GENIX-CN70

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7月12日終値

7月12日 GENIX-CN70は3週連続で上昇し、先週に続き2週連続で指数算出以来の最高値を更新した。日本酸素、岩谷産業、栗本鉄工、前澤工業などが本年高値を更新した。
市況情報

 中東産LPGの日本向け長期契約価格(サウジCP)7月分は、プロパンが6月分と同値の1㌧当たり580㌦、ブタンも6月分と同値の565㌦となった。

 原油市況はこのところ1バレル80㌦台で堅調に推移する一方、中国向けなどLPGの需要は落ち着いているもよう。米国プロパンガス市況も1㌧400㌦をはさんでのもみ合いが続いている。

 なお、中国に次ぐ世界第2位のLPG輸入国インドで総選挙が行われ、このほど与党の勝利が明らかになった。同党はLPG普及政策を強力に推進してきた経緯があり、LPGの国際需給に影響を与えうるとして選挙結果が注目されていた。

 (2024年7月1日配信)

【過去解説記事】

 14日東証 GENIX-CN70は前週末比0.94ポイント高の192.96と2週間ぶりに反発した。指数構成銘柄ではK&Oエナジーグループ、三菱重工業、伊藤忠が上場来高値を更新したほか、岩谷産業、関西電力、東邦ガスなど大手電力・ガス株も根強く物色された。

 K&Oエナジーの株価は今年大きく値上がりし、11日の上場来高値4230円は昨年末終値2041円から2倍を超える上昇になっている。同社は千葉県で天然ガス・ヨウ素を産出しており、ヨウ素が次世代太陽光(ペレブスカイト太陽電池)の材料となることから注目を浴びているようだ。

 経済産業省が5月29日、第1回「次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会」を開催したことも手掛かり材料になっている。同協議会では日本が先行するペレブスカイト太陽電池の普及促進を目指している。日本のヨウ素生産量は世界第2位であり、エネルギー安全保障の観点からも期待が大きい。また、今週は米国でスタートアップがペレブスカイト太陽電池の工場を新設するとの報道も関心を集めたようだ。さらに、同業の伊勢化学工業の株価が昨年末の8590円から、本日の最高値40500円まで実に4.7倍となる大相場を演じていることも刺激になっている。

(2024年6月14日配信)

 米国で天然ガス先物価格(ヘンリーハブ=HH)が上昇している。6月11日の期近終値は百万BTU(英国熱量単位)当たり3.129ドルと、今年1月12日の3.313ドル以来、5カ月ぶりに3ドル大台に乗せた。2~3月には1.5ドル台の安値を付けていた。また1年前のこの時期は2ドル台半ばで推移していた。

 最近の市況動向についてJOGMEC調査部白川裕調査役は、「市況低迷時に掘削井が絞られた影響で、ガス生産量がジワリ減少している。そこに米国南部を中心とした記録的な猛暑による発電用ガス需要増が加わった」と指摘する。また、当面の値動きについては、「ガス発電用の需要は既に限界に達しているため、先物価格がこの先もさらに大きく値上がりする展開は想定しにくい」としている。

(2024年6月13日配信)

 6月7日東証 この週の東証株価は高値圏で伸び悩み、7日の東証株価指数(TOPIX)終値は前週末比0.6%値下がりした。GENIX-CN70も上値が重く2週間ぶりに反落し、前週末比1.9%の下落となった。

 GENIX-CN70構成銘柄の足取りは総じて重いが、その中で異彩を放つ逆行高を演じたのがデンヨーだ。同社は量産型燃料電池式可搬形発電装置を開発するなど水素関連ビジネスを手掛けている。

 同社株価は2020年9月と同年11月に付けた2600円台の高値を一気に払い、2700円台半ばに到達した。約1カ月間で株価は2割を超える上昇となったが、業績は好調で株価指標面に割高感は乏しいと見られる。「チャート上の節目を突破してきたことで、目先妙味が膨らんでいる。また同社は可搬型、非常用発電機を手掛けており、梅雨入りを前に防災関連の切り口にも関心が向いている」(市場関係者)。日本ではゲリラ豪雨が頻発化しているが、同社が強みとする北米ではこの時期ハリケーンの多発が警戒されている。シーズン性を発揮する場面も期待されているようだ。

(2024年6月7日配信)

 中東産LPGの日本向け長期契約価格(サウジCP)6月分は、プロパンが1トン当たり580ドルと前月分と同値だった。ブタンは前月比20ドル値下がり(下落率3・42%)して565ドルとなった。ブタンは3カ月連続で下落した。

 先週の米国プロパンスポット市況(MB)はトン当たり400ドル前後で推移。原油先物市況(WTI)は足元の堅調な在庫状況や長期金利の高止まりなどを受けて、1バレル70ドル台後半では上値が重くなっている。

(2024年6月3日配信)

 5月31日東証 GENIX-CN70は3週間ぶりに最高値を更新した。次世代太陽光発電(ペレブスカイト)関連として注目されるK&Oエネジーが一時未踏の4000円台に乗せたほか、栗本鉄工は18年ぶりの5000円台、川崎重工は9年ぶりの6000円台、ENEOSは6年ぶりの800円台となるなど大台替わりが相次いだ。北海道電力、九州電力などの電力株や、商社、海運株なども根強く物色されている。

 三浦工業が急伸し、およそ3カ月ぶりに本年高値を更新した。同社は5月30日、ダイキンと業務資本提携すると発表。工場向けに空調や蒸気ボイラ、水処理システムなど熱・空気・水に関するトータルソリューションをワンストップで提案する。それぞれの強みを生かして工場のカーボンニュートラル化のニーズに応える。三浦工業は国内の工場に、ダイキンは海外に強固なネットワークを有しており、市場はメリットを発揮しやすい組み合わせと受け止めているようだ。また、ダイキンは三浦工業の発行済み株式4.67%を三浦工業の自社株から購入する。三浦工業はその売却代金でダイキン子会社の株式49%を取得する。株式価値の希薄化や当面の株式需給悪化を招かない資本提携スキームも好感されたようだ。関連記事(https://www.gas-enenews.co.jp/gijutsu-shinseihin-hoan/40495/

(2024年5月31日)

 米国の天然ガス市況が上昇している。ヘンリーハブ(HH)先物期近価格は5月23日、百万BTU(英国熱量単位)当たり一時2.9ドル台に上昇した。3ドルは今年1月以来となる高値水準。「米国ガス市況は2~3月に1ドル台半ばまで大きく下げた経緯があり、その際に生産リグの稼働台数が削減された。その影響がここにきて出始めている」(JOGMEC調査部白川裕調査役)という。また、米国南部を中心にこの夏の気温が高めになるとの予報や、米フリーポートLNG輸出プロジェクトが本格生産に復帰したことなども材料視されているという。

(2024年5月24日配信)

 5月17日 GENIX-CN70は前週末比2.35ポイント安の192.12と4週ぶりに下落した。総じて利益確定売りに押される展開となったが、その中で13日に決算を発表した岩谷産業、14日に決算・大規模な自社株買いを発表したENEOSの株価が急伸した。どちらも一時本年高値を更新するなど人気付いた。

 岩谷産業の決算について市場関係者は、「前期実績も今期予想も2桁増益の好決算。ただ今期の配当金予想額が据え置かれたため、株価は急伸後伸び悩んだが、持分法対象のコスモエネルギーの寄与分も見込め、今後増配期待から見直される可能性がある」とする。

 ENEOSの自社株買いは上限が発行済み株式総数の2割強におよぶ大規模なもので、市場にサプライズを与えた。「経営陣の資本効率・株主還元への意識の高さを感じる内容。大型投資がなく、JX金属がIPOに向けて資産売却を進める中、財務体質が良好になっていることが背景にある」(大手証券アナリスト)と見ている。

(2024年5月17日)

 GENIX-CN70は10日、前週末比2.33ポイント高い194.47ポイントと3週連続で値上がりし、前週に続いて過去最高値を更新した。

 指数構成銘柄では大阪ガス、北海道ガスなどが過去20年来の高値を更新。大阪ガスは8日発表の自社株買いが好感されている。「3月発表の中期計画で株主資本配当率に基づく増配方針が打ち出されたばかりの株主還元策で、サプライズとして受け止められた」(アナリスト)。北海道ガスは4月30日発表の株式分割(1対5)や今期実質増配を手掛かりに人気化している。PBRは0.8倍台に上昇し、課題の1倍割れ解消が現実味を帯びてきた。

 岩谷産業も急伸し、4月に付けた最高値9311円を射程に捉えてきた。同社の3月期決算は5月13日午後2時半に発表予定だが、同社がさきごろ筆頭株主となったコスモエネルギーホールディングスが昨日決算発表を行い、堅調な業績と自社株買い、年間300円配当を維持する方針が明らかになった。コスモエネの株価は本日、一気に高値を更新、岩谷産業の株価支援材料になっている。

(2024年5月10日配信)

  中東産LPG日本向け長期契約価格(サウジCP)5月分は、プロパンが1㌧当たり580ドルと前月比35ドル下落した(下落率5・69%)。値下がりは4月分に続いて2カ月連続。

  ブタンは前月比35ドル値下がりして(下落率5・65%)1トン当たり585ドルとなった。ブタンも2カ月連続で下落した。

(2024年4月26日配信)

 中国税関が18日に発表した3月のLNG輸入量は前年同月比24・1%増の665万㌧となり、3月としては2021年の564万㌧を上回り3年ぶりに過去最高を更新した。1~3月の累計輸入量は同20・4%増の1985万㌧と、年間輸入量が過去最高だった21年同期を0・8%上回った。

 今年第1四半期の国内総生産は5・5%増と昨年第4四半期の5・2%増を上回った。輸出産業を中心に二酸化炭素排出削減のためのガスシフトも進んでいる。同期間のLNGスポット市況が前年同期を4割下回るなど割高感が薄れたことも需要喚起につながったようだ。今後の見通しについてエネルギー・金属鉱物資源機構調査部竹原美佳部長は、「国際市況はこのところ上昇に転じており、LNGスポット調達は目先一服しそうだが、地方政府のガス火力建設推進や船舶燃料のグリーン転換などもありガス需要そのものは高まる方向」としている。

(2024年4月18日配信)

 東証4月12日 東京ガスの株価が一時前日比54円高の3899円と前日に続いて上場来高値を更新した。同社株は今週に入って騰勢を強め、年初からの株価上昇率は20%に達した。3月中旬、大阪ガスの時価総額が一時、東京ガスを逆転したが、東京ガスが再び首位に立ちリードを広げている。4月19日に全国知事会が東京ガス横浜ステーションを視察し、e‐メタン製造実証の説明を受ける予定となっている。カーボンニュートラルに向けた同社の技術力に注目が集まりそうだ。株価上昇により、株価純資産倍率(PBR)は0.94倍へと上昇。1倍乗せが視野に入ってきた。

