![【特集第15回テクノシンポジウム】デジタル化で業務効率向上](https://www.gas-enenews.co.jp/wp-content/uploads/2019/09/20190902-10-pdf.jpg)
ガスエネルギー新聞は7月24日、都市ガス事業の業務効率化に資するシステムなどを紹介する専門技術の展示・講演会「第15回テクノシンポジウム」を東京都内で開催した。都市ガス4社が省エネ管理システム、防災マッピング、工事の生産性向上を図るシステム、顧客ポータルサイトなどの導入について事例講演で報告した。基調講演では、日本HPが日本のサイバーセキュリティ—リスクの現状を、特別講演では、PwCコンサルティングが、エネルギー業界のデジタル化の取り組みについて紹介した。
●基調講演—日本のサイバーセキュリティリスクの現状と、国民生活の基盤を支える都市ガス業界でのレジリエンスの重要性/日本HP専務執行役員パーソナルシステムズ事業統括九嶋俊一氏
最近、米国政府のサイバーセキュリティーへの関心が非常に高まっており、さまざまな対策を企業に求めている。当社は米国HPが培った技術や情報を日本国内の顧客に提供している。
米国HPは中央研究所HPLabsで約20年先を見据えた研究をしており、その際に注目しているキーワードは(1)急速な都市化、(2)人口動態の変化、(3)超グローバル化、(4)加速するイノベーションの四つ。このうちグローバル化の進展に伴い、正当な競争以外に、政治的・経済的意図によるスパイ行為や競争相手国の重要インフラを停止させるなどのサイバー上の脅威が高まっており、破壊的なサイバー攻撃が増加している。
日本でのサイバーセキュリティー対策は情報漏洩に重きが置かれていたが、インフラ企業では、ガス供給などのサービスを停止させない対策が重要。
最近はサーバーの機能を停止させる攻撃から、よりセキュリティーレベルが低いパソコンなどの端末を攻撃し、使えなくする攻撃に手法が変化している。大量の端末が使用不能になれば、サーバーがダウンするのと同様の影響がある。
基本ソフト(OS)などの対策が強化されているため、端末の制御用プログラム(ファームウェア)などに対する攻撃が増えている。通常ファームウェアには侵入対策がなされておらず、一度ウィルスが侵入すると見つけにくい短所がある。
最近は人工知能(AI)を利用し、毎日35万種以上の新しいコンピューターウィルス(マルウェア)が作成されおり、既知のマルウェアにしか対応できない既存のセキュリティー製品では防御できない。大半のマルウェアはメールに添付されているが、社員全員が悪意のあるメールを開封してしまうリスクを完全に排除できない。
米国ではマルウェアの侵入を前提にマルウェアの検知から駆除、通常の状態に復旧させるまでの仕組み(レジリエンス)が標準的な考え方になっている。この考えは規格化されており、米連邦政府機関が指定する重要データを取り扱っている企業、その取引先まで全てこの規格に従うことが要求される。この流れは日本に波及することが予想され、日本の防衛省の取引条件は今年から米国と同様になる。
内閣サイバーセキュリティーセンターは最近、部品の調達段階からサイバーセキュリティーのチェックを行うサプライチェーンセキュリティーについて言及を始めた。モノのインターネット(IoT)時代では、悪意がある一つのチップが製品に使われているとネットワーク上のセンサーで収集されたデータ全体が盗まれる可能性がある。
米国では以前からリスクが認識されており、当社でも米国防総省(DOD)の認定業者からしか部品を調達しない。日本HPが提供するパソコンやプリンターはサイバーセキュリティーのレジリエンスの標準に準拠しているため、一定の安全性が担保できる。
従来、インフラの専用管理システム(OT)はインターネットから切り離されているため、安全だと言われていた。しかし、情報システムとデータをやり取りする必要があるため、マルウェアが入り込む可能性は存在する。管理システムはセキュリティー対策がなされていない古いOSやファームウェアがそのまま使用されていることが多く、注意が必要だ。
今後、情報システムとOTを連結して新しいサービスを創造することで企業価値を高める動きが加速するため、対策が求められる。
日本HPのパソコンはサプライチェーンリスクを排除しているだけでなく、マルウェアの予防、検知、復旧を自動で行う機能が組み込まれている。また未知のマルウェアに対応できるディープラーニングAIを活用して、99%のマルウェアを防御できる。
