想として発電所の排ガスからCO2を回収して貯留するBECCS(バイオエネルギー由来のCO2回収・貯留)などの展開も検討しているという。
構内のチッパー施設や原木のストックヤードを見学した。原木は夏と冬に切られるため、春と秋に入荷し、そこから乾燥工程に入る。原木の含水率は50%程度で、これを30~40%にまで乾燥させて燃料にする。
原木の積み方にも独特のノウハウがあり、乾きやすい上の木と、乾きにくい下の木のチップを適正に混合することで、発電に適した含水率にするという。
◆◆◆
◎高効率コジェネ間近に北ガス本社で講演と見学/札幌
北海道ガス本社(札幌市東区)では、橘川武郎国際大学副学長と、北海道ガスの前谷浩樹取締役常務執行役員生産供給本部長が講演した。同社の札幌発電所および供給防災センターも見学した。
札幌発電所は本社の地下にあり、都心部のオフィスビルに設置される、逆潮流が主目的の発電設備としては日本最大級を誇る。世界最高効率(発電効率約50%/7800キロワット×2基)のガスエンジンと発電排熱の有効利用により、低炭素なエネルギー供給を実現し、経済性も向上している。発電した電力は本社ビルでの利用分を除き、「北ガスの電気」として全道に供給され、さらに発電時の排熱は、本社ビルで利用するとともに、北海道熱供給公社を通じて都心部の地域熱供給にも有効利用されている。
◇講演エネルギー業界のCNへの取り組み/国際大学橘川武郎副学長(現学長)
橘川氏は「エネルギー業界のカーボンニュートラルへの取り組み」をテーマに講演し、政府の「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」などのエネルギー政策と、今年開かれた「G7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合」のコミュニケについて解説した。
GXについては、「閣議決定時の参考資料で官民合わせて向こう10年で150兆円の投資をするとし、その見取り図を出しているが、原子力については次世代革新炉の1兆円を示しただけ。原子力推進に舵を切ったと言われるが、副次的なエネルギーという位置付けだ」と話した。
「G7札幌コミュニケに35年温室効果ガス(GHG)排出削減19年比60%削減と入った。経産省や環境省は国際公約と認めたくないからなのか、あまり報道されていない。日本のGHG排出量は19年度までに13年度比14%減っている。発射台が100から86になったところに、さらに60%削減する。13年比でいえば66%削減になる。現行の30年46%削減から5年でさらに20ポイント減らすのは大変なこと」とし、このGX基本方針での原子力の低い位置付けと高い35年目標の二つが「極めて重要」と指摘した。
ロシアのウクライナ侵攻で起きたエネルギー危機の教訓として、改めて化石燃料の重要さが分かったとし、「岸田首相も慌ててカタールに行った。自給率を上げるべきというのが教訓だ」と話した。再生可能エネルギーが重要度を増したが「問題は二つある。一つは地元とのトラブル。デンマークのオーステッドに話を聞いた際、『陸上風力で低周波騒音の懸念から反対が出たが、事業会社を株式会社にして住民も株主にしたら、経済効果も生じて住民も喜んで参加するようになった』と話していた。事業主体に住民を入れるのが解決策だ。電源開発に時間が掛かるのも問題だ。洋上風力を今年からつくっても30年に間に合わない。他のエネルギーでつなぐ必要がある」などと指摘した。
「エネルギー全体で電気は40%、発送電ロスで15%がマイナスされて実質は25%、今はちょっと増えて27%。残りの60%の熱が主戦場。これを電化するというが、50年の推計でも電化率は38%にすぎず、まだ熱の方が大きい」と指摘し、水素、アンモニア、メタネーションなどの利点と課題を解説した。
「今の時代ガス会社が生き残るには、オール電化、デンマークのような再エネをフルに使った熱電併給のセクターカップリング、ガスというあらゆる選択肢を知った上で、お客さんの立場からどれがいいか考えることだ。高齢化した家庭にはオール電化がいいかもしれないが、子供がいたらガスの方が絶対よい。ガスの選択肢を残しながら、相手によって電化を勧める。台所に入っていき、お客さんの熱のニーズに応える。だとしたら電力に参入しないと話にならない。北海道ガスは自分より大きい北海道電力と戦ってきた。電力会社より先にガス会社がLNG火力を始めたのは北海道だけだ。ゼロカーボンシティについては、自治体は宣言しただけで何をやってよいか分からないところがある。都市ガス会社、LP会社、ガソリンスタンド会社が地域を中心にゼロカーボン化していくしかないのではないか」とガス会社の役割について語り、講演を締めくくった。
◇北ガスが目指す総合エネルギーサービス/北海道ガス前谷浩樹氏
北海道ガスの前谷取締役常務執行役員は「北ガスが目指す総合エネルギーサービス」をテーマに講演した。北ガスの概要と北海道のエネルギーの概況を説明した上で、北海道における地域課題と同社が目指す姿を説明した。