 都市ガス株では、北海道ガスの株価も上昇基調にあり、この日も前日マークした上場来高値2960円まで一時買い進まれる場面があった。年初からの上昇率は34%に達するが、同社株のPBRはいまだ0.7倍台にとどまり、依然割安感が漂う。北海道では半導体工場の新設で電力消費の大幅な伸びが予想され、北海道電力の株価もこのところ大幅に上昇している。

(2024年4月12日配信)

 4月3日 米原油先物(WTI)は前日比28セント高の85.43ドルと3日続伸、本年の高値を更新した。ウクライナによるロシア主要製油所への無人機攻撃や、イラン大統領によるイスラエルへの報復表明など地政学的リスクの高まりが背景にある。また週間統計で米国原油在庫が前年同期比18.5%減と減少が目立ったことも材料視されている。

 注目されたOPECプラス合同閣僚監視委員会は、生産目標維持を決定。また、米連邦準備理事会パウエル議長は講演で利下げを急がない姿勢を示したとされる。三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部・芥田知至主任研究員は、「中東、ウクライナ情勢は今後一段と動向が注視される。また、米金融政策、中国当局による経済運営、産油国の生産方針なども引き続き注目される。ただ、米中の景気は石油需要を上振れさせるほどには強くないとみられ、相場の上昇傾向を決定づける材料は出にくいと思われる。相場は再び一進一退の推移となりやすい」と指摘。もっとも、今年後半にかけて米利下げを受けてドル安が進む展開となれば、ドル建ての原油価格には割安感が生じ上昇圧力がかかりやすくなるとし、今年度は1バレル95ドル程度の上値が見込めるとしている。

(2024年4月4日配信)

 GENIX-CN70は年度内最終売買日となった3月29日、前週末比0.55ポイント上昇し189.41と、2週続けて最高値を更新した。3月末割り当てで1対10の大幅な株式分割を実施した三菱重工業は権利落ち後も堅調で、修正株価は連日の最高値となった。GENIX-CN70構成銘柄では他に理研計器が1対2、川崎汽船が1対3の株式分割を3月末割り当てで実施した。

 岩谷産業の株価が3連騰で、連日の上場来高値更新。3月28日にコスモエネHD株式を追加取得し、持ち分法適用会社にしたと発表したことが材料視されている。コスモエネの今期純利益予想は780億円、岩谷産業は335億円。持ち分比率2割相当の利益が来期以降、上乗せされるインパクトの大きさが期待されているようだ。また、会社側は本件株式取得に要する資金を借り入れで賄うとしており、「増資による一株当たり利益の希薄化が回避される見通しになったことも好感されている」(国内証券調査部)という。

(2024年3月29日配信)

 米国3月26日、米パイプラインガス(ヘンリーハブ=HH)先物価格が終値で5日続落し、百万BTU(英国熱量単位)当たり1.575ドルに下落。2月20日に付けた本年安値1.576ドルを1カ月ぶりに割り込んだ。ザラ場安値は1.4㌦台まであった。

 米エネルギー情報局(EIA)が3月21日に発表した週間データによると、米国の地下ガス在庫量は3月15日時点で前年比21%増、過去5年間の平均値に対しては41%上回っている。エネルギー・金属鉱物資源機構・白川裕調査役は、「気温が上がり需要が低下して、在庫がさらに積み上がったことと、生産がすぐには低下しないことが主要因」と指摘する。こうした在庫の荷余り感が先物市況の上値を重くしているようだ。

 HH先物価格の過去15年間の値動きを振り返ると、期近先物価格が1ドル台まで下落した年は2012年、16年、20年の3回あり、当該年の安値形成月はそれぞれ、4月(1.9ドル)、3月(1.6ドル)、6月(1.4ドル)となっている。春に安値を付ける習性と、この間の価格水準が切り下がる傾向が見て取れる。

(2024年3月27日配信)

 3月22日、ガスエネ株価指数カーボンニュートラル70(GENIX‐CN70)は2週間ぶりに過去最高値を更新した。GENIX‐CN70構成銘柄はほぼ全面高となり、K&Oエナジー、三菱重工、岩谷産業、大阪ガスなどが最高値を更新した。

 なお、三菱重工(1株→10株)、理研計器(1株→2株)、川崎汽船(1株→3株)は3月28日付で株式分割の権利を落とす。株式分割のメリットとしては、単位投資額の引き下げによる投資家層のすそ野拡大、流動性の向上などが指摘される。昨年以降で、株式分割を実施したリンナイ、NTT、三菱商事、京セラは、権利落ち後も堅調な値動きを保っている。

(2024年3月22日配信)

 3月15日 ENEOSHD(GENIX―CN70構成銘柄)の株価が朝方から買い進まれ、5年3カ月ぶりに700円台に乗せてきた。他にもINPEXや石油資源開発、コスモエネルギーHDなどの石油関連株、資源高が利益に結び付く商社株も軒並み値上がりしている。コスモエネルギーは国内大手証券が投資格付けを引き上げたことも好感され、株価は上場来高値を更新した。

 株式市場は、米原油先物(WTI)が14日、期近4月渡し終値で1バレル81.26ドルと続伸し、昨年11月6日の80.82ドル以来の80ドル台乗せとなったことを材料視しているようだ。国際エネルギー機関(IEA)が同日公表した市場レポートでは、今年の石油需給は供給不足になるとの予測が示されている。産油国の自主減産延長による供給減や、紅海におけるタンカー襲撃で海上輸送距離が延びておりバンカー燃料の需要増加を織り込んだという。もっとも原油市況は過去1年余りにわたって、おおむね70ドルから80ドルのレンジで推移しており、80ドル台では上値の重さも意識されそうだ。

(2024年3月15日配信)

 3月8日 大阪ガス(GENIX CN‐70構成銘柄)の株価が前日比153円高の3350円で寄り付き、直後に230円高の3427円まで上昇。1月11日に付けた上場来高値3242円を一気に更新した。同社は7日、3カ年中期経営計画を策定し、配当を原則減配せず維持または増配する累進配当制度を導入すると発表し、好感された。

 2024年3月期の配当金は前期比12円50銭増配して72円50銭(従来予想65円)に、25年3月期は95円を目指す方針も示した。株主資本配当率を3%とする方針を掲げ、機動的な自己株取得も検討するとした。この他、自己資本利益率(ROE)の目標は26年度に8%程度、投下資本利益率(ROIC)は5%程度を目指す。「株価を意識した経営姿勢に変化していると株式市場が受け止めており、都市ガス株の中でも相対的な値上がりが目立ってきている」(中堅証券)という。この日前場終値での時価総額は、大阪ガスが1.43兆円、東京ガスは1.41兆円となり、大阪ガスが東京ガスを逆転した。

(2024年3月8日配信)

 2月22日 東証では朝方から買いが先行し、日経平均株価は大幅に反発した。終値は初の3万9000円台で、1989年12月以来の史上最高値更新となった。注目された米エヌビディアの決算が市場関係者の事前予想を上回り、3連休控えにもかかわらず、マーケットのセンチメントは強気に傾いた。半導体関連株をリード役に、主力株を中心に幅広く買い進まれた。

 GENIX‐CN70構成銘柄も軒並み上伸した。三菱重工業が上場来高値を更新し、日本酸素HD、川崎汽船は最高値をうかがう動き。原油市況の上昇を背景に石油資源開発など石油関連株も値上がりした。

(2024年2月22日配信)

 米国パイプラインガス市場価格(ヘンリーハブ先物)が2月15日、8日連続安となり、百万BTU(英国熱量単位)当たり1.5㌦台まで下落、2020年6月以来の安値水準となった。在庫の積み上がりが背景にあるという。

 エネルギー・金属鉱物資源機構の白川裕調査役は「原油市況が1バレル80㌦弱と堅調なことから、パーミアン盆地を中心にシェールオイルの生産が盛んで、随伴ガスの生産量も増えている。気温が高めに推移していることもあり、地下在庫は過去5年間の最高水準に到達している」と指摘。

 先物市場の中心商いが春の需要閑散期に移りつつあることから、市況は当面弱含みで推移しそうだ。
(2024年2月16日配信)

2月12日 米国で天然ガス市場価格(ヘンリーハブ先物価格=HH)が5日続落し、期近終値は百万BTU(英国熱量単位)当たり1.768ドルに下落した。1.7ドル台は2020年7月以来の安値となる。市中在庫が高水準にあり、市場のセンチメントを圧迫している。

HHは昨年11月以降、3ドルを割り込むなど市況の低迷が続いているが、生産量が落ち込む兆しはいまだ見えないという。エネルギー・金属鉱物資源機構の白川裕調査役は「原油市況が1バレル80ドル弱と堅調に推移していることから、オイルリッチなパーミアン盆地を中心に油狙いの生産が盛んになっている。このため副産物であるガスの生産も増加している」と指摘する。

(2024年2月13日配信)

米国市場でガス市場価格(ヘンリーハブ先物価格)が続落している。7日に心理的な下値めどと見られていた百万BTU(英国熱量単位)当たり2ドルを割り込むと、8日終値は一段安となり1.917ドルまで下落した。およそ3年5カ月ぶりの安値水準となる。

市況下落の背景には、マーケットの荷余り感があるようだ。「このところの気温上昇で暖房用需要が低下しており、地下在庫量は過去5年間の上限レベルに到達している。当面は上値の重い展開が続きそうだ」(エネルギー・金属鉱物資源機構・白川裕調査役)。

ヘンリーハブ価格の下落に伴い、米国産LNGの輸出価格も低下しており、現状は世界の主要輸出国の中でも最も安価な水準となっている。

(2024年2月9日配信)

2月6日 東証後場 三菱重工業の株価が昨日の1万円初登頂に続いて一段高となった。この日午後、同社は3月末割り当てで株式1株を10株に分割すると発表。合わせて発表された今2024年3月期第3四半期連結決算は、売上高が前年同期比11%増、純利益は同倍増となるなど好調ぶりが明らかになった。通期の受注見通しを6兆円とし、従来予想に4000億円上積みした。これら大幅な株式分割と好調な業績動向が素直に好感され、買いが買いを呼ぶ好循環となっている。

同社株は1年前の2月には5000円前後で推移しており、そこから株価水準はちょうど2倍になっている。

(2024年2月6日配信)

