GENIX-CN70

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7月12日終値

7月12日 GENIX-CN70は3週連続で上昇し、先週に続き2週連続で指数算出以来の最高値を更新した。日本酸素、岩谷産業、栗本鉄工、前澤工業などが本年高値を更新した。
市況情報

 中東産LPGの日本向け長期契約価格(サウジCP)7月分は、プロパンが6月分と同値の1㌧当たり580㌦、ブタンも6月分と同値の565㌦となった。

 原油市況はこのところ1バレル80㌦台で堅調に推移する一方、中国向けなどLPGの需要は落ち着いているもよう。米国プロパンガス市況も1㌧400㌦をはさんでのもみ合いが続いている。

 なお、中国に次ぐ世界第2位のLPG輸入国インドで総選挙が行われ、このほど与党の勝利が明らかになった。同党はLPG普及政策を強力に推進してきた経緯があり、LPGの国際需給に影響を与えうるとして選挙結果が注目されていた。

 (2024年7月1日配信)

【過去解説記事】

 14日東証 GENIX-CN70は前週末比0.94ポイント高の192.96と2週間ぶりに反発した。指数構成銘柄ではK&Oエナジーグループ、三菱重工業、伊藤忠が上場来高値を更新したほか、岩谷産業、関西電力、東邦ガスなど大手電力・ガス株も根強く物色された。

 K&Oエナジーの株価は今年大きく値上がりし、11日の上場来高値4230円は昨年末終値2041円から2倍を超える上昇になっている。同社は千葉県で天然ガス・ヨウ素を産出しており、ヨウ素が次世代太陽光(ペレブスカイト太陽電池)の材料となることから注目を浴びているようだ。

 経済産業省が5月29日、第1回「次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会」を開催したことも手掛かり材料になっている。同協議会では日本が先行するペレブスカイト太陽電池の普及促進を目指している。日本のヨウ素生産量は世界第2位であり、エネルギー安全保障の観点からも期待が大きい。また、今週は米国でスタートアップがペレブスカイト太陽電池の工場を新設するとの報道も関心を集めたようだ。さらに、同業の伊勢化学工業の株価が昨年末の8590円から、本日の最高値40500円まで実に4.7倍となる大相場を演じていることも刺激になっている。

(2024年6月14日配信)

 米国で天然ガス先物価格(ヘンリーハブ=HH)が上昇している。6月11日の期近終値は百万BTU(英国熱量単位)当たり3.129ドルと、今年1月12日の3.313ドル以来、5カ月ぶりに3ドル大台に乗せた。2~3月には1.5ドル台の安値を付けていた。また1年前のこの時期は2ドル台半ばで推移していた。

 最近の市況動向についてJOGMEC調査部白川裕調査役は、「市況低迷時に掘削井が絞られた影響で、ガス生産量がジワリ減少している。そこに米国南部を中心とした記録的な猛暑による発電用ガス需要増が加わった」と指摘する。また、当面の値動きについては、「ガス発電用の需要は既に限界に達しているため、先物価格がこの先もさらに大きく値上がりする展開は想定しにくい」としている。

(2024年6月13日配信)

 6月7日東証 この週の東証株価は高値圏で伸び悩み、7日の東証株価指数(TOPIX)終値は前週末比0.6%値下がりした。GENIX-CN70も上値が重く2週間ぶりに反落し、前週末比1.9%の下落となった。

 GENIX-CN70構成銘柄の足取りは総じて重いが、その中で異彩を放つ逆行高を演じたのがデンヨーだ。同社は量産型燃料電池式可搬形発電装置を開発するなど水素関連ビジネスを手掛けている。

 同社株価は2020年9月と同年11月に付けた2600円台の高値を一気に払い、2700円台半ばに到達した。約1カ月間で株価は2割を超える上昇となったが、業績は好調で株価指標面に割高感は乏しいと見られる。「チャート上の節目を突破してきたことで、目先妙味が膨らんでいる。また同社は可搬型、非常用発電機を手掛けており、梅雨入りを前に防災関連の切り口にも関心が向いている」(市場関係者)。日本ではゲリラ豪雨が頻発化しているが、同社が強みとする北米ではこの時期ハリケーンの多発が警戒されている。シーズン性を発揮する場面も期待されているようだ。

(2024年6月7日配信)

 中東産LPGの日本向け長期契約価格(サウジCP)6月分は、プロパンが1トン当たり580ドルと前月分と同値だった。ブタンは前月比20ドル値下がり(下落率3・42%)して565ドルとなった。ブタンは3カ月連続で下落した。

 先週の米国プロパンスポット市況(MB)はトン当たり400ドル前後で推移。原油先物市況(WTI)は足元の堅調な在庫状況や長期金利の高止まりなどを受けて、1バレル70ドル台後半では上値が重くなっている。

(2024年6月3日配信)

 5月31日東証 GENIX-CN70は3週間ぶりに最高値を更新した。次世代太陽光発電(ペレブスカイト)関連として注目されるK&Oエネジーが一時未踏の4000円台に乗せたほか、栗本鉄工は18年ぶりの5000円台、川崎重工は9年ぶりの6000円台、ENEOSは6年ぶりの800円台となるなど大台替わりが相次いだ。北海道電力、九州電力などの電力株や、商社、海運株なども根強く物色されている。

 三浦工業が急伸し、およそ3カ月ぶりに本年高値を更新した。同社は5月30日、ダイキンと業務資本提携すると発表。工場向けに空調や蒸気ボイラ、水処理システムなど熱・空気・水に関するトータルソリューションをワンストップで提案する。それぞれの強みを生かして工場のカーボンニュートラル化のニーズに応える。三浦工業は国内の工場に、ダイキンは海外に強固なネットワークを有しており、市場はメリットを発揮しやすい組み合わせと受け止めているようだ。また、ダイキンは三浦工業の発行済み株式4.67%を三浦工業の自社株から購入する。三浦工業はその売却代金でダイキン子会社の株式49%を取得する。株式価値の希薄化や当面の株式需給悪化を招かない資本提携スキームも好感されたようだ。関連記事(https://www.gas-enenews.co.jp/gijutsu-shinseihin-hoan/40495/

(2024年5月31日)

 米国の天然ガス市況が上昇している。ヘンリーハブ(HH)先物期近価格は5月23日、百万BTU(英国熱量単位)当たり一時2.9ドル台に上昇した。3ドルは今年1月以来となる高値水準。「米国ガス市況は2~3月に1ドル台半ばまで大きく下げた経緯があり、その際に生産リグの稼働台数が削減された。その影響がここにきて出始めている」(JOGMEC調査部白川裕調査役)という。また、米国南部を中心にこの夏の気温が高めになるとの予報や、米フリーポートLNG輸出プロジェクトが本格生産に復帰したことなども材料視されているという。

(2024年5月24日配信)

 5月17日 GENIX-CN70は前週末比2.35ポイント安の192.12と4週ぶりに下落した。総じて利益確定売りに押される展開となったが、その中で13日に決算を発表した岩谷産業、14日に決算・大規模な自社株買いを発表したENEOSの株価が急伸した。どちらも一時本年高値を更新するなど人気付いた。

 岩谷産業の決算について市場関係者は、「前期実績も今期予想も2桁増益の好決算。ただ今期の配当金予想額が据え置かれたため、株価は急伸後伸び悩んだが、持分法対象のコスモエネルギーの寄与分も見込め、今後増配期待から見直される可能性がある」とする。

 ENEOSの自社株買いは上限が発行済み株式総数の2割強におよぶ大規模なもので、市場にサプライズを与えた。「経営陣の資本効率・株主還元への意識の高さを感じる内容。大型投資がなく、JX金属がIPOに向けて資産売却を進める中、財務体質が良好になっていることが背景にある」(大手証券アナリスト)と見ている。

(2024年5月17日)

 GENIX-CN70は10日、前週末比2.33ポイント高い194.47ポイントと3週連続で値上がりし、前週に続いて過去最高値を更新した。

 指数構成銘柄では大阪ガス、北海道ガスなどが過去20年来の高値を更新。大阪ガスは8日発表の自社株買いが好感されている。「3月発表の中期計画で株主資本配当率に基づく増配方針が打ち出されたばかりの株主還元策で、サプライズとして受け止められた」(アナリスト)。北海道ガスは4月30日発表の株式分割(1対5)や今期実質増配を手掛かりに人気化している。PBRは0.8倍台に上昇し、課題の1倍割れ解消が現実味を帯びてきた。