さらに企業に対し、パソコンの監視やセキュリティーレポートなどの提供を行うサービスも開始した。そのサービスには攻撃者の侵入経路やその方法を分析するサービスも含まれている。
●事例講演—未来の省エネ暮らしへ、北ガス版HEMS「EMINEL」/北海道ガススマートエネルギー推進室辻一誠氏
北海道ガスは快適さと省エネを両立して暖房する家庭用エネルギーマネジメントシステム(HEMS)「EMINEL(エミネル)」を開発し、昨年10月にエミネルによる新サービスの提供を開始した。
北ガスは、総合エネルギーサービス事業の展開によって北海道の地域社会に貢献することを目指している。その事業の柱の一つがエネルギーマネジメントサービス(EMS)の開発・推進だ。この事業の中核にエミネルを据えている。
エミネルが誕生した背景には北海道の寒冷地特有の事情がある。世帯ごとのエネルギー消費量は関東に比べ1・6倍で、長い冬があることから暖房に至っては約3・7倍だ。北海道の戸建て住宅は、セントラル温水暖房が主流だ。暖房シーズン中は、常時暖房という家庭が多い。室温設定は本州と比べ高めでエネルギーの削減余地は大きい。
エミネルは、温度、湿度、照度、人感のデータを取得する独自開発したマルチセンサーとセンサーで集めた情報を分析し暖房機器に最適運転指令を行うゲートウェイ、エコジョーズなどの暖房機器を省エネ制御する機器、データを蓄積・分析するクラウドサーバー、省エネアドバイス等が受けられるアプリケーションで構成される。機器間の通信は、電波の到達性が良く、電波干渉の少ないWi—SUNという無線規格を採用した。通信プロトコルはECHONETLite(HEMS用標準通信プロトコル)を用いている。データの蓄積や分析で利用するサーバーはクラウドを用いる。このクラウドの利用により、初期投資費用を下げ、システムの増強を容易にできるという利点がある。
外出中、在宅、就寝の温度をあらかじめ設定することで暖房機器が効率的に稼働する。マルチセンサーで不在や室内への日射量を検知して自動で省エネする機能も付いている。エミネルとエコジョーズの組み合わせと、灯油でのセントラル温水暖房を比較すると、一次エネルギー消費量は約22%、CO2排出量は約33%削減でき、年間エネルギーコストを6万円ほど削減できると試算した。
取得データを分析して行う省エネアドバイスは、タブレット端末などからアプリを通じてお客さまに提示される。社会心理学やナッジを応用したパーソナライズされた省エネアドバイスとなっている。例えば、暖房を止めていないお客さまへ「このシステムを使っているお客さまの半分が暖房を止めているので暖房を止めてみませんか?」と暖房を止めようと思う心理が働く工夫がなされている。また、エネルギーの使用量も年月日の単位で確認できる(エネルギーの見える化)。今年3月までにアンドロイド、ⅰOSの両方でアプリが利用できるようになった。
エミネルを顧客と北ガスをつなぐ重要な双方向コミュニケーションツールとして活用し、2022年度までに1万件の普及を目指す。
今後、機能拡充や新たなサービスの展開も検討している。北海道全域に提供先を広げ、エミネルを北海道のデファクトスタンダードにしていきたい。
●事例講演—防災マッピングシステムを活用した被害状況の見える化と供給停止判断の迅速化/大東ガス保安部保安企画課課長倉本勉氏
大東ガスは、災害時の情報収集と第二次緊急停止判断(道路や建物の被害、導管の被害状況など経時的な情報をもとにガス供給の停止を判断する)の迅速化を図るため、2017年の春に防災マッピングを導入した。導入の経緯と防災訓練などでの活用方法、今後の拡張計画などを紹介する。
災害が発生すると、災害情報を伝える業務が発生するが、コールセンターからの情報を複数人を介し伝達すると正確に伝わらないことがある。防災マッピングを導入することで、最新の被害状況・作業状況を一元管理できるため、各班が共有化して報告を聞き、次の作業準備ができると判断し導入した。
防災マッピング導入により、担当者の個人スキルに依存した体制から脱却でき、システムの自動判断により人手による検索時間を削減できる。さらに、宿日直体制時の行動基準を標準化し、保安部門の技術職以外の社員でも対応が可能になると考えている。
防災マッピングの主要機能は、主に、被害想定、被害・措置情報収集、情報の集約、最新情報の共有、集計・分析などだ。