1月31日 サウジアラムコがこのほど日本のLPガス輸入事業者に通知したプロパン2月分出荷価格(サウジ2月CP)は、前月比10ドル値上がりして630ドルとなった。値上がりは昨年8月分(470ドル)以降、12月分の変わらずを挟んで8カ月連続。

LPガス市況に影響する原油市況が、12月初旬を底に水準を切り上げているほか、世界最大のLPガス輸出国である米国において、プロパン在庫の取り崩しが進み、市況が上昇したことが背景にある。米国ではLPガスの一大輸出地域であるメキシコ湾で濃霧が観測されており、輸出作業への影響も警戒されたという。サウジCP2月ブタンも、前月比10ドル値上がりして640ドルとなった。

(2024年2月1日配信)

1月26日GENIX-CN70は前週比0.64ポイント値上がりして169.36ポイントとなった。7週間連続の上昇で、3週続けて統計開始来の最高値を更新した。一方、東証株式市場全体としては、このところの上げピッチの速さから利食いが広がり、東証株価指数(TOPIX)は7週ぶりに値下がりした。

GENIX-CN70の構成銘柄で値上がりが目立ったのは、25日に2023年12月期決算を発表したHIOKI。24年12月期も増収増益を見込み、配当金を年200円に連続増配する方針が好感されたようだ。

このほか、三菱重工業、三菱化工機が高値圏で頑強な値動き。SMBC日興証券が目標株価を引き上げたウエストホールディングスも下値を切り上げている。

(2024年1月26日配信)

 欧州パイプラインガス先物価格が17日、百万BTU(英国熱量単位)当たり8ドル台まで下落し、昨年8月以来の安値水準となった。北東アジアLNGスポット価格も続落しており、17日は昨年6月以来の9ドル台を付けている。先物の決済期日が2月から3月に移り冬場の需要期を過ぎることで、足取りが弱くなっている。昨年の安値は欧州ガス先物価格が7ドル台、スポットLNGは8ドル台だった。

 当面の市況動向についてエネルギー・金属鉱物資源機構の白川裕調査役は、「カタールから欧州にLNGが年間1500万トン供給されており、スエズ運河の通航リスクが警戒されているものの、それでも欧州の在庫水準が依然として高いため、中東からの輸送に支障が生じても当面の供給は何とかなると見られている。昨年10月から輸出を再開したエジプトLNGもまだ量は少ないとはいえ心理的な支えになっている。不需要期の相場は数年前なら3~4ドルもありえたが、安価になったスポットLNGを中国が仕込む動きも見られるため、今回はそこまで下がらないだろう」とする。また、「足元のスポット需要は弱いが、供給力に余裕があるほどの状況でもない。幸いにして供給設備のトラブルは昨年から起きていないが、いつ起きても不思議はない。先行きを楽観視するわけにはいかない」と指摘する。

(2024年1月18日配信)

東京株式市場は年末・年始と値上がり基調を強めており、GENIX-CN70も12月15日から1月12日終値まで5週連続で上昇した。1月12日の終値は167.67ポイントとなり、昨年9月15日にマークした指数算出以来の最高値165.83ポイントを4カ月ぶりに更新した。

GENIX-CN70構成銘柄では、商社株の値上がりが目立ち、伊藤忠商事、住友商事が最高値を更新。海運株も高値圏でしっかり。個別銘柄では、三菱重工業、愛知時計電機が最高値を付けた。本日午前、2024年8月期第1四半期決算を発表し、大幅な増収増益が確認されたウエストホールディングスが急伸した。

(2024年1月12日配信)

中東産LPGの日本向け長期契約価格(サウジCP)1月分は、プロパンが前月比10㌦高い1トン620㌦。ブタンも同じく10㌦値上がりして630㌦となった。小幅高ながら、極東マーケットは足元で強弱感が交錯しており、先行きの方向感は乏しい状況。米国のプロパンスポット市況(モントベルビュー)は12月分が1トン357㌦と、前月から約25㌦値上がりした。依然として近年の安値圏での値動きではあるが、市中の在庫水準は過去5年平均並みまで減少しており、底堅さも見られる。

(2024年1月10日配信)

1月5日 2024年の年明けの東京株式市場は、能登半島地震を受けて4日の大発会は売り物先行でスタートしたが、新NISA開始に伴う投資資金流入などによる先高期待から押し目買いが優勢となり、結局、東証株価指数(TOPIX)は4日、5日と続伸した。

GENIX-CN70も12月最終週に続いて上昇し、5日終値は164ポイントと、5週ぶりに160ポイント台を回復。昨年9月15日にマークした最高値165.83に急接近した。指数構成銘柄では、大阪ガスが大幅高となり、5日に一時3111円まで上昇。12月13日に付けた最高値3077円を上回った。4日以降終値ベースでも初めてとなる3000円台を維持している。このほかでは、海運株が人気を集めており、日本郵船、商船三井が最高値を更新した。

(2024年1月5日配信)

12月29日 東京証券取引所最終売買日(大納会)は、今年1年の相場を象徴するような堅調な展開だった。その中でGENIX-CN70は前週に続いて上昇し、3週連続高で今年を締めくくった。GENIX-CN70の年間騰落率はプラス25%となり、東証株価指数の上昇率と互角の好成績だった。

GENIX-CN70構成銘柄の中で値上がりが目立ったのは、川崎汽船、日本酸素、栗本鉄工、愛知時計電機、関電工など。一方、不調だったのは、イーレックス、レノバ、テスHD、ウエストHDなどだった。なお12月末割り当てで、京セラが1株を4株、三菱商事は1株を3株に株式分割した。GENIX-CN70もこれに合わせて、株式分割の影響を考慮した修正株価指数を算出している。

(2023年12月29日配信)

12月22日 GENIX-CN70は前週に続いて上伸した。全般は高安まちまちだが、値がさ株の海運3社(日本郵船、商船三井、川崎汽船)がそろって本年高値を更新し、CN70を押し上げた。また、工場新設で恩恵を受ける理研計器が12月20日上場来高値を更新した。

海運株が動意付いたのは先週末。紅海で武装組織による商業船への攻撃が相次いだことで、海運会社がスエズ運河の航行を見合わせ、迂回経路による輸送距離の延長などで海運市況が上昇するとの思惑が働いた格好。海運株はコロナ禍前後の市況高騰局面で株価が5倍以上に跳ね上がっており、その記憶がまだ新しいだけに思惑が先行しやすいようだ。

(2023年12月22日配信)

12月15日 GENIX-CN70は3週ぶりに反発した。指数構成銘柄では、理研計器の株価が13日に上場来高値を更新。大阪ガスも同日最高値を更新し、未踏の3000円台に一時到達した。

岩谷産業の株価はコスモエネルギーホールディングスの筆頭株主になると発表した12月1日以降、大きく値下がりしたが、15日終値は7日ぶりにプラスに転じた。

14日に一時5996円まで下げ、4月初旬以来8カ月ぶりとなる6000円大台割れを見たことで、値ごろ妙味が台頭したようだ。9月高値からこの安値までの下落率は26%に達し、一株当たり純資産5249円も意識される水準となっていた。チャート面から当面の戻りめどを探ると、25日移動平均線の6866円、9月高値から直近安値までの下げ幅の半値戻し6770円など、6800円あたりが意識されそうだ。

(2023年12月15日配信)

12月13日 GENIX-CN70構成銘柄の大阪ガスが4日続伸し、一時3077円の高値を付けた。3000円台に乗せたのは上場来初。12日大引け後に、日本経済新聞が「伊藤忠と大阪ガス、世界最大級の水素生産に最大4割出資」と報じ、これを材料視する買い注文が朝方から集まった。

株価は11月初旬、自社株買いの発表を契機に大きく上放たれ、過去16年来の上値抵抗線となっていた2600円前後の節を突き抜けてきた直後とあって、しこり感のないチャート妙味も好感されているようだ。

12日に発表された欧州の水素企業Everfuelのニュースリリース

(2023年12月13日配信)

12月8日 GENIX-CN70は前週に続いて下落した。急速な円高進行や世界的な景気減速懸念を受けて、東京株式市場はこの日、ほぼ全面安となった。GENIX-CN70構成銘柄にも利益確定の売りが先行した。中でも、原油先物市況の下落を受けて、石油、造船、商社、海運株などが大きく値を下げた。

12月1日引け後にコスモエネルギーホールディングス株式大量取得を発表した岩谷産業は、週明け4日から株価が大きく下げ、発表前の終値7141円から8日安値6388円まで5日間で10%を超える下げとなった。9月の本年高値8040円からの下落率は20%に達している。アナリストからは「コスモエネ株取得に1千億円を超える大金を投じることについて、どのようなリターンを見込んでいるのか、できる限り定量的な説明が欲しい。株価の下げは合理的な反応。投資家は追加情報を待っている」との声が聞かれる。コスモエネ株が取得価格を割り込んでいることも嫌気されているようだ。

(2023年12月8日配信)

米原油先物価格(WTI)は12月6日、前日比2.94ドル安の69.38ドルと5日連続で値下がりした。節目と見られた1バレル70ドル台を5カ月ぶりに割り込んだ。9月に付けた本年高値93.68ドルからの下落率は26%に拡大するなど下値を模索する動きとなっている。

注目された11月30日のOPECプラス会合は、各国から自主減産(来年1~3月期に日量約220万バレル)が発表されたものの、想定の範囲内と受け止められたようで、相場の下落基調を反転させるには至らなかった。

相場が弱含んでいるのは、世界的な景況悪化に伴う需要減少への警戒があると見られる。「不動産不況が続く中国経済の停滞や、ここまでの利上げで減速が見込まれる米国景気などを考慮すると石油需要は伸び悩み、自主減産してもなお需給は引き締まらないのではないか」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部芥田知至シニアアナリスト)との指摘がある。当面は今週末発表される米雇用統計をはじめ、主要な経済指標を横目にみながら神経質な値動きが続きそうだ。

(2023年12月7日配信)

12月1日 岩谷産業(GENIX‐CN70構成銘柄)はこの日、コスモエネルギーホールディングスの株式を追加取得すると発表した。旧村上ファンド系と見られる既存株主から計約1740万株を1053億円で取得する。取得済みの持ち株と合わせた保有比率は19.93%となり、同社の筆頭株主になる。

1株当たりの取得価格は約6051円で、この日の東証終値5616円を約8%上回るが、価格の算定根拠については明らかにしていない。今後については、「より一層連携を深め、新たなシナジーを創出する」としているが、具体的な方向性はまだ示されていない。また、今3月期連結業績への影響については「精査中」としている。

サウジCP12月分は、前月と同価格の1バレル610ドル、ブタンも変わらずの620ドルとなった。

(2023年12月1日配信)