 岩谷産業も急伸し、4月に付けた最高値9311円を射程に捉えてきた。同社の3月期決算は5月13日午後2時半に発表予定だが、同社がさきごろ筆頭株主となったコスモエネルギーホールディングスが昨日決算発表を行い、堅調な業績と自社株買い、年間300円配当を維持する方針が明らかになった。コスモエネの株価は本日、一気に高値を更新、岩谷産業の株価支援材料になっている。

(2024年5月10日配信)

  中東産LPG日本向け長期契約価格(サウジCP)5月分は、プロパンが1㌧当たり580ドルと前月比35ドル下落した(下落率5・69%)。値下がりは4月分に続いて2カ月連続。

  ブタンは前月比35ドル値下がりして(下落率5・65%)1トン当たり585ドルとなった。ブタンも2カ月連続で下落した。

(2024年4月26日配信)

 中国税関が18日に発表した3月のLNG輸入量は前年同月比24・1%増の665万㌧となり、3月としては2021年の564万㌧を上回り3年ぶりに過去最高を更新した。1~3月の累計輸入量は同20・4%増の1985万㌧と、年間輸入量が過去最高だった21年同期を0・8%上回った。

 今年第1四半期の国内総生産は5・5%増と昨年第4四半期の5・2%増を上回った。輸出産業を中心に二酸化炭素排出削減のためのガスシフトも進んでいる。同期間のLNGスポット市況が前年同期を4割下回るなど割高感が薄れたことも需要喚起につながったようだ。今後の見通しについてエネルギー・金属鉱物資源機構調査部竹原美佳部長は、「国際市況はこのところ上昇に転じており、LNGスポット調達は目先一服しそうだが、地方政府のガス火力建設推進や船舶燃料のグリーン転換などもありガス需要そのものは高まる方向」としている。

(2024年4月18日配信)

 東証4月12日 東京ガスの株価が一時前日比54円高の3899円と前日に続いて上場来高値を更新した。同社株は今週に入って騰勢を強め、年初からの株価上昇率は20%に達した。3月中旬、大阪ガスの時価総額が一時、東京ガスを逆転したが、東京ガスが再び首位に立ちリードを広げている。4月19日に全国知事会が東京ガス横浜ステーションを視察し、e‐メタン製造実証の説明を受ける予定となっている。カーボンニュートラルに向けた同社の技術力に注目が集まりそうだ。株価上昇により、株価純資産倍率(PBR)は0.94倍へと上昇。1倍乗せが視野に入ってきた。

 都市ガス株では、北海道ガスの株価も上昇基調にあり、この日も前日マークした上場来高値2960円まで一時買い進まれる場面があった。年初からの上昇率は34%に達するが、同社株のPBRはいまだ0.7倍台にとどまり、依然割安感が漂う。北海道では半導体工場の新設で電力消費の大幅な伸びが予想され、北海道電力の株価もこのところ大幅に上昇している。

(2024年4月12日配信)

 4月3日 米原油先物(WTI)は前日比28セント高の85.43ドルと3日続伸、本年の高値を更新した。ウクライナによるロシア主要製油所への無人機攻撃や、イラン大統領によるイスラエルへの報復表明など地政学的リスクの高まりが背景にある。また週間統計で米国原油在庫が前年同期比18.5%減と減少が目立ったことも材料視されている。

 注目されたOPECプラス合同閣僚監視委員会は、生産目標維持を決定。また、米連邦準備理事会パウエル議長は講演で利下げを急がない姿勢を示したとされる。三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部・芥田知至主任研究員は、「中東、ウクライナ情勢は今後一段と動向が注視される。また、米金融政策、中国当局による経済運営、産油国の生産方針なども引き続き注目される。ただ、米中の景気は石油需要を上振れさせるほどには強くないとみられ、相場の上昇傾向を決定づける材料は出にくいと思われる。相場は再び一進一退の推移となりやすい」と指摘。もっとも、今年後半にかけて米利下げを受けてドル安が進む展開となれば、ドル建ての原油価格には割安感が生じ上昇圧力がかかりやすくなるとし、今年度は1バレル95ドル程度の上値が見込めるとしている。

(2024年4月4日配信)

 GENIX-CN70は年度内最終売買日となった3月29日、前週末比0.55ポイント上昇し189.41と、2週続けて最高値を更新した。3月末割り当てで1対10の大幅な株式分割を実施した三菱重工業は権利落ち後も堅調で、修正株価は連日の最高値となった。GENIX-CN70構成銘柄では他に理研計器が1対2、川崎汽船が1対3の株式分割を3月末割り当てで実施した。

 岩谷産業の株価が3連騰で、連日の上場来高値更新。3月28日にコスモエネHD株式を追加取得し、持ち分法適用会社にしたと発表したことが材料視されている。コスモエネの今期純利益予想は780億円、岩谷産業は335億円。持ち分比率2割相当の利益が来期以降、上乗せされるインパクトの大きさが期待されているようだ。また、会社側は本件株式取得に要する資金を借り入れで賄うとしており、「増資による一株当たり利益の希薄化が回避される見通しになったことも好感されている」(国内証券調査部)という。

(2024年3月29日配信)

 米国3月26日、米パイプラインガス(ヘンリーハブ=HH)先物価格が終値で5日続落し、百万BTU(英国熱量単位)当たり1.575ドルに下落。2月20日に付けた本年安値1.576ドルを1カ月ぶりに割り込んだ。ザラ場安値は1.4㌦台まであった。

 米エネルギー情報局(EIA)が3月21日に発表した週間データによると、米国の地下ガス在庫量は3月15日時点で前年比21%増、過去5年間の平均値に対しては41%上回っている。エネルギー・金属鉱物資源機構・白川裕調査役は、「気温が上がり需要が低下して、在庫がさらに積み上がったことと、生産がすぐには低下しないことが主要因」と指摘する。こうした在庫の荷余り感が先物市況の上値を重くしているようだ。

 HH先物価格の過去15年間の値動きを振り返ると、期近先物価格が1ドル台まで下落した年は2012年、16年、20年の3回あり、当該年の安値形成月はそれぞれ、4月(1.9ドル)、3月(1.6ドル)、6月(1.4ドル)となっている。春に安値を付ける習性と、この間の価格水準が切り下がる傾向が見て取れる。

(2024年3月27日配信)

 3月22日、ガスエネ株価指数カーボンニュートラル70(GENIX‐CN70)は2週間ぶりに過去最高値を更新した。GENIX‐CN70構成銘柄はほぼ全面高となり、K&Oエナジー、三菱重工、岩谷産業、大阪ガスなどが最高値を更新した。

 なお、三菱重工(1株→10株)、理研計器(1株→2株)、川崎汽船(1株→3株)は3月28日付で株式分割の権利を落とす。株式分割のメリットとしては、単位投資額の引き下げによる投資家層のすそ野拡大、流動性の向上などが指摘される。昨年以降で、株式分割を実施したリンナイ、NTT、三菱商事、京セラは、権利落ち後も堅調な値動きを保っている。

(2024年3月22日配信)

 3月15日 ENEOSHD(GENIX―CN70構成銘柄)の株価が朝方から買い進まれ、5年3カ月ぶりに700円台に乗せてきた。他にもINPEXや石油資源開発、コスモエネルギーHDなどの石油関連株、資源高が利益に結び付く商社株も軒並み値上がりしている。コスモエネルギーは国内大手証券が投資格付けを引き上げたことも好感され、株価は上場来高値を更新した。

 株式市場は、米原油先物(WTI)が14日、期近4月渡し終値で1バレル81.26ドルと続伸し、昨年11月6日の80.82ドル以来の80ドル台乗せとなったことを材料視しているようだ。国際エネルギー機関(IEA)が同日公表した市場レポートでは、今年の石油需給は供給不足になるとの予測が示されている。産油国の自主減産延長による供給減や、紅海におけるタンカー襲撃で海上輸送距離が延びておりバンカー燃料の需要増加を織り込んだという。もっとも原油市況は過去1年余りにわたって、おおむね70ドルから80ドルのレンジで推移しており、80ドル台では上値の重さも意識されそうだ。

