高校の古文の教科書でおなじみの『更級日記』は、作者である平安時代の貴族の娘が、10歳から13歳まで過ごした父の赴任地である東国から、家族と一緒に京の都に帰る場面から始まる。2020年は、作者一家が旅立った日からちょうど1000年。旅立ちの場所が筆者(今井)の家の近所ということなので、年末の一日、ゆかりの場所を歩いてみた。
更級日記の作者は菅原孝標女。1008年に生まれた。父の孝標は“学問の神様”菅原道真の子孫である。孝標の父と子は学問の世界で要職についたが、彼は地方回りの役人で終わった。一家が住んでいたのは上総の国。当時の房総半島(千葉県)は、半島先端の安房、東京に近い下総、中央の上総と3つの国に分かれていた。上総の国府(役所)は現在の市原市に置かれていた。