11月24日 東京証券取引所で三菱重工業(GENIX‐CN70構成銘柄)の株価が前日比529円高と大幅続伸し、およそ2カ月ぶりに8800円台まで水準を切り上げた。

同社は11月22日に防衛事業説明会を開催し、来年度からの3カ年は防衛力整備計画の大幅な拡充を受けて同社の事業規模は2倍以上になると発表した。過去長期にわたり同事業規模は5,000億円弱で推移していたが、来年度からの3カ年は1兆円規模になるとした。祝日をはさんでこの日は朝方から買いが先行、業績拡大への期待感を織り込む動きを見せた。株価が1万円に近づいていることから、株式分割を催促する値動きにも映る。

ガスエネルギー新聞が注目する同社のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みも続いている。弊紙11月20日付では三菱重工エンジン&ターボチャージャの「水素混焼50%で安定燃焼、5700キロワット級ガスエンジン」を技術面トップで紹介している。また、同日付紙面には「水素特集」を掲載しており、三菱重工の高砂水素パークなどを詳しく紹介している。

(2023年11月24日配信)

11月14日の東京証券取引所で大阪ガスが4日続伸し、ザラ場の高値は2920.5円まで買い進まれた。11月7日にマークした上場来高値2914.5円を5営業日ぶりに更新した。10月27日発表の中間決算が好感されているほか、同日発表の自社株買いも歓迎されているようだ。マーケットでは、大阪ガスの株価格付けを従来から「買い」としていたみずほ証券が、目標株価を2600円から3300円に引き上げたとの情報もこの日伝わった。

大阪ガスの株価をローソク足(日足)で見ると、11月9日から10日にかけて、さらに10日から13日、13日から14日にかけても連続して窓「空」ができた。4本の陽線と「三空」で形成される高値圏でのこの形は「三空踏み上げ」と呼ばれ、チャートを投資判断のよりどころとする投資家は、空売りを仕掛ける急所とみる。同社株の信用買い残は、売り残が買い残を超過した状態にある。確かに目先は急伸した後だけに強弱感が対立しやすい場面と言えるが、この日の株価は株価純資産倍率が0.7倍台と依然として割安な状態にあることから、むしろ売り方の手仕舞い(買い戻し)による一段の上昇を読む向きもある。

関連記事 大阪ガスが上昇率首位、愛知時計は最高値を更新/GENIX―CN70 - ガスエネルギー新聞 (gas-enenews.co.jp)

(2023年11月14日配信)

 11月2日のGENIX‐CN70は3週ぶりに反発した。自社株買いを発表した大阪ガスが急伸し、最高値を更新したほか、業績好調の日本酸素、愛知時計も高値を更新した。

 中東産LPGの日本向け長期契約価格(サウジCP)の11月分は、プロパンが1トン当たり前月比10㌦値上がりして610㌦(前月比1.67%高)となった。ブタンは同5㌦値上がりして620㌦(同0.81%高)。プロパン、ブタンともに4カ月連続で値上がりした。

 LPG市況に影響を与える原油相場の値動きはこのところ重くなっているが、LPG市況はこれから需要期を迎える季節性もあって、先高観が根強いようだ。日本向け米国産LPGの航路に当たる中南米パナマ運河が、渇水の影響で渋滞解消に時間がかかるとの見通しも強気の見方を支えているようだ。

 CPのこの1年間の価格推移を振り返ると、プロパンは2月に790㌦のピークを迎え、その後は大きく値下がりして、7月に400㌦のボトムを付けている。ブタンも同様に2月の790㌦でピークを打ち、7月には375㌦の安値を付けている。

(2023年11月2日配信)

10月27日 GENIX-CN70は前週末終値から0.2ポイント下落して155.81と2週連続で下落した。東証株価も0.06ポイント下がって142.76となった。

10月以降、株式市場は調整色を強めており、9月最終週との比較ではGENIX-CN70、東証株価ともに約3%下落している。

GENIX-CN70の構成銘柄のうち9月末比で上昇したのは全体の2割16銘柄にとどまる。その中で愛知時計が本年高値を更新したほか、日本酸素、栗本鉄工、川崎汽船などが高値圏で頑強な値動きを見せている。

(2023年10月27日配信)

10月19日の米原油先物(WTI)価格は3日続伸。中東地域の紛争拡大への懸念が市況を押し上げた。

国際ガス市況も値上がりしており、欧州パイプラインガス先物価格(TTF)は13日に百万BTU(英国熱量単位)当たり16ドル台、スポットLNG価格は18日に19ドル台へと上昇している。

イスラエル沖の海洋ガス田(タマル)が操業を停止したと報じられており、このガスを原料とするエジプト産LNGの出荷に影響が及ぶ恐れが指摘されている。

(2023年10月20日配信)

 10月9日の米原油先物(WTI)市況は2日続伸し、1バレル前日比3.59㌦高の86.38㌦に上昇した。6日の米雇用統計は市場の予想を上回る数値で、長期金利上昇を促したが、原油市場は底固い動きを見せた。そこに、イスラエル・パレスチナ間で大規模な武力衝突が発生。中東の地政学的リスクが高まったことで、買い気が優勢となったようだ。また、本年高値を付けた9月27日以降の下げが急だったこともあり、買い戻しも入りやすかったと見られる。

 一方、連休明け10月10日の東京株式市場は、朝方から買い戻しの動きが広がりほぼ全面高でスタート。GENIX‐CN70構成銘柄もこのところ下げがきつかった石油株などが買い気配で始まるなど総じてしっかりした動き。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部の芥田知至主任研究員は当面の原油相場について、「今回の武力衝突にイランの関与があるのかどうかなど中東情勢には不透明な部分があり、不安定要素が増えた格好だ。他方、このところの米長期金利上昇やドル高が原油相場を下押しするとの見方や、米欧の金融引き締め効果で石油需要が鈍化するとの懸念も根強い。さらに中国の不動産不況、全米自動車労組(UAW)のストライキ、米予算審議の難航なども需要を鈍化させる要因として意識されている。当面は地政学的リスクや需給などの強弱材料が交錯する中で、不安定な推移が見込まれる」としている。(了)

(2023年10月9日配信)

米原油先物が10月4、5日と続落し、1バレル82㌦台まで下落、8月30日以来の安値水準となった。4日は下落率が5・61%に達する大幅な下げで、下落率が5%を超えるのは5月2日以来5カ月ぶり。9月27日に付けた本年高値93・68㌦から5日までの下落率は12%強に広がった。市場では、米ガソリン在庫の急増や強含んでいる長期金利の動向を警戒。今晩の米雇用統計の発表を注視している。

一方、米天然ガス先物(HH)価格は3日続伸し、今年3月以来となる百万BTU(英国熱量単位)当たり3ドル台に乗せてきた。

(2023年10月6日配信)

米原油先物が10月4日、前日比5.01㌦安の1バレル84.22㌦と急反落し、8月31日以来の安値水準に後退した。1日の下落率の大きさは5.61%に達した。5%を超える大幅な下げは5月2日の5.29%以来、5カ月ぶり。市場では、同日発表された米石油在庫統計でガソリン在庫の急増が明らかになり、これが利益確定売りを誘ったとの見方が出ている。

JOGMECの首席エコノミスト・野神隆之氏は、「統計で明らかになった米ガソリン需要の低迷は、この時期としては2000年以来の低水準。他にもロシアの軽油輸出禁止の一部解除検討の報道、サプライズのないOPECプラス産油国共同閣僚監視委員会の内容などの弱気材料がそろって現れた。このため、市場は狼狽売りの様相を呈しているが、今年第4四半期に供給不足に陥るとの認識に変化はなく、市場のセンチメントが根本的に変化したとは言い切れない。原油市況は売られ過ぎ気味の領域に入りつつあり、値頃感から買い戻しが発生しやすい状況ではあるが、まずは明日6日発表予定の米国雇用統計が注目される」としている。

10月5日の東証は朝方、昨日までの大幅安に対する自律反発の動きとなり、TOPIXが6日ぶりに反発するなど全般に買い物優勢の始まりとなったが、原油の急落を受けて、GENIX‐CN70構成銘柄のINPEXや石油資源開発など石油関連株は売り気配のスタートとなった。

(2023年10月5日配信)

中東産LPGの日本向け長期契約価格(サウジCP)の10月分は、プロパンがトン当たり前月比55㌦値上がりして600㌦(前月比9.09%高)、ブタンは同50㌦値上がりして 615㌦(同9.82%高)となった。プロパン、ブタンともに3カ月連続で値上がりした。背景には原油市況の上昇が指摘されている。

(2023年9月29日配信)

東証9月28日前場の寄り付きは、GENIX‐CN70構成銘柄のINPEX、石油資源開発、日揮など石油株が大幅高でスタートした。朝方は全般に利益確定売りが先行する中で、石油関連株の値動きの強さが目立った。石油資源開発は2008年以来、13年振りとなる6000円台に到達した。

 前夜27日の米原油先物(WTI)価格は前日比3.29㌦値上がりして1バレル93.68㌦となり、7営業振りに今年の高値を更新した。また、当面の戻りのめどと見られていた昨年10、11月に付けた92㌦台の高値を一気に上抜いてきたことで、市場関係者の間では先高ムードが一層強まっている。

(2023年9月28日配信)

9月22日の東証株価は前夜の米国株式下落を受けて、朝方から売り先行で始まった。GENIX-CN70構成銘柄も商社、海運株など総じて下落した。半面、INPEX、石油資源開発、ENEOSなど石油株の一角は底固い動き。GENIX-CN70は前週末比2.08ポイント下落して164.04ポイントと5週ぶりに下落した。

21日の米原油先物市場は、米金融政策の引き締め長期化懸念が台頭し、利益確定売りに押された。期近終値は前日比0.65㌦安い89.63㌦と、3日続落し、6営業日ぶりに1バレル90㌦台を割り込んだ。

9月25日付紙面の関連記事「原油100ドルが視界に サウジ減産の影響を注視」

(2023年9月22日配信)

9月14日の米商品先物市場では、原油先物(WTI)価格が2日ぶりに反発し、終値は前日比1.64㌦値上がりして1バレル90.16㌦と、当面の節目と見られていた90㌦大台を突破した。90㌦に乗せるのは2022年11月7日の91.79㌦以来、10カ月ぶり。市場関係者の間では、原油需給の引き締まり感から先高を予想する声が強まっている。

原油市況の上昇を受けて、15日の東証ではGENIX-CN70構成銘柄のINPEX、石油資源開発、日揮、ENEOS、三井物産、三菱商事といった、石油やエンジニアリング、商社など資源関連株が一斉に買い進まれた。INPEXは2008年以来、この週急伸した日揮は2018年以来の高値水準。