(2024年3月15日配信)

 3月8日 大阪ガス(GENIX CN‐70構成銘柄)の株価が前日比153円高の3350円で寄り付き、直後に230円高の3427円まで上昇。1月11日に付けた上場来高値3242円を一気に更新した。同社は7日、3カ年中期経営計画を策定し、配当を原則減配せず維持または増配する累進配当制度を導入すると発表し、好感された。

 2024年3月期の配当金は前期比12円50銭増配して72円50銭(従来予想65円)に、25年3月期は95円を目指す方針も示した。株主資本配当率を3%とする方針を掲げ、機動的な自己株取得も検討するとした。この他、自己資本利益率(ROE)の目標は26年度に8%程度、投下資本利益率(ROIC)は5%程度を目指す。「株価を意識した経営姿勢に変化していると株式市場が受け止めており、都市ガス株の中でも相対的な値上がりが目立ってきている」(中堅証券)という。この日前場終値での時価総額は、大阪ガスが1.43兆円、東京ガスは1.41兆円となり、大阪ガスが東京ガスを逆転した。

(2024年3月8日配信)

 2月22日 東証では朝方から買いが先行し、日経平均株価は大幅に反発した。終値は初の3万9000円台で、1989年12月以来の史上最高値更新となった。注目された米エヌビディアの決算が市場関係者の事前予想を上回り、3連休控えにもかかわらず、マーケットのセンチメントは強気に傾いた。半導体関連株をリード役に、主力株を中心に幅広く買い進まれた。

 GENIX‐CN70構成銘柄も軒並み上伸した。三菱重工業が上場来高値を更新し、日本酸素HD、川崎汽船は最高値をうかがう動き。原油市況の上昇を背景に石油資源開発など石油関連株も値上がりした。

(2024年2月22日配信)

 米国パイプラインガス市場価格(ヘンリーハブ先物)が2月15日、8日連続安となり、百万BTU(英国熱量単位)当たり1.5㌦台まで下落、2020年6月以来の安値水準となった。在庫の積み上がりが背景にあるという。

 エネルギー・金属鉱物資源機構の白川裕調査役は「原油市況が1バレル80㌦弱と堅調なことから、パーミアン盆地を中心にシェールオイルの生産が盛んで、随伴ガスの生産量も増えている。気温が高めに推移していることもあり、地下在庫は過去5年間の最高水準に到達している」と指摘。

 先物市場の中心商いが春の需要閑散期に移りつつあることから、市況は当面弱含みで推移しそうだ。
(2024年2月16日配信)

2月12日 米国で天然ガス市場価格(ヘンリーハブ先物価格=HH)が5日続落し、期近終値は百万BTU(英国熱量単位)当たり1.768ドルに下落した。1.7ドル台は2020年7月以来の安値となる。市中在庫が高水準にあり、市場のセンチメントを圧迫している。

HHは昨年11月以降、3ドルを割り込むなど市況の低迷が続いているが、生産量が落ち込む兆しはいまだ見えないという。エネルギー・金属鉱物資源機構の白川裕調査役は「原油市況が1バレル80ドル弱と堅調に推移していることから、オイルリッチなパーミアン盆地を中心に油狙いの生産が盛んになっている。このため副産物であるガスの生産も増加している」と指摘する。

(2024年2月13日配信)

米国市場でガス市場価格(ヘンリーハブ先物価格)が続落している。7日に心理的な下値めどと見られていた百万BTU(英国熱量単位)当たり2ドルを割り込むと、8日終値は一段安となり1.917ドルまで下落した。およそ3年5カ月ぶりの安値水準となる。

市況下落の背景には、マーケットの荷余り感があるようだ。「このところの気温上昇で暖房用需要が低下しており、地下在庫量は過去5年間の上限レベルに到達している。当面は上値の重い展開が続きそうだ」(エネルギー・金属鉱物資源機構・白川裕調査役)。

ヘンリーハブ価格の下落に伴い、米国産LNGの輸出価格も低下しており、現状は世界の主要輸出国の中でも最も安価な水準となっている。

(2024年2月9日配信)

2月6日 東証後場 三菱重工業の株価が昨日の1万円初登頂に続いて一段高となった。この日午後、同社は3月末割り当てで株式1株を10株に分割すると発表。合わせて発表された今2024年3月期第3四半期連結決算は、売上高が前年同期比11%増、純利益は同倍増となるなど好調ぶりが明らかになった。通期の受注見通しを6兆円とし、従来予想に4000億円上積みした。これら大幅な株式分割と好調な業績動向が素直に好感され、買いが買いを呼ぶ好循環となっている。

同社株は1年前の2月には5000円前後で推移しており、そこから株価水準はちょうど2倍になっている。

(2024年2月6日配信)

1月31日 サウジアラムコがこのほど日本のLPガス輸入事業者に通知したプロパン2月分出荷価格(サウジ2月CP)は、前月比10ドル値上がりして630ドルとなった。値上がりは昨年8月分(470ドル)以降、12月分の変わらずを挟んで8カ月連続。

LPガス市況に影響する原油市況が、12月初旬を底に水準を切り上げているほか、世界最大のLPガス輸出国である米国において、プロパン在庫の取り崩しが進み、市況が上昇したことが背景にある。米国ではLPガスの一大輸出地域であるメキシコ湾で濃霧が観測されており、輸出作業への影響も警戒されたという。サウジCP2月ブタンも、前月比10ドル値上がりして640ドルとなった。

(2024年2月1日配信)

1月26日GENIX-CN70は前週比0.64ポイント値上がりして169.36ポイントとなった。7週間連続の上昇で、3週続けて統計開始来の最高値を更新した。一方、東証株式市場全体としては、このところの上げピッチの速さから利食いが広がり、東証株価指数(TOPIX)は7週ぶりに値下がりした。

GENIX-CN70の構成銘柄で値上がりが目立ったのは、25日に2023年12月期決算を発表したHIOKI。24年12月期も増収増益を見込み、配当金を年200円に連続増配する方針が好感されたようだ。

このほか、三菱重工業、三菱化工機が高値圏で頑強な値動き。SMBC日興証券が目標株価を引き上げたウエストホールディングスも下値を切り上げている。

(2024年1月26日配信)

 欧州パイプラインガス先物価格が17日、百万BTU(英国熱量単位)当たり8ドル台まで下落し、昨年8月以来の安値水準となった。北東アジアLNGスポット価格も続落しており、17日は昨年6月以来の9ドル台を付けている。先物の決済期日が2月から3月に移り冬場の需要期を過ぎることで、足取りが弱くなっている。昨年の安値は欧州ガス先物価格が7ドル台、スポットLNGは8ドル台だった。

 当面の市況動向についてエネルギー・金属鉱物資源機構の白川裕調査役は、「カタールから欧州にLNGが年間1500万トン供給されており、スエズ運河の通航リスクが警戒されているものの、それでも欧州の在庫水準が依然として高いため、中東からの輸送に支障が生じても当面の供給は何とかなると見られている。昨年10月から輸出を再開したエジプトLNGもまだ量は少ないとはいえ心理的な支えになっている。不需要期の相場は数年前なら3~4ドルもありえたが、安価になったスポットLNGを中国が仕込む動きも見られるため、今回はそこまで下がらないだろう」とする。また、「足元のスポット需要は弱いが、供給力に余裕があるほどの状況でもない。幸いにして供給設備のトラブルは昨年から起きていないが、いつ起きても不思議はない。先行きを楽観視するわけにはいかない」と指摘する。

(2024年1月18日配信)

東京株式市場は年末・年始と値上がり基調を強めており、GENIX-CN70も12月15日から1月12日終値まで5週連続で上昇した。1月12日の終値は167.67ポイントとなり、昨年9月15日にマークした指数算出以来の最高値165.83ポイントを4カ月ぶりに更新した。