大東ガスが具体的に活用した防災訓練の例を紹介する。訓練は、情報収集から第二次緊急停止までの一連の流れで行った。まず情報収集では、需要家からのガス漏れなどの連絡がコールセンターなどに入る。コールセンターで集約した情報はマッピングシステムのサーバーに送信され、被害状況や対応状況がシステム画面の地図上に表示される。
ガス漏れの場所は、地図上に赤丸で表示される。この赤丸の箇所をクリックすると、詳細情報が表示される。ガス漏れの場所が敷地内なのか、道路上なのかが一番上に表示される。さらに、どのブロックに何が集中しているのかも分かってくる。
さらに被害現場を社員が確認した情報は、より確度の高い情報として自社収集情報で更新されていく。調査中もしくは対応中といった詳細情報も表示される。さらに社員が現場で撮影したガス漏れ、火災などの写真も最新のものが掲載される。
第二次緊急停止判断のための情報の集約、集計・分析について説明する。ブロック番号ごとにピンク、ブルーで色分けがされている。ピンクは停止判断の基準値に達している。ブルーは基準値には達していないが、発生している事象の内容によっては、停止基準に達する可能性があるというサインだ。このブルーのサインが出れば、前準備ができる。
これらの機能を活用し、「見て素早く判断する」ことができる。判断するのは対策本部であるので、対策本部の人が見て判断しやすい情報をいかに提供するかが重要になる。
この防災マッピングシステムでは、第二次緊急停止をした場合の復旧のシミュレーション機能も備える。例えば14日間で復旧する目標を設定した場合、自社の能力でできるのか、あるいは救援が必要なのか、その場合の必要最小限の人員などの試算結果が示される。
今後の拡張計画については、まず19年度は、(1)図面、集計表の条件、様式、内容の見直し、(2)日本ガス協会の最新指針への追従(昨年度の書式変更に対応)—を進める。
●事例講演—工事報告検収システムの開発による工事の生産性向上への取り組み/東海ガス工事部エンジニアリング課長竹村昌徳氏
東海ガスは、ガス導管工事の総合的な生産性向上、各種帳票類の電子化など諸課題に対応するために、工事報告検収システムを開発・導入した。同システムの開発背景、システムの活用方法、システムの導入効果などを紹介する。
工事報告検収システムの開発目的は、ガス会社と工事会社間の情報共有の効率化、工事報告書類作成の電子化、工事監督者、工事会社の労務負荷低減による生産性向上、詳細な工事進捗管理、工事検収業務の効率化などがある。
システムの業務フローは、(1)ガス会社が工事業者にタブレット端末を貸与、(2)工事業者が現場の写真撮影、日報作成、図面作成をタブレット端末で行いデータをガス事業者に送信、(3)ガス事業者はこれをワークフロー機能で電子検証する—という流れで行う。
工事報告検収システムは、東海ガスのグループ会社が運営するデータセンターのマッピングシステムサーバーに導入している。
システムを活用した業務の流れを紹介する。ガス会社が工事会社に工事を発注し、工事会社はタブレット端末で該当工事の図面を確認する。工事会社は工事終了までの期間、供内管図面に限りサーバーからいつでも既設図面データを閲覧できる仕組みとなっているため、ガス会社は工事業者に図面データを送る必要はない。また、工事設計図面データ等の工事情報をタブレット端末で確認することも可能だ。
工事会社の担当者が現場で、工事写真を撮影する際、タブレット端末の画面で「どのシチュエーションの写真を撮影するか」を聞いてくる。着工前など項目を選んで工事写真を撮影する。撮影忘れ防止対策として撮影終了項目は青枠で表示される仕組みとなっている。
日報作成は、工事を行った導管の延長は数値を入力する必要があるが、それ以外の工事内容の報告は全てタッチパネルで行える。タッチパネルで自動的にエクセルシートが作成され、システムのファイルサーバーに日報データが保存される。
2日以上にわたる工事であれば、日付ごとにシートが作成され、日ごとの進捗状況なども表示され、現場監督が状況を把握しやすい。
工事会社が現場の工事図面を作成する際には、用意された定型的な図面を選択し、寸法などの数値を入力すれば、短時間で図面作成が可能だ。使用部材についてもリストから選択するだけで、材料費とともに日報に添付できる。
ガス会社は、工事会社が作成した日報を確認・検収する。ガス会社の担当者が日報を確認し、内容が十分と判断すれば承認する。内容が不十分と判断すれば、コメントを添えて差し戻す。