(2023年9月15日配信)

9月13日の東京証券取引所では、朝方からINPEX、石油資源開発、ENEOSなどGENIX-CN70構成銘柄の石油株が買い先行でスタートし、本年高値を更新した。前夜12日の米原油先物価格(期近終値)が前日比1.55㌦高の1バレル88.84㌦と反発し、約1週間ぶりに本年高値を更新したことが買いの手掛かりになっていると見られる。

原油市場では需給に引き締まり感が指摘されるなど、市況は当面強含むとの見方に傾斜しているようだ。ENEOSのこの日の株価は4年8か月ぶりとなる600円台を目前に捉えている。INPEXは2008年10月以来、石油資源開発は2009年6月以来の高値水準に来ている。

米原油先物は2008年に145㌦の最高値を付け、2011年から2014年にかけて100㌦前後で推移していた。最近の石油株は原油100㌦時代の再来をあたかも織り込むかのような値動きを見せている。

(2023年9月13日配信)

9月8日の東京株式市場は、前夜の米国株式市場の下落を受けて、朝方から利益確定売りが先行する展開となったが、この週のGENIX-CN70は前週末比1.67ポイント上昇して161.86と3週連続値上がりし、前週に続いて指数算出以来の高値を更新した。この週は三菱重工、川重重工、三井物産、石油資源開発などが指数をけん引した。

原油先物価格(米WTI)は9月7日、前日比0.67㌦安い1バレル86.87㌦と、10日ぶりに値下がりし、前日まで値上がりが目に付いたINPEX、石油資源開発、日揮、ENEOS、三井物産、三菱商事などの資源関連株には利食い売りが広がった。

また、個別では、このところ物色人気を集めていた三菱重工も6日ぶりに反落した。半面、三菱重工の急上昇に対して出遅れ感が台頭していた川崎重工はこの日も買いが途切れず逆行高、10連騰となった。

三菱重工の本紙最新ニュース:長崎で脱炭素基盤技術 既存拠点連携し開発推進/三菱重工

川崎重工の本紙最新ユース:世界初ドライ式水素タービン、NOx抑制と高効率を両立/川崎重工
(2023年9月8日配信)

市況情報

【ガスの記念日特集】情報発信と地域貢献

【ガスの記念日特集】情報発信と地域貢献

10月31日は「ガスの記念日」。今回の特集では地方ガス会社の意欲的な取り組みを紹介する。巻頭ではスマートフォンの普及に伴い、重要性が高まる交流サイト(SNS)を使った情報発信について、フォロワー数アップを狙った四つのコラボ事例を取り上げる。また、北海道ガスの新築施工部隊の活動を紹介する。9ページでは地域貢献活動として、金銭的な寄付から人的支援へ一歩踏み込む静岡ガスの新組織の挑戦と、市から事業を譲り受け2021年4月から都市ガス供給を開始した金沢エナジーの取り組みを紹介する。10~11ページでは、今年7月に本紙主催で実施した北海道のカーボンニュートラル関連施設など6カ所の視察ツアーの模様を取り上げる。

<コラボでSNS盛り上げ/西部ガス×広島ガス>

SNSの中でも、写真や動画で料理レシピや地域イベント等を手軽に探せる「インスタグラム」に取り組むガス事業者が増えている。ガス事業者が抱える共通の課題として頻繁な更新作業と並んで挙げられるのが、地域の人に見てほしいけれど再生回数が増えないと見やすい位置に投稿が表示されないため、全国大でフォロワー増を図らなければならないことだろう。そこで注目されるのが、他事業者とのコラボキャンペーンだ。ガスエネルギー新聞が今年3月に実施した「SNSワークショップ」をきっかけに始まった広島ガス、西部ガス、大多喜ガスの取り組みを中心にコラボの取り組みを紹介しよう。

8月23日、広島ガスのショールーム「ガストピア五日市」に8人が集まった。広島カープのユニフォームに身を包む広島ガスエネルギー事業部販売推進部プロモーショングループと、西部ガス北九州リビング営業部の面々だ。前列の「おじさん」社員が料理対決を行うという。

実はこれ、インスタグラムのコラボ企画。料理レシピを中心に展開する「広ガスダイニング」と、おじさん社員をコンテンツとする西部ガス北九州「がすまる部屋」が双方異なるテイストで取り上げる。プレゼントキャンペーンも実施し、お互いのアカウントのフォロワー増を狙った。

「ネオおじ」こと広島ガスの山根貴之マネジャーと、「イケおじ」こと西部ガスの梅本隆徳住宅開発グループリーダーが「明太子のだし巻き玉子」と「広島菜とちりめんじゃこのチャーハン」を作る姿を、6人がスマートフォンを手に取り囲む。この日が人生3度目の玉子焼き作りという山根マネジャーと、娘の弁当も作る梅本リーダーの腕前の差は歴然だったが、撮れ高は山根マネージャーに軍配が上がった格好だ。

どのような仕上がりになったかというと、広島ガスは2回に分けてレシピの後に料理対決の様子をチラ見せし、続きを「がすまる部屋」へ誘導。「がすまる部屋」では、過去に新築営業畑で交流のあった2人のバトルを効果音も使って盛り上げ。背中合わせで調理する2人の手際を見守り、時には口も手も出す女性陣の様子とともに、3回にわたって紹介し、レシピは「広ガスダイニング」へ誘導した。

●3段階で仕掛け

2社はまずコラボ企画の概要をアップ。料理対決に続いて、相手の人気レシピを自社で再現、プレゼントキャンペーンと3段階で展開した。レシピの再現では広島ガスが「肉まん」、西部ガスは梅本リーダーと学生時代から友人の小田浩一法人営業グループリーダーの2人が「春ニラとツナのチヂミ」を作る動画を公開。現在は11月30日まで、2社フォロー&いいねプレゼントキャンペーンを実施中だ。

広島ガスのインスタは熊野直子さん、平岡美佑貴さん、白川貴実果さんが担当。3人とも3~10歳の子供を持ち、時短勤務で働く。熊野さんは「コンロを使いこなしてもらえるよう旬の食材を使った簡単レシピを中心に、広ガスポイントが使える地元の飲食店等も紹介している。ウェブ会員を増やすためにもフォロワーの拡大が必要。今年度は他事業者とのコラボ企画に注力し、1万人のフォロワーを目指したい」と話す。

西部ガスは入社3年目の越智慶奈さんが中心となり、高木美和マネジャー、小田リーダーが支える。2021年10月開設の「がすまる部屋」は、ガス機器PRカー「ガスマルシェ号」のイベント紹介、新築見学会などサブユーザー支援、社員紹介や地元企業のPR等を行う。

越智さんは「インスタはイベント集客に有効。紙に比べ安価に多くの集客ができる。住宅系のイベント集客が評価され、現在米メタのマーケティング部と月1度ミーティングしている。『いいね』やコメント増で目に留まりやすくし、再生回数を伸ばす好循環を目指している。広告も効果的に使って、インスタを他事業者と一緒に盛り上げていきたい」と語った。

<「ガスチャレバトン」/大多喜ガス×広島ガス>

広島ガスが初めてインスタでコラボしたのは大多喜ガスだった。大多喜ガスが2021年のウェブガス展と今年3月に実施した、ガス火調理中の1シーンや料理の写真を募るキャンペーン「ガスチャレ」をバトンリレー形式で引き継ぐ「ガスチャレバトン」だ。バトンをつなぎ、インスタの盛り上げの相乗効果を狙う。

ガスチャレバトンは3段階で実施。まず、6月16日に両社のアカウントで概要を紹介し、お互いの人気レシピを2品ずつ掲載。広島ガスは6月27日から第2弾としてフォトコンテストの募集をスタート。「炎のある暮らし」「ガスのある生活」など対象範囲を広げて約20日間、写真投稿を受け付け、大賞と広島ガス、大多喜ガス賞各1作品を選んだ。第3弾の「いいね&フォロー」キャンペーンは8月1~16日に行い、抽選で各3人に広島賞と千葉賞を贈呈。両社アカウントをフォローし、「いいね」を付け、ほしい商品をコメントすると当選確率がアップする仕掛けをし、約180件のコメントを得た。

大多喜ガスは販売推進グループの佐瀨彩央里さん、髙梨琴李さん、守屋知花さんを中心に月16~18回のペースでインスタを更新。イベント周知と最新ガス機器紹介、料理を3本柱とし、ショールームへの誘致と機器拡販、ガスファン作りを目的とする。髙梨さんは「最近はハッシュタグ(#)を最低15個以上、検索に引っ掛かりやすいように工夫して付け、投稿へのリーチ数の増加を狙っている」と話す。

同社は昨年12月、同じ千葉県を供給地域とする京葉ガスと行った「千葉でぜいたくキャンペーン」が初のインスタコラボだった。新規フォロワー獲得と、互いのフォロワーに両社のショールームを知ってもらおうと企画した。

<ツイッターでキャンペーン/静ガス×北ガス>

静岡ガスと北海道ガスが昨年8月に共同で実施したのはX(旧ツイッター)の公式アカウントを使った「フォロー&リツイートキャンペーン」だ。両社ともSNSでのガス会社コラボはこの時が初。コロナ禍3年目の第7波が拡大していた夏休みに当たり、旅行気分を少しでも味わってもらおうと、お互いの名産品を賞品とし、需要家を中心にフォロワー数の増加を狙った。

両社とも公式Xアカウントを災害時に広報に役立てるツールとして位置付ける。多くの情報が飛び交う災害時に、自社のアカウントを需要家に見てもらうためには、活発な更新頻度と需要家にフォロワーになってもらうことが重要だ。そこで両社は自社の部活動や地域情報の紹介のほか、定期的なキャンペーンで魅力を高めている。

キャンペーンは18日間実施。静ガスは白い恋人で有名なISHIYAのお菓子詰め合わせ、北ガスは静岡のお茶とうなぎパイセットを抽選で各10人に贈呈したところ、リツイート数は合計で6330件に上り、両社ともコラボによる相乗効果を実感した。

<新築施工現場を管理、エネファームの凍結防止/北海道ガス>

北から暖房シーズンが始まった。暖房が冬の暮らしに欠かせない北国では寒い中、修理作業も大変だ。機器設置にも寒冷地ならではの苦労がある。北海道ガスで新築住宅の施工管理に従事する設備技術サービス部の5人に、エネファームの凍結防止策や仕事に対する思いなどを聞いた。