GENIX-CN70構成銘柄では、商社株の値上がりが目立ち、伊藤忠商事、住友商事が最高値を更新。海運株も高値圏でしっかり。個別銘柄では、三菱重工業、愛知時計電機が最高値を付けた。本日午前、2024年8月期第1四半期決算を発表し、大幅な増収増益が確認されたウエストホールディングスが急伸した。

(2024年1月12日配信)

中東産LPGの日本向け長期契約価格(サウジCP)1月分は、プロパンが前月比10㌦高い1トン620㌦。ブタンも同じく10㌦値上がりして630㌦となった。小幅高ながら、極東マーケットは足元で強弱感が交錯しており、先行きの方向感は乏しい状況。米国のプロパンスポット市況(モントベルビュー)は12月分が1トン357㌦と、前月から約25㌦値上がりした。依然として近年の安値圏での値動きではあるが、市中の在庫水準は過去5年平均並みまで減少しており、底堅さも見られる。

(2024年1月10日配信)

1月5日 2024年の年明けの東京株式市場は、能登半島地震を受けて4日の大発会は売り物先行でスタートしたが、新NISA開始に伴う投資資金流入などによる先高期待から押し目買いが優勢となり、結局、東証株価指数(TOPIX)は4日、5日と続伸した。

GENIX-CN70も12月最終週に続いて上昇し、5日終値は164ポイントと、5週ぶりに160ポイント台を回復。昨年9月15日にマークした最高値165.83に急接近した。指数構成銘柄では、大阪ガスが大幅高となり、5日に一時3111円まで上昇。12月13日に付けた最高値3077円を上回った。4日以降終値ベースでも初めてとなる3000円台を維持している。このほかでは、海運株が人気を集めており、日本郵船、商船三井が最高値を更新した。

(2024年1月5日配信)

12月29日 東京証券取引所最終売買日(大納会)は、今年1年の相場を象徴するような堅調な展開だった。その中でGENIX-CN70は前週に続いて上昇し、3週連続高で今年を締めくくった。GENIX-CN70の年間騰落率はプラス25%となり、東証株価指数の上昇率と互角の好成績だった。

GENIX-CN70構成銘柄の中で値上がりが目立ったのは、川崎汽船、日本酸素、栗本鉄工、愛知時計電機、関電工など。一方、不調だったのは、イーレックス、レノバ、テスHD、ウエストHDなどだった。なお12月末割り当てで、京セラが1株を4株、三菱商事は1株を3株に株式分割した。GENIX-CN70もこれに合わせて、株式分割の影響を考慮した修正株価指数を算出している。

(2023年12月29日配信)

12月22日 GENIX-CN70は前週に続いて上伸した。全般は高安まちまちだが、値がさ株の海運3社(日本郵船、商船三井、川崎汽船)がそろって本年高値を更新し、CN70を押し上げた。また、工場新設で恩恵を受ける理研計器が12月20日上場来高値を更新した。

海運株が動意付いたのは先週末。紅海で武装組織による商業船への攻撃が相次いだことで、海運会社がスエズ運河の航行を見合わせ、迂回経路による輸送距離の延長などで海運市況が上昇するとの思惑が働いた格好。海運株はコロナ禍前後の市況高騰局面で株価が5倍以上に跳ね上がっており、その記憶がまだ新しいだけに思惑が先行しやすいようだ。

(2023年12月22日配信)

12月15日 GENIX-CN70は3週ぶりに反発した。指数構成銘柄では、理研計器の株価が13日に上場来高値を更新。大阪ガスも同日最高値を更新し、未踏の3000円台に一時到達した。

岩谷産業の株価はコスモエネルギーホールディングスの筆頭株主になると発表した12月1日以降、大きく値下がりしたが、15日終値は7日ぶりにプラスに転じた。

14日に一時5996円まで下げ、4月初旬以来8カ月ぶりとなる6000円大台割れを見たことで、値ごろ妙味が台頭したようだ。9月高値からこの安値までの下落率は26%に達し、一株当たり純資産5249円も意識される水準となっていた。チャート面から当面の戻りめどを探ると、25日移動平均線の6866円、9月高値から直近安値までの下げ幅の半値戻し6770円など、6800円あたりが意識されそうだ。

(2023年12月15日配信)

12月13日 GENIX-CN70構成銘柄の大阪ガスが4日続伸し、一時3077円の高値を付けた。3000円台に乗せたのは上場来初。12日大引け後に、日本経済新聞が「伊藤忠と大阪ガス、世界最大級の水素生産に最大4割出資」と報じ、これを材料視する買い注文が朝方から集まった。

株価は11月初旬、自社株買いの発表を契機に大きく上放たれ、過去16年来の上値抵抗線となっていた2600円前後の節を突き抜けてきた直後とあって、しこり感のないチャート妙味も好感されているようだ。

12日に発表された欧州の水素企業Everfuelのニュースリリース

(2023年12月13日配信)

12月8日 GENIX-CN70は前週に続いて下落した。急速な円高進行や世界的な景気減速懸念を受けて、東京株式市場はこの日、ほぼ全面安となった。GENIX-CN70構成銘柄にも利益確定の売りが先行した。中でも、原油先物市況の下落を受けて、石油、造船、商社、海運株などが大きく値を下げた。

12月1日引け後にコスモエネルギーホールディングス株式大量取得を発表した岩谷産業は、週明け4日から株価が大きく下げ、発表前の終値7141円から8日安値6388円まで5日間で10%を超える下げとなった。9月の本年高値8040円からの下落率は20%に達している。アナリストからは「コスモエネ株取得に1千億円を超える大金を投じることについて、どのようなリターンを見込んでいるのか、できる限り定量的な説明が欲しい。株価の下げは合理的な反応。投資家は追加情報を待っている」との声が聞かれる。コスモエネ株が取得価格を割り込んでいることも嫌気されているようだ。

(2023年12月8日配信)

米原油先物価格(WTI)は12月6日、前日比2.94ドル安の69.38ドルと5日連続で値下がりした。節目と見られた1バレル70ドル台を5カ月ぶりに割り込んだ。9月に付けた本年高値93.68ドルからの下落率は26%に拡大するなど下値を模索する動きとなっている。

注目された11月30日のOPECプラス会合は、各国から自主減産(来年1~3月期に日量約220万バレル)が発表されたものの、想定の範囲内と受け止められたようで、相場の下落基調を反転させるには至らなかった。

相場が弱含んでいるのは、世界的な景況悪化に伴う需要減少への警戒があると見られる。「不動産不況が続く中国経済の停滞や、ここまでの利上げで減速が見込まれる米国景気などを考慮すると石油需要は伸び悩み、自主減産してもなお需給は引き締まらないのではないか」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部芥田知至シニアアナリスト)との指摘がある。当面は今週末発表される米雇用統計をはじめ、主要な経済指標を横目にみながら神経質な値動きが続きそうだ。

(2023年12月7日配信)

12月1日 岩谷産業(GENIX‐CN70構成銘柄)はこの日、コスモエネルギーホールディングスの株式を追加取得すると発表した。旧村上ファンド系と見られる既存株主から計約1740万株を1053億円で取得する。取得済みの持ち株と合わせた保有比率は19.93%となり、同社の筆頭株主になる。

1株当たりの取得価格は約6051円で、この日の東証終値5616円を約8%上回るが、価格の算定根拠については明らかにしていない。今後については、「より一層連携を深め、新たなシナジーを創出する」としているが、具体的な方向性はまだ示されていない。また、今3月期連結業績への影響については「精査中」としている。

サウジCP12月分は、前月と同価格の1バレル610ドル、ブタンも変わらずの620ドルとなった。

(2023年12月1日配信)

11月24日 東京証券取引所で三菱重工業(GENIX‐CN70構成銘柄)の株価が前日比529円高と大幅続伸し、およそ2カ月ぶりに8800円台まで水準を切り上げた。

同社は11月22日に防衛事業説明会を開催し、来年度からの3カ年は防衛力整備計画の大幅な拡充を受けて同社の事業規模は2倍以上になると発表した。過去長期にわたり同事業規模は5,000億円弱で推移していたが、来年度からの3カ年は1兆円規模になるとした。祝日をはさんでこの日は朝方から買いが先行、業績拡大への期待感を織り込む動きを見せた。株価が1万円に近づいていることから、株式分割を催促する値動きにも映る。