「目的はガスを売ることではなく、お客さまがほしいものをどういうもので供給するか。オールガスが目的ではなく、建物地域単位でガス・電気を組み合わせた新たなエネルギーモデルを展開する。徹底的にデマンドサイドに入り込む。北海道のエネルギー消費を見ると、暖房で消費量が多く無駄が多い」などと基本的な姿勢について話し、そうした発想から生まれた経営計画「Challenge2030」について解説した。
家庭用、電力、再エネ、札幌市都心部の分散型エネルギーシステムの取り組みを説明した上で、上士幌町、南富良野町、苫前町などで自治体と連携しながら地域課題の解決に貢献している事例を話した。
ガスのCN化については、「本当に大きな課題だ。一つは証書活用。北海道ならではのCNとして、水素活用、バイオガス活用などがある。石狩港では洋上風力発電の計画が立ち上がっているが、さまざまな方が本州への大規模直流送電線を当てにして進めている。系統に接続しきれない再エネ電力を水素にしてパワー・トゥ・ガスにすることも検討したい」と述べた。
◇道内唯一のLNG輸入基地石狩LNG基地&石狩発電所/石狩
視察最終日となる21日には、北海道ガスの石狩LNG基地と石狩発電所を見学した。
石狩LNG基地は北海道で唯一の大型液化天然ガス輸入基地。12年に稼働開始した。同敷地内にある石狩発電所は7800キロワット級のガスエンジンを12基(出力計9万3600キロワット)設置した発電所。18年に10基で運転開始し、20年12月に2基増設した。
澁谷聡執行役員生産事業部長・石狩LNG基地所長と高橋幸治石狩LNG基地製造グループマネージャーが同LNG基地と発電所の概要や、来年運転開始を予定している風力発電所について、またLNG基地を共同運営している北海道電力との関係などについて説明した。
石狩LNG基地は気化に海水を使っていないが、現在では石狩発電所の発電時の排熱を有効活用して気化しているという。
視察団は発電所建屋内を見学したほか、バスで構内を見学した。敷地内から石狩湾内にグリーンパワーインベストメントが建設中の洋上風力発電を見ることができた。
◇再エネ水素を利活用石狩市厚田地区マイクログリッド
「石狩市厚田地区マイクログリッド」が最後の訪問地となった。石狩市北部は、大規模災害時に陸路の寸断などにより孤立しやすい地域があり、長時間の停電も起きやすいことなどエネルギーの安定供給に対する地方特有の課題を抱えている。この課題を解決するため、「エネルギーの地産地活」を目指した石狩市厚田地区マイクログリッドが、22年3月に完成した。
平時は太陽光による再エネ電力を近隣の五つの公共施設へ供給するほか、災害時(停電時)には蓄電池と、再エネで生成した水素による燃料電池で発電した電力を指定避難所である厚田学園の体育館に供給するなどレジリエンス性を高めている。
視察団はまず石狩市厚田支所で話を聞いた。最初に事業主体の石狩市企画経済部企業連携推進課の佐々木拓哉主査、天野良祐主事があいさつ。ついで、事業を受託している高砂熱学工業研究開発本部のカーボンニュートラル事業本部CN営業推進室の石塚朋弘担当部長が事業概要について説明した。説明の後、現地に移動し、現地で見学しながら説明を聞いた。
同事業は、163・4キロワットの太陽光発電を自営線で市立厚田学園、道の駅、学校給食センター、消防署、ポンプ場で有効活用しながら、余剰電力は蓄電池と水電解装置稼働に使い、できた水素はタンクにためる仕組み。
水素タンクは非常時のみ出力2キロワットの燃料電池を稼働する燃料とする。同地区は電力系統が弱く、余剰電力を逆潮流させることができないため、太陽光発電を有効活用し、非常用にも使えるようにするためにこの仕組みを考案した。ランニングで経済性が出ること、エネルギーマネジメントシステムを組み込むこと、防災機能を組み込むこと、水素活用の仕組みを組み込むことを条件として、この仕組みとなった。
自営線は北海道電力の電柱を借りて敷設した。景観が重要となるため、そのルートも工夫した。水素がタンクにたまりすぎないこと、燃料電池がいざという時に稼働することを確認するため、月1回程度稼働させる。燃料電池はカナダ・バラード社製だ。太陽光発電は裏面でも発電するタイプで、冬場でも雪からの反射で発電できるという。あまり例のない施設で、視察団から活発な質問が出た
◆◆◆
【本紙主催視察ツアー】
スケジュール(7月19~21日)
◇7月19日
新千歳空港に集合
●北海道苫小牧市にバスで移動
・日本CCS調査・苫小牧CCS実証試験センター
・石油資源開発(JAPEX)の勇払油ガス田、北海道事業所メガソーラーを視察
◇7月20日
・苫小牧バイオマス発電所
●苫小牧市から札幌市にバスで移動
・北海道ガス本社
講演会
橘川武郎・国際大学副学長
「エネルギー業界のCNへの取り組み」
前谷浩樹・北海道ガス取締役常務執行役員
「北海道ガスが目指す総合エネルギーサービス」
・北海道ガス供給防災センター、札幌発電所を視察
◇7月21日
●札幌市から石狩市へバスで移動
・北海道ガス石狩LNG基地・石狩発電所
・石狩市厚田地区マイクログリッドを視察
●石狩市からJR札幌駅に移動。解散