5人は写真右から嘉多山洋一機器施工担当マネージャー、工藤省悟氏(26、今の部署は4年目)、菊地響希氏(24、2年目)、十文字直樹氏(19、1年目)、山田拓之氏(32、3年目)。彼らの仕事は戸建て・賃貸物件にガス配管や機器が正常に設置されるよう管理する現場監督だ。ハウスメーカーは担当制としており、8人部隊で1人当たり15~20の現場を持つ。ほぼ標準設置のエコジョーズに対し、施工が難しいエネファームの現場を中心に施工管理を行う。1件当たりの管理期間はパネルヒーター等の温水端末やガス配管の位置決めから敷設まで含め3~4カ月。降雪中も工事は止めない。基礎工事もテントを張って暖房を入れて行う。

寒冷地仕様のエネファームは燃料電池+貯湯ユニットを屋外に、バックアップボイラーを室内に置くため、エネファームが動き出すまで冬場は外から中へ引き込む配管の凍結を防ぐ必要がある。「配管にはヒーター線をはわせて断熱材で包み、さらに断熱テープを2重に巻いて保温する。貫通部はこの対応ができないため風が強い日は特に注意が必要」(工藤氏)。ヒーター線はドレン排水管に付けたサーモが気温を検知し動く。ヒーター線とサーモが近く、サーモが作動しなかった案件があった反省から、2021年の大寒波の際に両者の位置や作動温度等を見直し、凍結件数はほぼゼロになった。両部材は外さずに引き渡すため、長期間家を空ける時も安心だ。

●チームで力を発揮

昨春に高校を卒業した十文字氏は「どんな仕事か想像できなかったが先輩の話と表情にひかれて興味を持った。山田先輩に同行し勉強中。早く一人で動けるようになりたい」と前向きだ。北ガスジェネックスから出向の菊地氏も「前職の保安とは全く違う仕事だが、最近担当を持たせてもらって現場に出る場面が増えた」とやる気を見せる。

中堅2人は図面作成から竣工までトラブルなく現場を収める責任の重さを口にする。工藤氏は「工期中は常に緊張感を持ち、無事現場が終了するとほっとする」、山田氏は「苦労とやりがいが半々。平面図で予知できない事象に現場に急行することもある。家を造るのには多くの業者が携わるが、1年もすると顔見しりが増え、完成時にはチームで完遂したという達成感を味わえる」そうだ。

北海道は札幌市に加え、ボールパークができた北広島市やラピダスの工場建設が始まった千歳市等でも宅地開発が進む。嘉多山マネージャーは「余剰電力を買い取るコレモの系統連系までうちの部署で対応する。人が足りないのが課題だが若手の機動力に期待したい」とチームを鼓舞する。

■「地域貢献」/静岡ガス、金沢エナジー

静岡ガスと金沢エナジーはさまざまな取り組みで地域の活性化を後押ししている。静岡ガスは、専門組織を新設し、社員が積極的に参加できるよう社内の仕組みを整えている。スポーツやコンサート、環境、教育など多岐にわたる活動を通じて、より密接に関わる。金沢エナジーは、子ども支援のほか、若手工芸家の育成を目的にした工芸賞を新設した。前身の金沢市企業局の歴史や出資会社の知見を取り入れ、地域と共に成長することをモットーに継続的に実践していく。

◇◇◇

●人的支援で課題解決、一人一人の活動を後押し/静岡ガス

静岡ガスは今年1月、総務部の下に新しく「地域貢献担当」を設置した。同社はこれまでも地域貢献としてエネルギー・環境教育、奨学金の授与、クラシック音楽の冠コンサートの開催など、さまざまな取り組みを行ってきた。ただ資金支援に拠るところも多く、直接地域と関わる機会が少ないことが課題だった。新組織が中心となって、社員一人一人が地域貢献活動へ積極的に参加する環境を整えている。

3月に発表した地域貢献基本方針では、(1)全社員が自ら地域貢献活動に参加することで、社会的課題への感度と地域貢献への意識を高める(2)「地域づくり」「環境・安全・安心」「文化・スポーツ」の3分野を柱に積極的に活動し、地域の次世代を担う人材育成に取り組む――ことを掲げた。

地域貢献担当は石川麻友子マネジャーと鈴木なつき氏の二人。2022年11月に発足した社内横断型の組織「地域貢献推進プロジェクトチーム(PT)」と連携する。

PTは経営戦略本部が事務局を担い、各部門から若手を中心に社員17人で構成される。社員参加を促すための声掛けや情報発信など、各部門の旗振り役として機能する。

◇スポーツや植樹等

地域貢献の取り組みは幅広いが、社員自ら汗をかき、顔が見える活動に重点を置く。

スポーツ分野では、今年度からプロ卓球のTリーグに加盟した「静岡ジェード」のスポンサーについたことをきっかけに社員が試合会場の設営や運営のボランティア活動を行う。活動後には試合を見ることもでき、参加者から好評だったという。

音楽分野では、毎年開催する「グランシップ&静響ニューイヤーコンサート」において、これまで当日の運営はプロに依頼していたが、24年からはチケットのもぎりなどに社員が参加する予定だ。鈴木氏は「着物で来場される方の姿を見たり、常連だという方の話を聞いたりして、新年のイベントとして地域に親しまれていることを知った。お互いの顔が見える活動を通して分かることがある」と話す。

4月には、「シズガスの森」で植樹活動を行った。富士山のふもとにある静岡県富士市の土地10㌶に、今年と来年の2回に分けて富士ヒノキの苗木約3万本を植える予定だ。今年は5㌶に社員やその家族約600人が参加して、約7700本の苗木を植えた。

5㌶は東京ドームとほぼ同じ広さだ。この広大な敷地で参加者がスムーズに植樹できるよう、部門ごとにテープでエリア分けした。このほか、マイクロバスや道具の手配、地元森林組合との打ち合わせ、参加者向けの植樹方法の動画制作なども手掛けた。こうした準備のほとんどは地域貢献担当の二人だけで行った。鈴木氏は「何度も現地に足を運んで下見して、そのたびに1万歩は歩いた。参加者から『また参加したい』『社員交流の機会になった』という声が届き、励みになった。二人しかいないが、その分フットワークが軽く意思決定も早いので、実行に移しやすい」と話す。

◇ポイントで「見える化」

石川マネジャーは「『地域貢献』と言っても、何をしたらいいのか分からない、どう参加していいのか分からない社員が多い。だからと言って強制はできない」と語る。

そこで社員の積極的な参加を促すため、社内イントラネットの掲載方法を変えた。以前は文章のみで告示していたが、イメージが伝わりにくく、参加が低迷していた。そこで「地域貢献ページ」を新たに作成して「求人票」として掲載。イベント内容のタイトルと日時と開催場所を写真と共に並べ、一覧で分かりやすくした。「申し込みはこちら」のタブをクリックすると作業時間や募集人数が表示される。応募者一覧を表示して誰が参加するのか分かるようにしたところ、「知り合いがいるから参加してみようという気持ちが生まれ、相乗効果になった」(石川マネジャー)。

ユニークなのはポイント制にした点だ。活動1時間当たり10ポイントを付与する。貢献内容や高ポイントを獲得した社員は年末に表彰する方針だ。社外活動でもポイントを付与する。石川マネジャーは「社員も地域内で生活しており、町内会やPTA参加、サッカーや野球などのコーチを務めている。それも立派な地域貢献。その活動を可視化して評価するためにポイント制度を設けた」と話す。

フィードバックも欠かせない。6月、社員40人から不要になったスーツやネクタイなど317点を集め、日本語学校に通う外国人生徒に寄贈した。受け取った生徒からスーツを着て感謝を伝える動画が届いた。社内で共有したところ、やりがいを感じた社員が多かったという。

すぐに収益につながらない地域貢献活動でも、積み重ねることで地域を盛り上げ、やがてビジネスにつなげることを目指す。地域貢献担当が実現に向けた一歩を後押ししている。

●地域と共に成長へ、子ども支援、工芸賞創設/金沢エナジー

金沢市から事業譲渡を受け、2022年4月から事業を開始した金沢エナジー。子どもの成長に寄与する支援活動や若手工芸家の育成を目的にした賞の創設など、地域と共に成長することを目指し、継続的な地域貢献活動に力を入れる。同社は北陸電力や東邦ガス、地元企業などから出資を受けており、それぞれの知見を生かし、新しい取り組みに挑戦する。

金沢エナジーは22年5月、市の課題解決やSDGs(持続可能な開発目標)の達成を目的に、市との連携協力に関する協定を締結した。連携内容は(1)環境・エネルギー(2)安全・安心、災害対策(3)生活・文化(4)その他、持続可能な社会を実現するための施策――の四つ。この連携協定に基づき、地域貢献活動を実施している。

◇三つの子ども支援

将来を担う子ども達への支援活動に関しては、22年12月に「EGKの未来を育むプロジェクト」を立ち上げた。EGKとは同社の愛称で、電力・ガスと金沢の頭文字から取っているが、このプロジェクトでは「笑顔で・元気な・子どもたち」の思いも込めた。

プロジェクトは地域エネルギー企画部地域共生安全対策室の4人を中心にチームとして活動する。市と共に子ども・子育てへの支援策を協議する中で、23年度は(1)児童館への木製玩具提供(2)ひとり親家庭等への支援品提供(3)エナ丸&豆エナのこども実験教室――の三つを実現した。

(1)の児童館への木製玩具提供は22年度から3年間継続する事業。市内計33カ所の児童館にクリスマスプレゼントとして計330万円相当の玩具を贈る。社員がサンタクロースに扮し、子ども達に直接渡すことで社内における地域貢献意識の高まりも期待できる。実際に子ども達からお礼の手紙や電話の声が届き、やりがいを感じられたという。

(2)のひとり親家庭等への支援品提供は、市が主催する「拠点型子ども宅食モデル事業」に賛同して協力する。同事業は、食料提供を通じて生活の困窮や育児の悩みを持つ親が福祉職員に相談できる場として、社会福祉協議会が運営している。金沢エナジーは、災害備蓄品や社員から集めた食料品など約千個を提供。今後も継続していく。

(3)のエナ丸&豆エナのこども実験教室は、同社のキャラクター名を冠したイベントで、8月23日に初開催した。市内の小学4~6年生を対象にしたイベントで、ガス製造工場の見学や冷熱実験を実施。同社の前身である金沢市企業局時代でも行っており、そのノウハウを継承した。実験教室は、社員2人がガス博士とその助手に扮して実験するという新しい試みに挑戦。液体窒素を使用した温度による物質変化などを披露した。