ガスエネルギー新聞が注目する同社のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みも続いている。弊紙11月20日付では三菱重工エンジン&ターボチャージャの「水素混焼50%で安定燃焼、5700キロワット級ガスエンジン」を技術面トップで紹介している。また、同日付紙面には「水素特集」を掲載しており、三菱重工の高砂水素パークなどを詳しく紹介している。

(2023年11月24日配信)

11月14日の東京証券取引所で大阪ガスが4日続伸し、ザラ場の高値は2920.5円まで買い進まれた。11月7日にマークした上場来高値2914.5円を5営業日ぶりに更新した。10月27日発表の中間決算が好感されているほか、同日発表の自社株買いも歓迎されているようだ。マーケットでは、大阪ガスの株価格付けを従来から「買い」としていたみずほ証券が、目標株価を2600円から3300円に引き上げたとの情報もこの日伝わった。

大阪ガスの株価をローソク足(日足)で見ると、11月9日から10日にかけて、さらに10日から13日、13日から14日にかけても連続して窓「空」ができた。4本の陽線と「三空」で形成される高値圏でのこの形は「三空踏み上げ」と呼ばれ、チャートを投資判断のよりどころとする投資家は、空売りを仕掛ける急所とみる。同社株の信用買い残は、売り残が買い残を超過した状態にある。確かに目先は急伸した後だけに強弱感が対立しやすい場面と言えるが、この日の株価は株価純資産倍率が0.7倍台と依然として割安な状態にあることから、むしろ売り方の手仕舞い(買い戻し)による一段の上昇を読む向きもある。

関連記事 大阪ガスが上昇率首位、愛知時計は最高値を更新/GENIX―CN70 - ガスエネルギー新聞 (gas-enenews.co.jp)

(2023年11月14日配信)

 11月2日のGENIX‐CN70は3週ぶりに反発した。自社株買いを発表した大阪ガスが急伸し、最高値を更新したほか、業績好調の日本酸素、愛知時計も高値を更新した。

 中東産LPGの日本向け長期契約価格(サウジCP)の11月分は、プロパンが1トン当たり前月比10㌦値上がりして610㌦(前月比1.67%高)となった。ブタンは同5㌦値上がりして620㌦(同0.81%高)。プロパン、ブタンともに4カ月連続で値上がりした。

 LPG市況に影響を与える原油相場の値動きはこのところ重くなっているが、LPG市況はこれから需要期を迎える季節性もあって、先高観が根強いようだ。日本向け米国産LPGの航路に当たる中南米パナマ運河が、渇水の影響で渋滞解消に時間がかかるとの見通しも強気の見方を支えているようだ。

 CPのこの1年間の価格推移を振り返ると、プロパンは2月に790㌦のピークを迎え、その後は大きく値下がりして、7月に400㌦のボトムを付けている。ブタンも同様に2月の790㌦でピークを打ち、7月には375㌦の安値を付けている。

(2023年11月2日配信)

10月27日 GENIX-CN70は前週末終値から0.2ポイント下落して155.81と2週連続で下落した。東証株価も0.06ポイント下がって142.76となった。

10月以降、株式市場は調整色を強めており、9月最終週との比較ではGENIX-CN70、東証株価ともに約3%下落している。

GENIX-CN70の構成銘柄のうち9月末比で上昇したのは全体の2割16銘柄にとどまる。その中で愛知時計が本年高値を更新したほか、日本酸素、栗本鉄工、川崎汽船などが高値圏で頑強な値動きを見せている。

(2023年10月27日配信)

10月19日の米原油先物(WTI)価格は3日続伸。中東地域の紛争拡大への懸念が市況を押し上げた。

国際ガス市況も値上がりしており、欧州パイプラインガス先物価格(TTF)は13日に百万BTU(英国熱量単位)当たり16ドル台、スポットLNG価格は18日に19ドル台へと上昇している。

イスラエル沖の海洋ガス田(タマル)が操業を停止したと報じられており、このガスを原料とするエジプト産LNGの出荷に影響が及ぶ恐れが指摘されている。

(2023年10月20日配信)

 10月9日の米原油先物(WTI)市況は2日続伸し、1バレル前日比3.59㌦高の86.38㌦に上昇した。6日の米雇用統計は市場の予想を上回る数値で、長期金利上昇を促したが、原油市場は底固い動きを見せた。そこに、イスラエル・パレスチナ間で大規模な武力衝突が発生。中東の地政学的リスクが高まったことで、買い気が優勢となったようだ。また、本年高値を付けた9月27日以降の下げが急だったこともあり、買い戻しも入りやすかったと見られる。

 一方、連休明け10月10日の東京株式市場は、朝方から買い戻しの動きが広がりほぼ全面高でスタート。GENIX‐CN70構成銘柄もこのところ下げがきつかった石油株などが買い気配で始まるなど総じてしっかりした動き。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部の芥田知至主任研究員は当面の原油相場について、「今回の武力衝突にイランの関与があるのかどうかなど中東情勢には不透明な部分があり、不安定要素が増えた格好だ。他方、このところの米長期金利上昇やドル高が原油相場を下押しするとの見方や、米欧の金融引き締め効果で石油需要が鈍化するとの懸念も根強い。さらに中国の不動産不況、全米自動車労組(UAW)のストライキ、米予算審議の難航なども需要を鈍化させる要因として意識されている。当面は地政学的リスクや需給などの強弱材料が交錯する中で、不安定な推移が見込まれる」としている。(了)

(2023年10月9日配信)

米原油先物が10月4、5日と続落し、1バレル82㌦台まで下落、8月30日以来の安値水準となった。4日は下落率が5・61%に達する大幅な下げで、下落率が5%を超えるのは5月2日以来5カ月ぶり。9月27日に付けた本年高値93・68㌦から5日までの下落率は12%強に広がった。市場では、米ガソリン在庫の急増や強含んでいる長期金利の動向を警戒。今晩の米雇用統計の発表を注視している。

一方、米天然ガス先物(HH)価格は3日続伸し、今年3月以来となる百万BTU(英国熱量単位)当たり3ドル台に乗せてきた。

(2023年10月6日配信)

米原油先物が10月4日、前日比5.01㌦安の1バレル84.22㌦と急反落し、8月31日以来の安値水準に後退した。1日の下落率の大きさは5.61%に達した。5%を超える大幅な下げは5月2日の5.29%以来、5カ月ぶり。市場では、同日発表された米石油在庫統計でガソリン在庫の急増が明らかになり、これが利益確定売りを誘ったとの見方が出ている。

JOGMECの首席エコノミスト・野神隆之氏は、「統計で明らかになった米ガソリン需要の低迷は、この時期としては2000年以来の低水準。他にもロシアの軽油輸出禁止の一部解除検討の報道、サプライズのないOPECプラス産油国共同閣僚監視委員会の内容などの弱気材料がそろって現れた。このため、市場は狼狽売りの様相を呈しているが、今年第4四半期に供給不足に陥るとの認識に変化はなく、市場のセンチメントが根本的に変化したとは言い切れない。原油市況は売られ過ぎ気味の領域に入りつつあり、値頃感から買い戻しが発生しやすい状況ではあるが、まずは明日6日発表予定の米国雇用統計が注目される」としている。

10月5日の東証は朝方、昨日までの大幅安に対する自律反発の動きとなり、TOPIXが6日ぶりに反発するなど全般に買い物優勢の始まりとなったが、原油の急落を受けて、GENIX‐CN70構成銘柄のINPEXや石油資源開発など石油関連株は売り気配のスタートとなった。

(2023年10月5日配信)

中東産LPGの日本向け長期契約価格(サウジCP)の10月分は、プロパンがトン当たり前月比55㌦値上がりして600㌦(前月比9.09%高)、ブタンは同50㌦値上がりして 615㌦(同9.82%高)となった。プロパン、ブタンともに3カ月連続で値上がりした。背景には原油市況の上昇が指摘されている。

(2023年9月29日配信)

東証9月28日前場の寄り付きは、GENIX‐CN70構成銘柄のINPEX、石油資源開発、日揮など石油株が大幅高でスタートした。朝方は全般に利益確定売りが先行する中で、石油関連株の値動きの強さが目立った。石油資源開発は2008年以来、13年振りとなる6000円台に到達した。