タブレット端末が万一紛失した際の安全対策も万全だ。タブレット端末からサーバーへアクセスして図面データを閲覧する仕組みとなっているため、個人情報に該当するデータは入っていない。端末からシステムにログインする際はパスワードが必要になる。端末は、特定サイト以外へのアクセスはできないように設定している。さらに紛失した際は、遠隔操作で画面をロックできる。
東海ガスは、同システム導入により、設計図面がガス会社、工事会社間で共有化でき、業務効率化や情報漏洩のリスク回避などで計画した開発目的をおおむね達成できた。今後は、本支管・内管工事の作図機能の使い勝手を向上させるなど改善を行う。
●特別講演—エネルギー業界のデジタルトランスフォーメーションと、IT技術活用/PwCコンサルティングディレクター佐野慎太郎氏
はじめに、デジタル化のインパクトについて述べたい。現在、電力・ガス市場は全面自由化に移行し、異業種参入などにより業界の活性化が期待されている。それでも安定した業界であるという見通しに変化はない。ただ、これからの10年間に変革が起きる可能性はある。それをもたらすのがデジタル化の進展だ。
かつて産業革命で、先進国の一人当たりの所得は急激に伸び、新興国の所得は低迷した。両者の大分岐をもたらした産業革命は、技術と事業モデルの変革が同時にもたらされた。エネルギー業界では、「脱炭素」「分散化」「制度改革」「デジタル化」の英語の頭文字をとった四つの「D」が変化のけん引役として注目されているが、個別に対応するのではなく、事業モデルと技術の変化に該当するかに注目したい。
エネルギー業界にとって大変革の要素となるのが再生可能エネルギーで、太陽光発電と蓄電池が特に顕著だ。両者の発電コストは、すい星のように劇的に下がっており、普及速度は加速している。初期費用は発生するがランニング費用の限界値は0円であることはガス事業者にとっても無視できるものではない。これらを組み合わせたVPP(仮想発電所)やブロックチェーン技術は破壊的な変化をもたらし、一気に広がる可能性を秘めている。
分散化をけん引するのは、公益事業者ではなく需要家になる点も見逃せない変化だ。需要家が導入する太陽光や蓄電池、電気自動車(EV)などの投資額は2030年には合計で公益事業者の3倍程度になると予測されている。分散型エネルギーシステムの主役はプロシューマ—(電気を作る消費者)になっていく。
〇主役は個人に
デジタル化はエネルギー事業者に明るい未来をもたらすだろう。従来のエネルギー業界の事業領域は限られていたが、デジタル技術を活用すれば、できることが大きく広がる。そこで注目したいのがエネルギー業界における変革の要素「CLAS」だ。Cは「つながる」、Lは「地方創生、分散型」、Aは「自動対応」、Sは「シェアリング」を意味する。これらが同時に実施された場合に大きく変わる可能性がある。
デジタル技術の活用で先行する欧州の事例を紹介したい。ドイツでは公共EV充電設備の不足を、私用EV充電設備の市場開放によって解決するビジネスが生まれている。これはブロックチェーンを活用した「分散型」の「シェアリング」モデルで、仲介業者が決済処理を提供している。注目したいのは、料金メニューを決めているのが、充電設備を提供する個人であるという点だ。またフランスの事例では、新電力が顧客との関係を強化するため、「つながる」技術であるコネクテッドホームを提供している。最も人気がある機能は、電気・ガス料金を顧客があらかじめ指定した額に「自動」で調整し月額固定にするメニューである。このようにデジタル化とは、主役が事業者から個人に移転すると捉えるとわかりやすい。
〇課題の発見から
日本でもデジタル化と事業モデルの変化が同時に起きるデジタルトランスフォーメーションが到来する。たとえすぐに収益が見込めなくても、他社との広範囲な連携を視野に入れ、事業モデルが変革しているか検証を開始することが重要だ。
スマートスピーカーなどのスマートデバイス(多機能端末)は日本ではまだなじみがないが、自由化が進んだ英国では既に普及し始めている。日英の調査を通じて、スマートデバイスに対して最初は無関心な人も、一度体験すると価値を見出す傾向がはっきりしている。最初の1台目に体験するデバイスが何であるかを見極めることが、顧客との関係維持には重要だと考えている。
日本でも、つながっていないことが課題と言われる時代が来るのではないか。
デジタル化への対応は、まずは課題に気づくこと。対処すべき問題を絞り込み、解決するためのアイデアを出して、検証することが大事だ。そうする中で必要となるデジタル技術が見えてこよう。