山中久司副主任は「子どもはもとより保護者からも驚きの声が上がるなど、反応が良かった」と振り返る。参加者は家族含め15組32人だった。満足度は高く、他の実験があれば参加したいという声が多くあった。

◇若手工芸家を顕彰

金沢は加賀友禅や九谷焼、金沢漆器など城下町ならではの伝統工芸の町として国内外に知られている。一方で、工芸は40代でも若手と言われるほど職人の層が厚く、若手の作品がなかなか広まらないことが次世代へ継承していく上で課題となっていた。

そこで金沢エナジーは、若手・中堅の作家を顕彰する「EGK工芸アワード」を22年に創設した。応募要項は、石川県出身か在住歴がある個人・団体で、50歳までの人が対象。審査員は金沢エナジーの石本毅社長のほか、国立工芸館の唐澤昌宏館長ら8人が務めた。

応募は41件で、8月に第1回の受賞者が決定。賞は3賞あり、金沢エナジー賞にガラス作家の上前功夫氏、北國新聞社賞に陶芸家の中井波花氏、ビームス賞に漆芸家の池田晃将氏が受賞した。それぞれ賞金50万円が贈られ、金沢エナジーはメディアへの露出や販路拡大に向けた企業とのタイアップ支援を行う。

特徴的なのは、作家の人となりを重視した評価方法だ。一般的な公募型の美術賞は応募用のエントリーシートに氏名や年齢のほか、作品タイトル、受賞歴などを明記する場合が多く、作品は実物を審査会場へ持ち込む。他方、EGK工芸アワードは、作品や制作活動の思いをつづる項目を用意し、その文章を審査の重点に置いた。作品の写真を審査の参考資料とした。作家からはラブレターを書くような気持ちで書いたという声があった。佐野功マネージャーは「新しい会社ならではの賞にしたいという思いから始めた。地域に根付き、伝統ある金沢の工芸を広め、長く続ける価値のある賞になれば」と語る。

一方、誰でも参加できる賞もある。企業PRと地域の魅力発信を目的にインスタグラムで「EGKガス燈フォトコンテスト」を開催し、ガス燈のある春夏秋冬の風景を4回に分けて募集した。市民や観光客から計349件の応募があった。企画に携わった濱田結惟副主任は「暮らしにガス燈が溶け込んだ写真が集まった」と振り返る。この写真を活用し、新聞に広告として掲載した。山中副主任は「企業局として築いてきた歴史を引き継ぎながら、新たな挑戦をしていきたい」と意気込む。金沢エナジーの挑戦はまだ始まったかばかりだ。

■エネルギーのCN化最前線の北海道を視察

ガスエネルギー新聞は7月19日から21日まで3日間、「エネルギー業界のカーボンニュートラル視察ツアーin北海道」を開催した。参加者は都市ガス事業者や関連事業者など21人。視察団は、エネルギーのカーボンニュートラル(CN)化最前線の北海道を代表する6カ所を見学、意見交換をした。橘川武郎国際大学副学長(現学長)が同行し、期間中講演も行った。

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◎CCSなど施設集積チッパー併設のバイオ発電も/苫小牧市

視察団一行は、新千歳空港からまず北海道苫小牧市に向かった。同市は1910年に王子製紙苫小牧工場が操業開始して以来、工業都市として栄えた。戦後は、51年に国家レベルの事業として日本初の内陸掘込港建設に着手、現在の苫小牧港が築かれた。そうした産業を支えるため、製油所、油ガス田、発電所などのエネルギーの集積地ともなっている。今回の視察ツアーでは、日本CCS調査が運営するCCS(二酸化炭素=CO2=回収・貯留)の大規模実証試験施設、石油資源開発(JAPEX)の勇払油ガス田、苫小牧バイオマス発電の「苫小牧バイオマス発電所」を視察した。

◇国内初の一貫システム/日本CCS調査・実証試験センター

日本CCS調査は、CCSの大規模実証試験を、国から受託して実施した。2012~15年度に、実証試験設備の設計・建設・試運転等を行い、16年度から地中へのCO2圧入を開始した。19年11月22日には、目標の累計30万㌧のCO2圧入が達成され、現在は圧入を停止、モニタリングが行われている。

7月19日、最初の訪問先である日本CCS調査苫小牧CCS実証試験センターでは、会議室で中島俊朗社長(JAPEX取締役常務執行役員)の説明と、本社ビル屋上やバス内、圧入施設内で山岸和幸同センター広報渉外グループ長の現地説明を聞いた。

中島社長は、「日本CCS調査の設立は08年で、ちょうどG8(主要8カ国)北海道洞爺湖サミットが開かれ、共同声明でCCSの重要性が明記されるなど、CCS事業化への機運が高まった年だった」と、その成り立ちについて解説した。

同社は、電力、ガス、石油元売り、エンジニアリング、商社など幅広い企業33社(22年11月現在)の出資による民間会社。これまで、(1)苫小牧におけるCCUS(CO2回収・利用・貯留)大規模実証試験(委託元=NEDO=新エネルギー・産業技術総合開発機構)(2)CO2貯留適地調査事業(委託元=経済産業省、環境省)(3)CO2船舶輸送に関する技術開発および実証試験(委託元=NEDO)(4)CO2の資源化を通じた炭素循環社会モデル(委託元=環境省)==の四つの事業を行ってきたと説明した。

同実証試験センターのプロセスは、まず隣接する出光興産北海道製油所からパイプラインを通じて「オフガス」(CO2含有率50%、水素含有率40%、残りはメタンなど)を受け入れ、次にCO2吸収液(アミン溶液)を使ってCO2吸収塔でCO2を回収する。

CO2は圧縮機で昇圧し、液体と気体の特徴を併せ持つ「超臨界状態」とし、敷地内の圧入井から海底地下千~1200㍍の貯留層(萌別層=砂岩)と2400~3千㍍の貯留層(滝ノ上層=火山岩)に貯留した。圧入期間は16年4月から19年11月までで、貯留量は当初目標の3万110㌧を達成した。中島社長は「当施設は、分離・回収から圧入までの一貫システムを備える国内初のシステムで、世界でも珍しく、海外からの見学客もたくさん来る」などと語った。

同施設は工業地帯内にあるが、運河を挟んで苫小牧市街地に比較的近いことなどから、継続的なモニタリングなど住民等の安全・安心が重要とし住民説明会などに力を入れているとした。CCS事業の本格実施には多くの技術的・法的課題があり、国が検討中のCCS事業法(仮称)への期待も見せた。

現地説明では、山岸グループ長にCCSの各プロセスの仕組みや、貯留の実際などに関する説明を聞いた。同センターのCO2吸収塔は「2段吸収法」を採用している。同方式では、「低圧フラッシュ塔」と「CO2放散塔」を使う。前者は、減圧によってCO2を回収する上、CO2放散塔の水蒸気熱を再利用するため低エネルギーになる。またCO2放散塔は低圧フラッシュ塔で前処理したCO2中濃度アミン溶液の一部のみを再生するので加熱エネルギーを軽減できる。これらにより、通常型フローの3分の1から2分の1のエネルギーで分離・回収できることを説明した。

オフガスからCO2を回収済みのガスは水素、メタンなどの可燃ガスが多く含まれ、場内でボイラー燃料として有効利用していることなども説明した。

◇道内初の本格ガス田/JAPEX勇払油ガス田

JAPEX北海道事業所の勇払油ガス田は、道内初の本格的天然ガス田として、1989年に発見され、96年に生産開始して以来、安定供給を続けている。パイプラインとLNGローリーで道内にガスを送っている。

JAPEX北海道事業所では、松本洋所長があいさつ。勇払油ガス田が小規模ながら国内唯一のLNG製造施設を有している点が特徴の一つだと紹介した。総務グループによる勇払油ガス田および所内に設置したメガソーラーに関する説明の後、バスで構内を巡った。

勇払油ガス田は、苫小牧市勇払地区の約12キロ×4キロの範囲で設定され、地下4千~5千㍍に原油と天然ガスが存在する。これまで掘った井戸は20本で、現在稼働中の井戸は12ある。

国内の油ガス田は通常、地下2千~3千㍍の砂層から原油やガスを掘るが、勇払はそれより深い花崗岩層から原油やガスをとっている。花崗岩層は隙間のある砂層とは違い、通常は隙間がない。しかし、勇払では花崗岩層に無数の割れ目があり、そこに非常に高い圧力で原油やガスが入っているというのが他にない特徴だ。

視察団は、割れ目の入った花崗岩のサンプルも見た。現在は生産量が減退しているため、LNGの内航船でJAPEX相馬基地(福島県)や、北海道ガスの石狩LNG基地からLNGを受け入れている。

勇払油ガス田敷地内には2014年から稼働している北海道事業所メガソーラー(出力1800キロワット)もあり、事業所内の主要な施設とメガソーラーをバスで移動しながら見学した。

◇道内の未利用材活用/苫小牧バイオマス発電所

視察2日目(7月20日)、最初に訪れた苫小牧バイオマス発電所では、同発電所運営会社である苫小牧バイオマス発電の大藤雅生社長が、概要を説明、場内については同社の担当者が案内した。

苫小牧バイオマス発電所は、道内の森林間伐材など多くの「未利用木材」を燃料として有効利用し、木質バイオマス発電によって森林の健全化やCO2吸収力の強化に貢献している。同発電所から送電される電力は全て北海道ガスが買取り、「北ガスの電気」として一般家庭や企業などに販売されている。

苫小牧バイオ発電は、14年8月に設立。株主は三井物産40%、北海道ガスと住友林業、イワクラが各20%。発電能力は6194キロワットで、敷地総面積4万7580平方㍍は東京ドーム約1個分に匹敵する。17年4月に営業運転を開始した。24時間連続運転で、北海道ガスに固定価格買取制度(FIT)を通じて全量売電している。22年度は稼働率94・4%を達成するなど、高い稼働率を維持している。

FITでは、バイオマス発電は一般木材、廃棄物系バイオマス、リサイクル木材など4種類があり、買取価格がそれぞれ異なる。苫小牧バイオ発電は、燃料に「未利用木材」を採用しており、これは国内林の持続的経営に貢献できるとして買取価格が最も高く設定(1キロワット時当たり32円)されている。

燃料木材供給者は、三井物産フォレスト、住友林業フォレストサービス、イワクラ、北海道森林組合連合会で、胆振・後志・日高および道南を中心とした民有林・国有林から広く林地未利用木材を集めている。その範囲は苫小牧から半径約150キロ圏内だ。

苫小牧バイオ発電はこうした未利用木材を原木で仕入れ、チップ化施設(チッパー)を保有し、構内で自らチップ化する点が特徴だ。そのため、広大な土地に原木を置き、風と日光で乾燥させるのも自前で行っている。