 前夜27日の米原油先物(WTI)価格は前日比3.29㌦値上がりして1バレル93.68㌦となり、7営業振りに今年の高値を更新した。また、当面の戻りのめどと見られていた昨年10、11月に付けた92㌦台の高値を一気に上抜いてきたことで、市場関係者の間では先高ムードが一層強まっている。

(2023年9月28日配信)

9月22日の東証株価は前夜の米国株式下落を受けて、朝方から売り先行で始まった。GENIX-CN70構成銘柄も商社、海運株など総じて下落した。半面、INPEX、石油資源開発、ENEOSなど石油株の一角は底固い動き。GENIX-CN70は前週末比2.08ポイント下落して164.04ポイントと5週ぶりに下落した。

21日の米原油先物市場は、米金融政策の引き締め長期化懸念が台頭し、利益確定売りに押された。期近終値は前日比0.65㌦安い89.63㌦と、3日続落し、6営業日ぶりに1バレル90㌦台を割り込んだ。

9月25日付紙面の関連記事「原油100ドルが視界に サウジ減産の影響を注視」

(2023年9月22日配信)

9月14日の米商品先物市場では、原油先物(WTI)価格が2日ぶりに反発し、終値は前日比1.64㌦値上がりして1バレル90.16㌦と、当面の節目と見られていた90㌦大台を突破した。90㌦に乗せるのは2022年11月7日の91.79㌦以来、10カ月ぶり。市場関係者の間では、原油需給の引き締まり感から先高を予想する声が強まっている。

原油市況の上昇を受けて、15日の東証ではGENIX-CN70構成銘柄のINPEX、石油資源開発、日揮、ENEOS、三井物産、三菱商事といった、石油やエンジニアリング、商社など資源関連株が一斉に買い進まれた。INPEXは2008年以来、この週急伸した日揮は2018年以来の高値水準。

(2023年9月15日配信)

9月13日の東京証券取引所では、朝方からINPEX、石油資源開発、ENEOSなどGENIX-CN70構成銘柄の石油株が買い先行でスタートし、本年高値を更新した。前夜12日の米原油先物価格(期近終値)が前日比1.55㌦高の1バレル88.84㌦と反発し、約1週間ぶりに本年高値を更新したことが買いの手掛かりになっていると見られる。

原油市場では需給に引き締まり感が指摘されるなど、市況は当面強含むとの見方に傾斜しているようだ。ENEOSのこの日の株価は4年8か月ぶりとなる600円台を目前に捉えている。INPEXは2008年10月以来、石油資源開発は2009年6月以来の高値水準に来ている。

米原油先物は2008年に145㌦の最高値を付け、2011年から2014年にかけて100㌦前後で推移していた。最近の石油株は原油100㌦時代の再来をあたかも織り込むかのような値動きを見せている。

(2023年9月13日配信)

9月8日の東京株式市場は、前夜の米国株式市場の下落を受けて、朝方から利益確定売りが先行する展開となったが、この週のGENIX-CN70は前週末比1.67ポイント上昇して161.86と3週連続値上がりし、前週に続いて指数算出以来の高値を更新した。この週は三菱重工、川重重工、三井物産、石油資源開発などが指数をけん引した。

原油先物価格(米WTI)は9月7日、前日比0.67㌦安い1バレル86.87㌦と、10日ぶりに値下がりし、前日まで値上がりが目に付いたINPEX、石油資源開発、日揮、ENEOS、三井物産、三菱商事などの資源関連株には利食い売りが広がった。

また、個別では、このところ物色人気を集めていた三菱重工も6日ぶりに反落した。半面、三菱重工の急上昇に対して出遅れ感が台頭していた川崎重工はこの日も買いが途切れず逆行高、10連騰となった。

三菱重工の本紙最新ニュース:長崎で脱炭素基盤技術 既存拠点連携し開発推進/三菱重工

川崎重工の本紙最新ユース:世界初ドライ式水素タービン、NOx抑制と高効率を両立/川崎重工
(2023年9月8日配信)

市況情報

【ガスエネルギー新聞60周年記念特集】LNGの歩みと未来 “メタンルネッサンス”到来/座談会:橘川武郎(東京理科大学大学院教授)、今井 伸(ガスエネルギー新聞前編集長)、石井 彰(エネルギーアナリスト)

【ガスエネルギー新聞60周年記念特集】LNGの歩みと未来 “メタンルネッサンス”到来/座談会:橘川武郎(東京理科大学大学院教授)、今井 伸(ガスエネルギー新聞前編集長)、石井 彰(エネルギーアナリスト)

2019年はガスエネルギー新聞が1959年に創業してからちょうど60年。また、日本がLNGの導入を始めてからは50年に当たる。この節目に、「LNG導入の歩みと未来」をテーマに座談会を行った。ゲストは本紙連載「エネルギー深論」の執筆者である橘川武郎東京理科大学大学院教授と石井彰エネルギーアナリスト。司会は今井伸前編集長。3人は、LNG導入50年を記念して10月に出版予定のLNG/天然ガスの歴史と将来展望を大胆に描いた啓蒙書の制作に関わった経緯もある。

〇東京ガスの決断

今井東京ガスと東京電力がLNGの導入を始めた1969年頃、日本は高度経済成長のピークか、最終段階にあった。まずは当時を振り返り、LNGの導入に至った経緯から始めたい。

橘川LNGが導入された前の年は、日本のGNP(国民総生産)がドイツを抜いて西側で第2位になり、いわゆる経済大国になった画期の年だった。また、この頃は東京、横浜をはじめ全国に革新自治体が広がった時代でもあった。背景には物価上昇と公害問題があった。LNGを初めて導入した港が横浜市の港だったことを考え合わせると、出発点では硫黄酸化物が発生せず窒素酸化物の発生量が非常に少ない天然ガスの環境性が価格よりも重視されていたのだと思う。ただ、これは東京電力の視点で、私はむしろ東京ガスの決断に注目している。東京ガスは東京電力よりも早く、60年代に入ったくらいから用意周到に準備していた。東京ガスは、将来のガス需要が増えていく中でガス導管を効率的に延伸するには、熱量が高い天然ガスの導入が必要と考えていた。公害対策だけではないビジョンを描いていた。しかも天然ガスに切り替えるには全てのガス器具を調整する膨大な作業を伴う。ものすごい決断だったと思う。

今井東京ガスと東京電力はどのように協力関係を築いていったのか。また、当時、世界で天然ガスはどのように利用されていたのか。

橘川東京ガス単独では購入量が小さく、契約交渉を進めるうえで東京電力との共同調達が欠かせなかった。東京電力は東京ガスからの打診を受けて行動を起こしたが、当時は石油価格が安く、LNG火力にすると3割ほど割高になるため、東電社内は大反対だったと聞いている。

石井日本よりも早くLNGを導入したのは英国とフランスのガス会社だ。もともとオランダからパイプラインでガスを輸入していたが、経済成長の下でガスが不足しないようLNGを補完的に導入するようになった。当時、石油は豊富かつ低廉なエネルギーで、まだまだ伸びると見られていた。そのため欧州の電力会社はガスに興味を持っていなかった。日本では、天然ガスの利用は新潟や秋田など一部地域で行われていたにすぎなかった。それでも電力とガス会社が組んでLNGの輸入を始めたのは、先見の明があったと言える。

今井ところでLNGはもともと、どこで生まれ、どのように使われていたのか。

石井LNGは今では長距離輸送手段として常識だが、もともとは備蓄手段として誕生した。100年ほど前、米国南西部のガス田地帯から都市部まで数千キロものパイプを敷いて天然ガスを利用するようになった。そこで問題となったのが需要の季節変動。パイプラインの口径や圧力を最大需要に合わせると、投資に無駄が生じる。そのためパイプラインの設計は1年間の平均需要に合わせ、需要が少ない時期に需要地で貯蔵し、需要期に取り出すようにした。ガスは液化すれば体積が600分の1になるため、液化して貯蔵する方法が採用された。これがLNGの始まりで、1940年代のことだ。