エネルギーは産業の根幹である。エネルギー事業者はこの変革をリードするゲームチェンジャーだと信じる。
●事例講演—「エネぽたる」を活用した新たな顧客サービスの取り組み/大多喜ガス経営企画部電力事業企画グループ主務神永潤弥氏
大多喜ガスは電力小売事業について、2018年10月から高圧に、19年4月からは低圧に参入した。小売電気事業参入に際して導入した主なシステムは、料金調定システム、料金シミュレーション、お客さまポータル、需給管理システムの四つだ。
料金調定システムは、送配電事業者により計量された使用量データの取り込み、料金計算、金融機関での決済などの機能を備える。料金シミュレーションは、一般需要家に電気を提案する際、既存の電気契約と比較した切り替えメリットを試算する。お客さまポータルは、需要家が自らの電気の使用量、料金をウェブで確認できる。需給管理システムは、販売量予測に基づく電源調達の計画作成、広域機関に提出するもの。
お客さまポータルの必要性について説明する。電力小売りに取り組むガス事業者は、システム投資を進めており、ガスの検針票に電気使用量、料金を表示できるよう対応している。さらにウェブでガスと電気の使用量・料金を需要家向けに提供する事業者も出ている。
これらの状況を踏まえ、大多喜ガスは、他社同等レベルの顧客サービスを実現するため、両毛システムズのお客さまポータルである「エネぽたる」導入が必要と判断した。
大多喜ガスがエネぽたるを選定した際のメリットを説明する。まず第1は、料金ポータルの機能を装備するパッケージであるため、新規開発対応が不要だ。さらにデータ連携を汎用データ形式で行うため、自社料金システムとのデータ連携が比較的容易だ。イニシャル・ランニングコストは、大多喜ガスの要求レベルを満たしていた。加えて、サーバー、システムの運転・管理が不要であることも要因として大きかった。
システムの特徴と機能を紹介する。まず、大多喜ガスのホームページの「電気の販売はじめました」の表示の右側に「エネぽたる」のログイン・トップ画面が設定されている。ログインすると顧客の電気料金を確認できる。1件の需要家で複数の電気契約を有する場合は、契約ごとに切り替えて実績を表示可能だ。基本料金、再生可能エネルギー発電促進賦課金などの内容も表示できる。
さらに電気の使用量と料金については、最大24カ月分の実績をグラフと表形式で表示できる。CSV、PDFなどのファイル形式でダウンロードする機能も備える。顧客側で使用量・料金データを保存したいという要望にも対応している。
電気料金が確定すれば、データが更新されたことを顧客にメールでお知らせする。顧客はメールに記載されたアドレスをクリックすると最新の電気料金を確認することができる。
大多喜ガスにとって、エネぽたる運用の課題は、ユーザーの伸び悩みが挙げられる。理由としては、会員登録の手続きが煩雑なことが考えらる。
対策としては、手続きを簡素化したり、ガス展などのイベントで即時登録が完了できるようにするなどの取り組みを考えている。さらに現状では、電気料金のみ閲覧対応しているが、今後はガス料金もサービス対象とする対応を検討している。さらにお知らせ機能を活用して、フェアなどイベントや特典などを随時通知できる機能も採用を考えている。
●各社が最新システム紹介—展示会
大阪ガスエンジニアリングは、ガス事業者と工事会社間の工事に関する情報共有や工事報告書類を電子化する工事報告検収システムを紹介した。
オータスは、タブレット、モバイルプリンターなどで定期保安調査を実現するモバイルサービスなどをPRした。
協振技建は、導管施工管理総合支援システムSTACSなどを紹介した。同システムは、本支管工事管理や日報・竣工図面作成など一連の利用により、業務の効率化を図るソリューションだ。
日立製作所は、ガス事業者向けフィールド支援パッケージなどを紹介した。同システムは、手書きだった伝票作業をモバイル端末で行うことができ、現地での作業を効率化する。
日立ソリューションズは、設備管理業務など、さまざまな業務を支援するGeoMation地理情報システムなどを紹介した。
東京ガスエンジニアリングソリューションズは、スマート端末などを活用して、地図画面の操作や現場状況の把握などができるシステムを展示した。
日本HPは、セキュリティー強化を目的としたパソコン、プリンター、タブレットなど幅広いラインアップを紹介した。
両毛システムズは、エネルギー事業者の顧客ポータルサイトの構築・運営を支援するクラウドサービス「エネぽたる」をPRした。