通常はチップ化、ペレット化など、発電用燃料に加工する専業の業者もいて、バイオマス発電所はそこから燃料を調達するケースが多いが、大藤社長は「自前でやることで、マージン分がコストダウンできる」などと説明した。また、北海道産の木材は広葉樹が多く硬いので、軟らかい針葉樹の多いドイツ製のチップ化マシンでは刃がいたみやすいことなど、この地ならではの課題やノウハウについて説明した。

将来構想として発電所の排ガスからCO2を回収して貯留するBECCS(バイオエネルギー由来のCO2回収・貯留)などの展開も検討しているという。

構内のチッパー施設や原木のストックヤードを見学した。原木は夏と冬に切られるため、春と秋に入荷し、そこから乾燥工程に入る。原木の含水率は50%程度で、これを30~40%にまで乾燥させて燃料にする。

原木の積み方にも独特のノウハウがあり、乾きやすい上の木と、乾きにくい下の木のチップを適正に混合することで、発電に適した含水率にするという。

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◎高効率コジェネ間近に北ガス本社で講演と見学/札幌

北海道ガス本社(札幌市東区)では、橘川武郎国際大学副学長と、北海道ガスの前谷浩樹取締役常務執行役員生産供給本部長が講演した。同社の札幌発電所および供給防災センターも見学した。

札幌発電所は本社の地下にあり、都心部のオフィスビルに設置される、逆潮流が主目的の発電設備としては日本最大級を誇る。世界最高効率(発電効率約50%/7800キロワット×2基)のガスエンジンと発電排熱の有効利用により、低炭素なエネルギー供給を実現し、経済性も向上している。発電した電力は本社ビルでの利用分を除き、「北ガスの電気」として全道に供給され、さらに発電時の排熱は、本社ビルで利用するとともに、北海道熱供給公社を通じて都心部の地域熱供給にも有効利用されている。

◇講演エネルギー業界のCNへの取り組み/国際大学橘川武郎副学長(現学長)

橘川氏は「エネルギー業界のカーボンニュートラルへの取り組み」をテーマに講演し、政府の「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」などのエネルギー政策と、今年開かれた「G7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合」のコミュニケについて解説した。

GXについては、「閣議決定時の参考資料で官民合わせて向こう10年で150兆円の投資をするとし、その見取り図を出しているが、原子力については次世代革新炉の1兆円を示しただけ。原子力推進に舵を切ったと言われるが、副次的なエネルギーという位置付けだ」と話した。

「G7札幌コミュニケに35年温室効果ガス(GHG)排出削減19年比60%削減と入った。経産省や環境省は国際公約と認めたくないからなのか、あまり報道されていない。日本のGHG排出量は19年度までに13年度比14%減っている。発射台が100から86になったところに、さらに60%削減する。13年比でいえば66%削減になる。現行の30年46%削減から5年でさらに20ポイント減らすのは大変なこと」とし、このGX基本方針での原子力の低い位置付けと高い35年目標の二つが「極めて重要」と指摘した。

ロシアのウクライナ侵攻で起きたエネルギー危機の教訓として、改めて化石燃料の重要さが分かったとし、「岸田首相も慌ててカタールに行った。自給率を上げるべきというのが教訓だ」と話した。再生可能エネルギーが重要度を増したが「問題は二つある。一つは地元とのトラブル。デンマークのオーステッドに話を聞いた際、『陸上風力で低周波騒音の懸念から反対が出たが、事業会社を株式会社にして住民も株主にしたら、経済効果も生じて住民も喜んで参加するようになった』と話していた。事業主体に住民を入れるのが解決策だ。電源開発に時間が掛かるのも問題だ。洋上風力を今年からつくっても30年に間に合わない。他のエネルギーでつなぐ必要がある」などと指摘した。

「エネルギー全体で電気は40%、発送電ロスで15%がマイナスされて実質は25%、今はちょっと増えて27%。残りの60%の熱が主戦場。これを電化するというが、50年の推計でも電化率は38%にすぎず、まだ熱の方が大きい」と指摘し、水素、アンモニア、メタネーションなどの利点と課題を解説した。

「今の時代ガス会社が生き残るには、オール電化、デンマークのような再エネをフルに使った熱電併給のセクターカップリング、ガスというあらゆる選択肢を知った上で、お客さんの立場からどれがいいか考えることだ。高齢化した家庭にはオール電化がいいかもしれないが、子供がいたらガスの方が絶対よい。ガスの選択肢を残しながら、相手によって電化を勧める。台所に入っていき、お客さんの熱のニーズに応える。だとしたら電力に参入しないと話にならない。北海道ガスは自分より大きい北海道電力と戦ってきた。電力会社より先にガス会社がLNG火力を始めたのは北海道だけだ。ゼロカーボンシティについては、自治体は宣言しただけで何をやってよいか分からないところがある。都市ガス会社、LP会社、ガソリンスタンド会社が地域を中心にゼロカーボン化していくしかないのではないか」とガス会社の役割について語り、講演を締めくくった。

◇北ガスが目指す総合エネルギーサービス/北海道ガス前谷浩樹氏

北海道ガスの前谷取締役常務執行役員は「北ガスが目指す総合エネルギーサービス」をテーマに講演した。北ガスの概要と北海道のエネルギーの概況を説明した上で、北海道における地域課題と同社が目指す姿を説明した。

「目的はガスを売ることではなく、お客さまがほしいものをどういうもので供給するか。オールガスが目的ではなく、建物地域単位でガス・電気を組み合わせた新たなエネルギーモデルを展開する。徹底的にデマンドサイドに入り込む。北海道のエネルギー消費を見ると、暖房で消費量が多く無駄が多い」などと基本的な姿勢について話し、そうした発想から生まれた経営計画「Challenge2030」について解説した。

家庭用、電力、再エネ、札幌市都心部の分散型エネルギーシステムの取り組みを説明した上で、上士幌町、南富良野町、苫前町などで自治体と連携しながら地域課題の解決に貢献している事例を話した。

ガスのCN化については、「本当に大きな課題だ。一つは証書活用。北海道ならではのCNとして、水素活用、バイオガス活用などがある。石狩港では洋上風力発電の計画が立ち上がっているが、さまざまな方が本州への大規模直流送電線を当てにして進めている。系統に接続しきれない再エネ電力を水素にしてパワー・トゥ・ガスにすることも検討したい」と述べた。

◇道内唯一のLNG輸入基地石狩LNG基地&石狩発電所/石狩

視察最終日となる21日には、北海道ガスの石狩LNG基地と石狩発電所を見学した。

石狩LNG基地は北海道で唯一の大型液化天然ガス輸入基地。12年に稼働開始した。同敷地内にある石狩発電所は7800キロワット級のガスエンジンを12基(出力計9万3600キロワット)設置した発電所。18年に10基で運転開始し、20年12月に2基増設した。

澁谷聡執行役員生産事業部長・石狩LNG基地所長と高橋幸治石狩LNG基地製造グループマネージャーが同LNG基地と発電所の概要や、来年運転開始を予定している風力発電所について、またLNG基地を共同運営している北海道電力との関係などについて説明した。

石狩LNG基地は気化に海水を使っていないが、現在では石狩発電所の発電時の排熱を有効活用して気化しているという。

視察団は発電所建屋内を見学したほか、バスで構内を見学した。敷地内から石狩湾内にグリーンパワーインベストメントが建設中の洋上風力発電を見ることができた。

◇再エネ水素を利活用石狩市厚田地区マイクログリッド

「石狩市厚田地区マイクログリッド」が最後の訪問地となった。石狩市北部は、大規模災害時に陸路の寸断などにより孤立しやすい地域があり、長時間の停電も起きやすいことなどエネルギーの安定供給に対する地方特有の課題を抱えている。この課題を解決するため、「エネルギーの地産地活」を目指した石狩市厚田地区マイクログリッドが、22年3月に完成した。

平時は太陽光による再エネ電力を近隣の五つの公共施設へ供給するほか、災害時(停電時)には蓄電池と、再エネで生成した水素による燃料電池で発電した電力を指定避難所である厚田学園の体育館に供給するなどレジリエンス性を高めている。

視察団はまず石狩市厚田支所で話を聞いた。最初に事業主体の石狩市企画経済部企業連携推進課の佐々木拓哉主査、天野良祐主事があいさつ。ついで、事業を受託している高砂熱学工業研究開発本部のカーボンニュートラル事業本部CN営業推進室の石塚朋弘担当部長が事業概要について説明した。説明の後、現地に移動し、現地で見学しながら説明を聞いた。

同事業は、163・4キロワットの太陽光発電を自営線で市立厚田学園、道の駅、学校給食センター、消防署、ポンプ場で有効活用しながら、余剰電力は蓄電池と水電解装置稼働に使い、できた水素はタンクにためる仕組み。

水素タンクは非常時のみ出力2キロワットの燃料電池を稼働する燃料とする。同地区は電力系統が弱く、余剰電力を逆潮流させることができないため、太陽光発電を有効活用し、非常用にも使えるようにするためにこの仕組みを考案した。ランニングで経済性が出ること、エネルギーマネジメントシステムを組み込むこと、防災機能を組み込むこと、水素活用の仕組みを組み込むことを条件として、この仕組みとなった。

自営線は北海道電力の電柱を借りて敷設した。景観が重要となるため、そのルートも工夫した。水素がタンクにたまりすぎないこと、燃料電池がいざという時に稼働することを確認するため、月1回程度稼働させる。燃料電池はカナダ・バラード社製だ。太陽光発電は裏面でも発電するタイプで、冬場でも雪からの反射で発電できるという。あまり例のない施設で、視察団から活発な質問が出た

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【本紙主催視察ツアー】

スケジュール(7月19~21日)

◇7月19日

新千歳空港に集合

●北海道苫小牧市にバスで移動

・日本CCS調査・苫小牧CCS実証試験センター

・石油資源開発(JAPEX)の勇払油ガス田、北海道事業所メガソーラーを視察

◇7月20日

・苫小牧バイオマス発電所

●苫小牧市から札幌市にバスで移動

・北海道ガス本社

講演会

橘川武郎・国際大学副学長

「エネルギー業界のCNへの取り組み」

前谷浩樹・北海道ガス取締役常務執行役員

「北海道ガスが目指す総合エネルギーサービス」

・北海道ガス供給防災センター、札幌発電所を視察

◇7月21日

●札幌市から石狩市へバスで移動

・北海道ガス石狩LNG基地・石狩発電所

・石狩市厚田地区マイクログリッドを視察

●石狩市からJR札幌駅に移動。解散

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