◇社運を賭けた熱量変更

今井大阪ガスや東邦ガス、さらに地方のガス事業者は、どのようにしてLNGを導入していったのか。

橘川都市ガス大手3社はいずれもLNG購入量のハードルを乗り越えるため、電力会社と組んで導入を進めた。東京ガスの米国アラスカ産LNG導入に続いて、大阪ガスはブルネイ、東邦ガスはインドネシアから導入した。大阪ガスははじめ東京電力と組み、後から関西電力が仲間に加わった。東邦ガスは中部電力と組んだ。第2グループの地方ガス会社は自力で導入を始めた。西部ガスはミニタンカー方式で先鞭をつけ、日本ガス、広島ガス、仙台市が続いた。静岡ガスは大型タンカーから部分卸しを受ける二港揚げ方式を採用した。今、アジアでLNG導入の動きが広がっている。輸入量が少ない地域には、第2グループのこうした知恵や経験が生かせるのではないか。

今井LNG導入に伴う熱量変更作業はガス会社にとって一大事業だった。大手3社でも15年以上かかり、中小規模の事業者はなかなか踏み切れなかった。そのため、国が補助金を出し、大手事業者が技術支援を行うなど体制づくりを進め、その中で地域ごとに多数の事業者が協力する共同熱変を行った。全てが終わったとき、LNG導入から40年経っていた。

橘川電力会社にとってLNGの導入は、LNG火力発電所を作ればおしまいだが、ガス会社は導入してからが大変だ。熱変に要した時間は東京ガスが17年、大阪ガスは16年、東邦ガスは15年かかった。それを見ていた第2グループにとってLNG導入は相当大きな決断だったはずだ。実際、ガス会社の経営幹部とLNGの話をすると、受入基地などインフラよりも熱変の話が先に来ることが多い。また、東京ガスが熱変を行っていた当時は学生運動が盛んで風当たりも強かったようだ。こうした困難を乗り越えてガス会社は鍛えられていった。審議会などで都市ガスは消費者からの信頼が厚いと感じるが、その原点は一軒一軒フェイスツーフェイスで回った熱変作業にあったのだと思う。

今井家庭用ガス機器の熱変はマニュアルに基づいて、言ってみれば人海戦術で行った。しかし、産業・業務用のガス機器は特注品が多く、事前調査ですべての機器をリストアップし、必要なものは社内に同じ機器を作って安全確認の実験をやった。このような努力はガス機器開発の出発点になった。またLNG導入に要した費用を回収するためには、新規需要開拓でガス販売量を伸ばす必要があり、そこからいくつも新たなガス機器が生まれた。

〇LNGは外せない

今井東日本大震災が起きるまでは、エネルギー政策におけるLNGの位置付けや世間のLNGに対する認識と、実際のLNGの利用実態にはずれがあると感じていた。震災以降は一変して、LNGに対する世間の認識が深まり、政策の位置付けも変わってきた。

石井日本におけるLNGの用途はおよそ3分の2が発電用、3分の1が都市ガス用。この割合は3・11(東日本大震災)の前も後も変わらない。だが、電力会社における燃料の優先度は、3・11以前のLNGは3番目だったが、以後は1番目とせざるをえない状況になった。また需要家の間で、エネルギー源を電力会社だけに依存せず、分散化を図りたいというニーズが高まってきたことも都市ガスには追い風となった。天然ガスに対する政策面の位置付けは3・11以前は高いとは言えなかったが、3・11以降は、LNGが事実上の主役となったことを受けて、それを後付けする必要が出てきたのが実態ではないか。

橘川戦後日本エネルギー史の二大危機である石油危機と3・11では、どちらも天然ガスの優れた対応力が示された。石油危機当時、電力会社の電源の73%が石油火力だった。2度の石油危機を経て原油価格は16倍に跳ね上がり、電力会社は石油依存を引き下げるため電源構成の見直しを進めた。原子力、LNG、石炭を3分の1ずつとしたのだが、原子力は70年代には既に反対運動が起きており、LNGが時間を稼いでくれた。LNGがあればこそ石油危機が乗り越えられた。3・11のピンチもLNGが救った。そうした実態があるにも関わらず、政策面でLNGには光が当てられていない。第5次エネルギー基本計画では「天然ガスシフト」という言葉は2カ所しかない。エネルギーミックスにおけるLNGの需要想定は、現状の8000万tから6200万tに減る姿が描かれている。また、審議会で議論されるのは原子力と再生可能エネルギーばかりだ。これで天然ガスシフトと言えるのか。

今井LNGが3・11で果たした役割とは具体的にどういうことか。

石井LNG火力は3・11で緊急停止した原発の穴を埋め、電力不足の危機を救った。今も最大の電源であり、この先数十年後も最大であり続けるだろう。電源以外でもシェアを伸ばしていくと思う。理由は、環境性と使い勝手、価格面から説明できる。それにしても、これまでLNGに光が当たらなかったのは応援団の存在もあろう。原子力は安全保障から始まり原子力村がある。再生可能エネルギーには市民運動家がいて、パリ協定(温暖化対策の国際的枠組み)も後押ししている。LNGは総合力では1番だが、図抜けたものがない。価格が一番安いわけでなく、CO2発生量が一番少ないわけでもない。ヒットはたくさん打てるがホームラン王にはなれない。地味だから応援団が出来ず、一般のイメージもわきにくいのではないか。

◇ガスは再エネのベストパートナー

今井3・11以降、天然ガス以上に脚光を浴びたのが再エネだ。その存在感は日増しに高まっており、将来はエネルギー供給を支える柱になるとの見方まで出てきた。

橘川第5次エネルギー基本計画には、50年に向けて再エネは主力電源化すると書かれている。ただ、現状は天然ガスが主力電源であり、この状況は相当続くだろう。50年時点でも再エネはせいぜい50%が限界で、原発は高くても10%程度だろう。LNG・石炭火力は40%近く残るはずだ。そもそも再エネの主力電源化を目指せるのもLNG火力に頼れるからこそ。化石燃料に頼りながらCO2を削減するにはCCS(CO2回収・貯留)やCCU(回収したCO2を利用する技術)、メタネーションなどの仕組みを入れるしかない。

石井再エネを過大評価し過ぎていないか。日本は人口密度が高いうえ、急斜面や森林面積が多く、平地は少ない。深い海ばかりで漁業が盛んな土地柄だ。とても再エネに適しているとは言えない。また、ここまでは電源に焦点を当てて話してきたが。電気は日本人が使う総エネルギー消費量の4分の1に過ぎない。残る4分の3をどうするかが重要だ。ここに再エネを導入するのはコスト面から相当ハードルが高くなる。再エネに過度に期待できない以上、この先も天然ガスを主力とせざるを得ない。

今井世界的に見れば再エネの発電コストは急速に下がっている。

石井再エネの発電コストは場所によって雲泥の差が生じる。火力発電所ならどこに作っても大差ないが、再エネは違う。地理的条件に恵まれた海外の数値を日本に当てはめられない。また、太陽光や風力は需要変動にタイムリーに対応できないため、補完する電源や蓄電池が必要だ。そうしたコストも含めて条件をそろえて議論しなければいけない。今の技術では再エネのバックアップを担えるのは天然ガス発電にならざるを得ない。

今井天然ガスは再エネの普及拡大を支えるベストパートナーだと言える。再エネに対する電力会社、ガス会社の対応をどう見ている。

橘川再エネの出力変動に対する対応力という点では、中部電力碧南石炭火力は1分当たりの負荷変化率が2%程度、西名古屋LNG火力は8%に達する。LNGは石炭の4倍くらい対応力がある。ガスでなければ再エネに対応できないのは明らかだ。

電力会社の対応では、東京電力が千葉で行う出力制御に注目している。発送電分離になれば、送電会社は送電網の稼働率を上げないと儲からない。再稼働のめどが立たない原発のために送電網をいつまでも空けておくわけにはいかないので、太陽光・風力を限界まで受け入れてくるだろう。会社側は明確に方針を示しているわけではないが、一歩踏み出した動きになろう。電力会社が発電力ではなく系統運用こそ他社にまねできない強みだと認識しない限り、再エネの時代は来ない。

都市ガス会社は、熱の扱いを考えるべきだ。デンマークでは再エネの電気から熱を作るパワーツーヒート(余った電気で温水を作り貯めて使う)が行なわれている。日本でこれを行えば、ガスによる熱供給との食い合いが想定されるが、それでも都市ガス会社は取り組むべきだと思う。

◇コモディティ化するLNG

今井近年、LNG市場の参加者が売り手、買い手とも広がり、取引規模も膨らんでいる。仕向け地条項の撤廃など契約内容の見直しも進み、流動性の高い市場が形成されつつある。また、3・11直後に問題視された日本のLNG輸入価格が相対的に割高な状態(ジャパンプレミアム)も、官民挙げた取り組みの甲斐あって、現在はほぼ解消している。

石井3・11以前はLNG市場の中で日本の電力会社の存在が非常に大きかった。日本の電力は安定供給の意識が強く、相対契約の長期取引を基本としていた。そして価格メカニズムは原油価格準拠が主流だった。3・11後は原発代替に火力を動かしたため、LNGの輸入が一挙に増えた。そこに原油価格の上昇が重なり、日本のLNG輸入価格は跳ね上がった。ジャパンプレミアムと呼ばれたこの価格高騰のおかげで、雨後の筍のように新たなLNGプロジェクトが世界中で誕生した。そうして石油市場の後を追うようにLNGも短期契約やスポット取引が急増し、長期契約でも供給元を特定しないブランドLNGが増加していった。LNG貿易に占める短期・スポットの割合は現在4割近くに拡大している。これは国際商品の中で最も流動性が高い石油に近いレベルだが、幸い石油のように投機資金に振り回される状態には至っていない。この「いい湯加減」は10年くらい続きそうだ。ジャパンプレミアムのけがの功名と言えるかもしれない。

橘川米国のシェール革命の影響も大きい。石油・ガスの大輸入国だった米国は今や純輸出国となった。かつてOPEC(石油輸出機構)に対抗してIEA(国際エネルギー機関)の設立に尽力した米国が輸出国になったのだ。これからの輸入の中心はアジアであり、今こそアジア版IEAを作るべきだ。日本は世界最大のLNG輸入国だが、その地位もあと5年だろう。日本が主導権を持ちLNGを中心としたアジア版IEAを作る最後のチャンスだ。

石井中東依存度の問題については、石油と異なるLNGの特性にも考慮しておきたい。石油は自動車や航空機燃料など他の燃料で代替できない用途が大半を占めるが、LNGは多くが発電用に使われており、代替が効く。LNGは石油と違い備蓄をしていないが、バッファーがある。LNG輸入量が多い中国や欧州はパイプラインガスが主流でLNGはあくまでも補完。仮にホルムズ海峡が封鎖されてLNGのスポット価格が跳ね上がれば、LNGは買わなくなる。日本はその行き場を失ったLNGを買えばよい。また、中東以外で新規LNGプロジェクトが続々と立ち上がってくるため、5~10年先の中東依存度は大きく下がっていく。

◇天然ガスは野球のセットアッパー

今井橘川先生は熱心なプロ野球ファン(阪神タイガーズ)で、野球に関する本も出している。天然ガスを野球選手に例えると。

橘川天然ガスは野球で一番大事なところを任されるセットアッパー(最終回を投げるクローザーの前に投げる中継ぎ投手)だ。セットアッパーの出来で勝負は決まると言ってもいい。3・11以降、先発は原子力、中継ぎは天然ガス、抑えは再エネと言ってきたが、今の野球は、抑えよりも中継ぎが大事だ。どちらかというと一番いい投手は、抑えではなく中継ぎに回すくらいだ。

石井天然ガスはホームラン王にはなれないが、打率はかなり高い。守備ならどこでも守れる。総合力が一番で、絶対に外せない選手だ。

〇水素媒体メタンの有効性

今井天然ガスの優れた特性は評価できるとはいえ、化石燃料のひとつでもある。パリ協定が発効して、世界は脱炭素社会を見据え、温室効果ガス排出量削減に本格的に取り組み始めた。まずは2050年に向けて、天然ガスにはどのような展望があるのか。

石井直近数年間の1次エネルギーで伸び率が一番高いのは再エネ、中でも風力、太陽光だ。一方、増加量が一番伸びているのは天然ガス。両者はシェアも伸びている。反対にシェアを落としているのは原子力と石油、石炭。それでも1次エネ供給の8割を化石燃料が占める。最終エネルギー消費でも7~8割は化石燃料が占める。これをゼロにするのは大変なことだ。それでもそこを目指すなら、とりあえず天然ガスを主軸にせざるを得ない。エネルギー供給で大事な観点は、価格や地政学的リスクなどいろいろあるが、これからはCO2削減が最大の力になるからだ。

橘川50年までは、日本のみならず世界が考える以上にLNGの時代だと思う。実態としてLNGに頼る時代がより深まっていく。もし今が移行期だとするなら、今こそLNGでしっかり稼いで、そのカネで次の投資をきっちりやるべきだ。SDGs(持続可能な開発目標)に関して言いたいのは、13番目の目標である温暖化対策ばかりが注目されているが、1番目の目標は「貧困をなくす」、2番目は「飢餓をなくす」で、7番目に「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」が出てくる。今も世界には電気が届いていない人が9億人もいる。2000年以降、12億人が電気を使えるようになったが、その電気の7割は化石燃料由来だ。目標達成には化石燃料に頼らざるを得ないという実態がある。SDGs自体が二律背反を抱えているのだ。化石燃料を使いながらCO2をどう減らしていくかを考えねばならない。ESG(環境・社会・ガバナンス投資)も同様で、化石燃料を投資対象から外すという選択はすごく偏った考え方だと言える。

LNGを導入する国や地域が増えていく今世紀前半は、日本のガス会社にとって大いにチャンスがある。ニューヨーク株式市場に株を上場させるくらいの意気込みで、海外展開に取り組むべきだ。フランスの総合エネルギー企業エンジーは、国営ガス会社GDFだった時代は国営電力会社EDFの顔色ばかりを窺っていた。ところがスエズと合併したとたん、グローバル化した。その変化のスピードは速く、ついていけないほどだ。日本のガス会社もどこにスエズのような会社がいるか探す時だ。

◇CO2を出さない使い方

今井50年まではいいとして、その先はどうか。天然ガス事業に特化してきた日本の都市ガス会社は50年以降どうしていけばよいのか。日本社会の中でCO2問題をどう解決していくのか。

橘川CO2を増やさないように天然ガスを使うには、CO2と水素から天然ガスの原料であるメタンを作るメタネーション技術を用いるか、CO2を二国間クレジットなどで減らすかだ。天然ガスは使い勝手が良い。導管網などの既存インフラもできるだけ活用したい。だから天然ガスを使い続けられる方法を取り入れることが大事だ。そうしてCCUの時代につなげていけば、長期的にも生き残れる。

今井今世紀後半はメタンガスが再評価されるということか。水素社会が来るというシナリオについてはどうか。

石井臨海部の大型火力用を除き、純粋水素を現在の石油やガスのように隅々まで送り届けるという時代は来ないだろう。水素は体積当たりのエネルギー量が小さいうえ、そのまま都市ガスの導管網に流したり、マイナス253℃の液体として輸送・貯蔵すると問題も出て扱いが難しい。エネルギー媒体としての物性は非常によくない。カーボンリサイクルさえ実現できれば、水素よりも合成メタン、即ちメタネーションの方がはるかに優れている。しかも、日本は高齢化が進み経済成長が望めない中で大規模なインフラを新設できない。既存の資産を有効活用して低炭素社会に移行することが望ましい。現状の都市ガスを生かして、少しずつカーボンフリーのメタンに入れ替えていくのが最も現実的な方法だ。これはエネルギー媒体としてのメタンガスの価値の再発見、メタンルネッサンスといえる。

今井その方法なら資金もそれほどかからず、社会への負担も小さくて済む。そういうことを現実の問題として都市ガス会社が受け止め、実際に検討する時代はいつ頃訪れそうか。

橘川本気度はともかくとして、投資を始めるべきタイミングに来ていることは確かだろう。50年前のLNG導入でも、その9年前から検討を始めていた。今が早過ぎるということはない。

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